ごちそうさま

飲食店で支払いを済ませようとするとき、どのようにして声をかけるでしょうか。てらいがないのはお勘定、お会計、計算といったところであり、人差し指を交差させつつ「〆て」とお願いする人もいるでしょう。「お愛想」も誤用といわれながら根強く使われています。しかし、自分が好んで使うのは以上のどれでもありません。
まず勘定、会計、計算は事務的なのがいただけません。勘定を締め切ることに語源がある以上、〆てというのも積極的には使いたくありません。そうなると残るのはお愛想ですが、あれは本来店の側からいう言葉であり、客の側から使うものではないと聞きます。ならば何がふさわしいかと考えた結果、行き着いたのは「ごちそうさま」でした。
これにて席を立つ意志と、店に対する感謝を伝える、簡潔にして一石二鳥の言葉であり、支払い云々よりも大切にすべき言葉と私は思います。投了する棋士のごとく、「ごちそうさまです」と頭を垂れるのが自分流です。