この懐かしき本たちよ!

まだ私の手元に残っている懐かしい本とそれにまつわるいろいろな思い出、その他、とりとめのない思いを書き綴りたい。

#118 トルストイ著「幼年時代」

2005年06月14日 | ロシア文学
私は今この作品を読み返して見て、こんなに素晴らしい作品だったのかと驚いている。トルストイのあの風貌からは想像できないようなみずみずしい感覚がいたるところに感じられる。トルストイのデビュー作のこの作品は彼の23歳から24歳の時に書かれたものであるとのことである。

この本の巻末の原卓也氏の解説によれば、「『幼年時代』は4回も書き改められた末に、『現代人』編集部に送られた。すでにこれに先立つ6年前、「貧しき人々」のドストエフスキーを発掘していた名編集者ネクラーソフは『幼年時代』を一読して、作者の非凡なる才能を認め、直ちに雑誌に発表することをきめて、トルストイに激賞の手紙を書き送った。」とのことである。「その詩情とみずみずしい感受性、鋭い観察力などによって文壇から高く評価された。」ともある。

原氏はこの解説の最後にこう書いておられる。
「トルストイはこの作品で、幼年時代という人間形成の一時期を、みずみずしさや、屈託のない気持ち、愛への渇望、純粋な、最も美しい時代として描きだしてみせた。この時期においては、純真な快活さと、限りない愛への渇望という二つの最大の美徳が、生活の唯一の欲求だった、トルストイは言う。」

このみずみずしいトルストイの作品を私は今、自分の言葉で表現する能力を持ちあわせていない。原卓也氏の解説に、まさにその通りという感想を述べるしかできない。

今私が持っているこの文庫本は私がこの作品を初めて読んだ時に買った本ではない。「幼年時代」「少年時代」「青年時代」とも学生時代に続けて読んだと記憶しているのだが、何故か私の本棚には「少年時代」しか残っていない。今日の画像のこの本は、最近になって買った本だ。
私が学生時代に買ったのは原久一郎訳のものである。この本「少年時代」については、あらためたてまた書くことにしよう。

*画像:トルストイ著「幼年時代」原卓也訳 新潮文庫 1973年初版 1984年19刷発行
全164ページ      



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