日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

灯台下暗し

2011-05-12 22:05:00 | 居酒屋
花見の旅も一段落、小雨そぼ降る木曜は職場を少し早く退けて、地元では二月ぶりの一人酒に繰り出します。といっても丸々二日降り続く雨の中では遠くへ行く気も起こりません。一旦家に帰って、傘を片手に近所の酒場を訪ねます。二軒ある行きつけの中から今日選んだのは「あて」です。
これまで何度か通ったこの店ですが、これまでは家で飲み食いした後軽く一杯といった使い方しかしておらず、純然たる一軒目となるのはこれが初めてです。というのも、その名の通り肴は酒のあてが中心で、双璧をなす名店「嘉多蔵」と違って腹のふくれる品があまりないのです。とはいえ、小さな黒板に書かれた日替わりの酒肴には、わらび、筍、春キャベツ、ホタルイカなど季節感が織り込まれていて、呑人の心をくすぐります。酒肴は総じて量の割には値が張るものの、見方を変えれば一人酒には好適ということでもあります。気の利いた酒肴を何品かつまんでゆるゆると徳利を空け、煮魚、豚汁、おにぎりなどで締めくくれば、絵に描いたような一汁三菜から五菜の晩酌となり、戦後間もなく建った民家を活かした設えが、その気分を一層引き立ててくれるようです。外は霧雨、木のサッシを開け放っても雨が降り込むこともなく、むしろ夜風の涼しさが心地よく感じられます。去年の今頃、最後の花見で訪ねた小雨そぼ降る釧路の街を思い出す、風情に満ちたひとときです。

あて
東京都千代田区九段南4-8-34
03-3262-0044
1130AM-1400PM/1700PM-2230PM(LO)日祝日定休

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