日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

四谷赤坂麹町 -宮わ

2015-01-21 21:29:02 | 居酒屋
五勤の週が今年初なら、帰り道に一杯やるのも今年初です。どこへ行くかと思案していた折も折、桜との別れに続いて、覚悟していた日が来てしまいました。「宮わ」の親方から、今週限りで閉店との知らせが届いたのです。幸か不幸か選択肢は必然的に絞られ、別れの挨拶代わりに立ち寄りました。

建物の玄関にある立看板には、普段差し込まれている品書きがなく、代わりにあったのは「感謝」と大きく書かれた一枚の紙です。いつもと違う光景を目にして、これが最後と否応なく実感しつつ階段を三階へ上がると、先客はテーブルに七名とカウンターの左側に三名。前回訪ねたときは先客の姿がなく、親方と自分だけの淋しい店内でしたが、閉店が告知されて常連客が集まったのでしょう。引退していた女将も店に出ており、往時の賑わいが戻ったかのようです。とはいえ予約満席という事態にはならず、最も慣れ親しんだカウンターの中央が空いていたのは幸いでした。
お通しにはアサリと菜の花のおひたし、それに蟹味噌風味の変わり豆腐が、いつものごとく四角い器の対角線に二点盛られてきました。このお通しに惣菜を二品ほど続け、日替わりの品書きからさらに一品二品加えるのがこの店での常です。最後だからといって特別なことをしたくはなく、むしろ今まで通りに飲み食いして終わるのが性に合っています。ただし、酒については一杯目だけ自分で選び、最後の最後は親方に見繕ってもらうことにしました。すると出てきたのは、親方が新酒の中でもとりわけ好むという「開運」の濁り酒です。以前訪ねたときには、この希少品の入手を巡って、とある酒販店の主と一悶着あったという裏話を打ち明けられたものでした。いわば因縁の酒をいただいた後、同じくおすすめの「七本鎗」で締めくくります。

この店を初めて訪ねたのは、自身初めて赤坂を呑み歩いた七年前のことです。開店からから三ヶ月と間もない頃で、親方、女将に加え手伝いのお姉さんがいたと記憶しています。それが親方と女将の二人組となり、品数はやや絞られる一方、酒については年々拡充されるといった変化はありつつも、一枚板のカウンターと、塵一つなく磨かれた店内は変わりませんでした。居酒屋の一枚上手を行く立派な店構え、繊細な仕事ぶりとは裏腹の、この程度でいいのかと思えるほどの良心的な価格についても同様です。高価なお造りなどを一切頼まず、惣菜と一品料理を肴に酒ばかり喰らっている一人客が、店にとってありがたい存在だったかどうかは分かりません。しかし、自分にとってはこの上なくありがたい店の一つでした。散々世話になったことに感謝している次第です。
この店は残念ながら仕舞いとなりますが、復帰の際には一報を入れてもらえることになっています。捲土重来を果たした親方と再会できる日を楽しみにしていましょう。またいつの日にか…

★馳草 宮わ
東京都港区赤坂5-1-38 赤坂東商ビル3F
03-3568-7380
平日 1800PM-2200PM(LO)
土曜 予約営業
日祝日定休

山形正宗・開運・七本鎗
お通し二品
しらすと生のりの玉子焼
牛すじトマト煮
身欠き鰊

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