日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

三陸海岸縦断ツアー - 海舟

2016-10-08 21:47:52 | 居酒屋
軽く飲み食いしたつもりでも、すっかり腹が満ちてしまうというのが最近の傾向であり、それは今夜についても同様です。市街にはめぼしい店が見当たらない中、頼みの綱と目した一軒が上々の店だったこともあり、一軒限りで切り上げ宿に戻ることも考えました。ただし、駅の先にあった仮設の呑み屋街だけは訪ねておきたいという考えがありました。というのも、アパートのごとく外階段を設けたプレハブが建ち、そこに小料理屋然とした店が何軒も並んでいる様子に、看過しがたい雰囲気があったのです。ここで一献傾けることができれば、震災からの復興を見届けるという今回の旅の趣旨にも合致するというものでしょう。こうしてやってきたのが「呑ん兵衛横丁」と名付けられた一角です。
車内から見た限りでは情緒ありげだった呑み屋街ですが、いざ足を運んでみると、無味乾燥なプレハブの店舗ということもあるのか、全て同じに見えてどこに入ればよいかがよく分かりません。加えて、一見客には入りづらいこの手の横丁特有の雰囲気が感じられました。しかし、雰囲気だけ味わって退散する方向に傾きかける中、すぐ隣にもプレハブの飲食店があることに気付きました。暗い中ゆえ最初は気付かなかったものの、よくよく見れば同様のプレハブが周囲に何棟も建っています。小さな舞台と遊具があることからしても、ここは元々公園だったのでしょう。震災により中心街が壊滅した結果、あちらにあった呑み屋が集まり、仮設の店舗で営業しているということのようです。その様子を一通り確認した後、最初に見つけた「海舟」なる店の暖簾をくぐりました。

何分プレハブだけに安普請なのは致し方ありません。しかし、ささやかな庇をつけた実質五席ばかりのカウンターと、小上がりを三卓置いた店内には、かつての店舗を極力再現しようとした苦心の跡が感じられます。日替わりのホワイトボードを二枚使った品書きも、仮設の店舗と思えない充実ぶりです。その店内を店主と女将が二人で仕切っています。
突き出しは三品、中でも塩辛はイカを十分干して旨味を凝縮した、店の実力を窺わせる逸品です。肴も一人客には必要にして十分な量があり、なおかつ価格は良心的。最後はまたも秋刀魚のつみれ汁を選びましたが、舞茸と里芋で秋らしさを演出していた「丸藤」に対し、こちらのつみれ汁には驚くべきことに松茸が入っていました。それも申し訳程度などではなく、下手な土瓶蒸しより惜しげもなく使われています。これで500円はお値打ち品でしょう。あらかた姿を消したかに思われた釜石の呑み屋は、思わぬ場所で生き延びていました。

いまだ更地が広がる大槌、山田ほどではないものの、震災の爪痕は釜石の市街にもまだ色濃く残っています。そのような中、一度は壊滅に追い込まれた呑み屋街が、仮設の店舗で明かりを灯しているのは頼もしいものがありました。釜石で再び呑む機会が巡ってきたとすれば、再建なった新店舗で是非とも一献傾けてみたいものです。

海舟
釜石市鈴子町14 釜石はまゆり飲食店街
0193-22-0751
1700PM-2300PM

酒二合
突き出し三品
くじら刺身
ホタテみそ貝焼
さんまのつみれ汁

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