日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

冬枯れの京都を行く - 蔵

2015-12-13 21:22:03 | 居酒屋
「京都へ行くことは赤垣屋へ行くことである」は教祖の弁ですが、これは様々な局面に応用できる表現でもあります。たとえば、自分にとって大津へ行くこととは「小川酒店」で酒を買うことに他なりません。そして奈良については、この店で呑むことだと言い切ることができます。今年も「蔵」に戻ってきました。

時間によってはあわや満席ということもある人気店ではありますが、日曜の九時過ぎという時間帯もあってか、昨日の「赤垣屋」と同様お客の入りは適度です。コの字型をしたカウンターの左右にそれぞれ四名の先客がおり、椅子が三つ並んだ手前側が空いていたため、必然的にそこへ着席。カウンターの角に据え付けられたおでん舟に正対しつつ、店内を隅々まで見渡すことのできる特等席です。
布製の傘をかぶった電球で、古びた店内は心地のよい明るさに照らされています。やはり、この心地のよい明かりは電球にしか出せません。経済性を大義名分にして、白熱球の製造禁止とLED照明への転換などという愚策がまことしやかに検討されている昨今ではありますが、せめてこれと同じ明かりを出せるようになってからにしてもらいたいものです。

何度も訪ねた店だけに勝手は分かっています。まず酒を、次いでおでんを選び、時間のかかるきも焼を予め注文しておいて、あとは正面の壁にある短冊から何を選ぶか考えるという流れです。その中で今回是非ともいただきたいと思っていたのが油揚げでした。炙った後に手でちぎるここの油揚げについては、このblogで繰り返し絶賛してきたところではありますが、去年の正月に訪ねたときには品切れになっており、今年の正月は完全な素通りとなってしまったため、ほぼ二年近くにわたって待ち焦がれたのでした。
半分量でも出せるとの申し出をあえて断り、本来の分量でお願いした油揚げは、葱、大根おろしと鰹節をたっぷり添え、山盛りになって運ばれてきました。「魚仙」の油揚げに出会ってからというもの、これを超える油揚げはなかろうとさえ考え始めていたところ、こちらの油揚げも全く引けをとりません。やはり自分の感覚に狂いはなかったようです。店内一の特等席を独占して悠然と酒を酌み、二年間待ちわびた油揚げもいただいて、今回の再訪は完全勝利のうちに幕を閉じました。


奈良市光明院町16
0742-22-8771
1700PM-2230PM(LO)
木曜定休

ハートランド・篠峯・貴仙寿
おでん二品
油揚げの焼いたん
きも焼
松前鮨

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