日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

四谷赤坂麹町 - おく谷

2017-03-16 21:19:47 | 居酒屋
二月続いた五勤の週も今週でようやく一段落、週末には三連休が控えています。三月も後半に入り、桜の開花が気になり始める時期です。月末からはいよいよ忙しくなってくるでしょう。そうなる前に訪ねておきたい店がありました。荒木町の「おく谷」で一献傾けます。
帰り道に一杯やる習慣が年々廃れていき、長年世話になってきた店にも、年に一回挨拶代わりに立ち寄るのがせいぜいになってきました。場合によっては一年以上無沙汰することも珍しくなく、去年は荒木町で呑む機会を一度も作れませんでした。先日「タキギヤ」をようやく訪ねることができたため、次はここだと考えていた次第です。

この店の特徴として、純和風の店構えにしては意表を突く一捻り加えた品々が挙げられます。以前その独特さを、一見すると直球のようでありながら、手元で微妙に変化する癖球と評しました。今日でいうなら「コンビーフキャベツ炒め」、「ほうれん草アンチョビガーリック」など品書きが若干長く、なおかつ酒よりビールに合いそうな品が中心で、なかなか的が絞りにくいのです。そのような中、本日最初に目が行ったのは「山菜天ぷら」の文字でした。すぐ上には「特製温とうふ」の文字が。熱燗で温まりつつ春を先取りするという組み立てが即座に浮かび、これにより本日は珍しく純和風の組み立てとなりました。空豆の文字も並び、早くも春の趣漂う本日の品書きです。

昨年教祖の番組で荒木町が取り上げられたとき、紹介されたのは「ととや」と「タキギヤ」の二軒でした。知名度こそ両店に譲るものの、実はこちらも教祖の推奨店の一つです。推奨店といっても「居酒屋味酒覧」に掲載されたわけではなく、同書が刊行される前、夕刊紙の連載記事か何かで取り上げられ、それが単行本に収録されているのを見ました。もっとも、そのことを知る以前からこの店には世話になっていたため、教祖の紹介に自身の体験が先んずるという数少ない例の一つということになります。
そのような店だけに、老練さにかけては折り紙付です。八席ほどのL字カウンターにテーブル二つという店内が頃合いで、低めの天井からは傘をかぶった裸電球が下がり、京都の町家のように簾を巧みに使った雰囲気も上々。鉤状に折れ曲がる車力門通りに面した「タキギヤ」の立地については「居酒屋味酒覧」でも激賞されたところではありますが、荒木町を南北に貫く三本の通りの中で、最も静かな柳新道の佇まいも甲乙つけがたいものがあります。
流行の酒は何もなく、それらを求めるのはお門違いです。しかし、居心地よく呑めることを重んじるなら上々の店ともいえます。有名店に行き尽くし、知る人ぞ知る名店を求める向きには、自信を持ってお薦めしたい一軒です。

おく谷
東京都新宿区荒木町8
03-3351-6451
1800PM-2230PM(LO)
日祝日定休

明鏡止水・大七
お通し(とろろ)
石鯛焼霜造り
山菜天ぷら
特製温とうふ

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