雅藍(がお)っぽさまるだし2。

芝居やゲームやWWEや映画やライブを糧に人生を何とか過ごしてる、そんな雅藍(がお)さんの日々をまるだし。

舞台「レインマン」:「舞台」という世界の魅力を見せ付けられた気分で。

2006年02月15日 | 風に記された文字だから(演劇)
「レインマン」という映画は、もう17年も前に公開された作品でしたが、
私はこの映画がほんとに好きで、
自分の人生の中での大切な位置を占める映画ベスト5を挙げるとしたら、
必ず入るほど、大好きな作品です。

その「レインマン」がまさかの舞台化。
その事実を知ったときから、どうしても見に行かずにはおれませんでした。
期待半分、不安半分で。


正直、ここまで素直に受け入れられるとは思っていませんでした。
見終わった後、抱いていた不安はなんだったんだろうと思うくらい。

映画は当時流行していた「ロードムービー」の先駆けのような作品でもあり、
物語の根幹は勿論、
フィルムに満ちているその「空気感覚」が大好きなのですが、
基本的に移動が出来ない舞台では、
そのあたりをどのように表現するのだろうか、
それがずっと気になっていたのです。

意外なことに、
思いもかけない舞台構成を使って、ある意味「ばっさり切り捨てて」ました。
そして、「舞台であるということ」をきっちり意識して、
物語の本質以外の部分をそぎ落とし、ソリッドな形で、
「レインマン」のテーマでもある「家族であるという愛情」を徹底的に
突き詰めていったのです。

その試みが、見事なまでに私の琴線に触れました。

シンプルな舞台で、4人芝居という構成。
それゆえ、サッカーボールや毛布や電話帳など、
小道具の使い方が非常に映えてました。
特に毛布を使ったある演出には脱帽し、感動しました。

役の設定は現代的にアップトゥデイトされていて、
例えば映画では中古車ディーラーだった主人公チャーリーの職業が
ネットトレーダーになっていたりしています。
そして、チャーリーの体には重大な秘密が隠されていたり、
映画では野球が重要な要素で絡んでいたのが、
舞台では別の球技に変わり、そしてそれが後半のアドリブ(…だよな?)に
絡んで、非常にいい効果をもたらしています。

そして何より、エンディングが「似て非なる」ものとなりました。
映画は「幸せな悲劇」としての余韻に浸れるし、
舞台は私が望んでいたエンディングを迎えていました。
だから、どちらも好きです。

総じて、「映画は映画、舞台は舞台」としての線引きがきっちりされていて、
それゆえの「舞台的効果」を十二分に活用した傑作になっておりました。
時間も約2時間強(途中15分休憩あり)と冗長にならずまとまっており、
個人的には不満が見当たりませんでした。


とにかく橋爪功さんのレイモンドが凄い。
役の「のめり込み」具合は映画版ダスティン・ホフマンの方が強かったですが、
あの役を舞台でやるというのは、その膨大で特殊なセリフ自体がまず至難の業。
舞台でやるとなると、ダスティンだってここまで上手く出来るかわかりません。
それを橋爪さんは2時間徹底的にやり込みました。
結果、映画とは違った「橋爪レイモンド」を確立しておりました。

そして椎名桔平さんのチャーリーも絶品。
まだ若くつたなさが残る映画版のトム・クルーズに対して、
チャーリーに関しては椎名さんのほうが上でした。
特に、傍若無人ともいえる前半の荒々しいチャーリーと、
本当に大切なものを見つけた後半のチャーリーで、
椎名さんがまとった空気が、完全に違っていました。
それゆえ、クライマックスの力強さがより強く伝わってきたのです。
あと、意外なスポーツマンっぷりを発揮しております。


さらに今回一番衝撃だったのが唯一の女性、朴ロミさん!
…正直、こんなに「いい女」だとは思ってもみませんでした。
この人がロランとかエドとかの声を当てているとは、
正直信じられなくなります。
イメージ的にもっと男っぽい感じに思ってましたが、
なかなかどうして、スタイルも素晴らしいし、美人だし、
実は二役で、セクシーな衣装もあって、もの凄くドキッとさせます。
その振る舞いと舞台映えはお見事。脱帽です。
今後、戸田恵子さんバリに活躍することを期待します。
そして「舞台女優朴さん」を、これから絶対応援しようと、
そのナイスバディに密かに誓った次第。
ちなみにこの人、同い年なんだよなぁ…。タメイキ。

で、実は唯一不満というか、もったいないと思ったのが、大森博史さん。
いや、演技は全く不満がないほど、素晴らしいのですよ。
だからこそ、だからこそ!もっと出番が欲しかった!
もっと兄弟と絡んで欲しかった!!特にクライマックス!
せっかくの唯一の常識人(設定的に)なのだから、
「兄弟を見つめる人」として絡んでくる構成にしてくれれば良かったのに、と、
そしてそれをするには最適なキャスティングだと思ったから、
そこだけもったいないと、素直に思うのです。

でも、唯一そこだけが物足りなく思った箇所で、
あとはもう、最初から最後まで見とれてしまうほど、素晴らしい舞台でした。

昔は公演毎に必ずパンフレットを買っていたものですが、
実は私、最近はほとんど買わなくなっています。
そんな私が公演後パンフ売り場に駆けつけました。
それほど、「舞台としてのレインマン」がきっちり確立されていて、
映画と同じぐらい、大好きで大切な作品となっておりました。

願わくば、同じキャストで、且つ大森さんがもっと絡んで密度を上げた、
「レインマン」が再演されることを願って、
久しぶりに来場した東京グローブ座を後にしたのでした。

季節外れの温かい風が、随分と心地よかったのです。
こんな高揚感があるから、舞台を見るのがやめられないんですよね。



なんで、今日は「SIREN2」はプレイしません。
今日は余韻に浸りながら、ちょっと風邪気味なので早めに寝ます。

いい夢が、見られそうな予感。

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