日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

酷寒の大地を行く - ふく郎

2015-02-12 19:28:17 | 居酒屋
酒屋を出てまっすぐ進むと左手に現れるのが、ビールと同じ恵比寿様の看板を掲げる「ふく郎」です。初めて訪ねた先月以来の再訪と相成りました。
開店直後に入った前回に対し、今回は呑み屋が最も混み合う七時台です。店主一人だったカウンターに、手伝いのお姉さんが加わりました。五人いる先客は、老夫婦に独酌三名という顔ぶれで、出張客と思しき一人を含め、皆慣れた様子で酒を酌んでいます。地元客の二人が老紳士と意気投合し、相撲談義を交わしている光景に、青森の土地柄が現れているようです。

お通しには殻付きの帆立が山盛りになって出てきました。もちろん小さいものとはいえ、ざっと数えても二十個はあるでしょうか。これなら最初の一杯を受けるのに十分なのはもちろんのこと、箸休めに時折いただくのもよさそうです。前回の豚汁にしても、お通しだけで一品料理として成り立つところが秀逸です。
経木に書かれた本日の刺身は、今別のソイ、平館の油目とヤリイカ、それに帆立とツブの合わせて五種。目移りして選びきれないというほどではないにしても、即決まではできかねるところです。しかし、単品とさほど変わらぬ値段で盛り合わせが選べるため、ともかくこれを選んでおけば間違いはありません。「ちょっと盛」とは思えないほど十分な盛り合わせは、経木の中からツブだけ除き、代わって真鯛を加えた五点で、真鯛の皮を湯引きにするという心憎い一手間が加えられています。

手伝いのお姉さんは店主にどことなく似ており、もしかすると親子なのかもしれません。酒の進み具合を見計らって次を勧めたり、空いた皿を間合いよく下げたりするなど、細やかな気配りが堂に入っています。二杯目の酒を飲み干し、これで席を立とうと決めていたにもかかわらず、次はと言われて思わず三杯目を注文してしまったのは、この客あしらいを含めた居心地がそれだけよかったからでもあるのでしょう。
老練さは店主についても同様です。口数少なく、よそ者が想像しがちな東北人そのものである店主ですが、調理に時間を要して間延びしそうになったとき、絶妙な頃合いでつなぎの皿が差し出されました。真鱈の白子と帆立の卵を舞茸とともに煮たもので、分量も気前よく、肴としてはまことに理想的です。酒呑みのツボを押さえた客あしらいは、さすがと感服させられます。
このような一幕も、今回再訪したからこそ経験できたものです。一ヶ月という短い間隔での再訪は、あながち無駄ではありませんでした。

ふく郎
青森市安方1-10-12
017-777-3988
1700PM-2300PM
日祝日定休

ヱビス・亀吉・田酒・愛娘
お通し
お刺身ちょっと盛
鯨竜田揚
こまい一夜干し

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