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2005年12月25日 | 経済問題
今日は、サンデープロジェクト出演のため、テレビ朝日に行きました。本当は経済問題について話す予定だったのですが、猪瀬直樹さんと道路公団民営化で思わぬ論争になってしまいました。道路公団民営化にともなう料金引き下げについてです。番組が終わってからも1時間ほど猪瀬さんとお話しをしました。確かに民営化の作業を通じて、問題点が明らかになったところはたくさんあります。しかし、料金の1割引き下げというのは、国民への約束なのですから、私はきちんと行うべきだと思います。その点に関して、雑誌「Voice」に書いた記事を以下に転載します。

※写真はテレビ朝日のロビーに飾られたM1グランプリのセットです。ここで記念写真が撮れるようになっています。

 10月1日から日本道路公団を民営化した東日本、中日本、西日本の高速道路株式会社三社が発足した。道路関係四公団民営化推進委員会での議論のなかでは、民営化すれば効率化が進み、高速道路の通行料が1割値下げされて、国民にも大きなメリットがあるとされてきた。
 だから料金がいつ下がるのかと期待していたのだが、実際には通行料を一律1割引にするのではなく、割引運賃を拡充することで値下げを実施するのだそうだ。しかも、その値下げは既に実施されているという。
 そこで、一体どのような割引制度が導入されているのかをみると、現在の割引制度は三つある。第一は全国に適用される深夜割引で、深夜時間帯(0時~4時)の通行料が最大3割引になる。第2は、東京・大阪近郊以外に適用される通勤割引で、通勤時間帯(6時~9時または17時~20時)で100km以内の利用が最大5割引になる。第3は、東京・大阪近郊に適用される早朝夜間割引で、早朝夜間帯(22時~6時)の100km以内の利用が最大5割引となる。
 一見、大幅な割引が始まったように見えるが、高速道路を使って通勤できるのは一部の高所得者だけだし、深夜の時間帯にマイカーを走らせる人も、さほど多くはないだろう。
 しかも、こうした割引を受けるにはETCへの加入が前提となっている。ETCを取り付けるには、車載器本体と取付料金とセットアップ料金で、一番安いものでも1万7千円程度のコストがかかる。大口利用者はともかく、一般のユーザーは通行料の割引でETCの設置費用を取り戻すことさえ容易ではない。極論すれば、値下げどころか、値上げになる可能性もあるのだ。
 しかも、さらに大きな問題がある。ハイウェイカードの廃止だ。ハイウェイカードは、5万円券を買えば8千円分のプレミアムがついていた。実質14%の値引きがもともとなされていたのだ。ところが5万円のハイウェイカードの発売は03年2月で終了した。表向きは偽造カードが出回って大きな被害がでたからということになっているが、その理由はいささか怪しい。額面1万円以下のハイウェイカードは引き続き発売されていたからだ。
 ところが、そのハイウェイカードも今年9月には発売が停止され、来年4月からは使用も停止されることになったのだ。これで、5万円券廃止の直前に5万円のハイウェイカードを買い込んだ利用者は、使い道を失うことになる。もちろん、高速道路会社は、ハイウェイカードの払い戻しに応じるとしているが、プレミアム分は、払い戻しの対象にならない。5万8000円分使えたハイウェイカードは、元値の5万円分しか払い戻してもらえないのだ。
一方、ETCには前払い割引という制度が存在する。これは、ハイウェイカードが持っていたプレミアムの機能を事実上受け継ぐもので、5万円を前払いしておくと、自分のETCカードに5万8千円分がチャージされる。ハイウェイカードのプレミアムもここに移行できる。ところが、この前払い割引運賃制度も今年12月20日には,前払い金の支払いができなくなる。(ハイウェイカードからの移行は可能)。同様の機能を持つETCのマイレージサービスが導入されたからだそうだ。
 確かに、マイレージサービスは、高額ハイウェイカードやETC前払い割引運賃と、ほぼ同じ割引構造になっている。高速道路をETCで利用すると50円ごとに1ポイントが貯まり、1000ポイント貯まると8000円分の通行料が無料になる。5万円の利用で8000円分の割引が受けられるのだから、単純計算では割引率はまったく同じになるのだ。
 ところが、マイレージの有効期限は利用日の翌年度までだ。均して考えると、年間で5万円以上の高速道路料金を払う人でなければ、14%の割引を確実に受けることはできないのだ。営業車はともかく、年間で5万円も高速道路料金を支払っている世帯はどれだけあるのだろうか。
 ちなみに、マイレージサービスでは、5万円の利用があれば14%割引になるが、3万円だと8%、1万円だと5%、5千円だと4%しか割引にならない。
 ハイウェイカードには有効期限がないから、5万円券を買って、使い切るまで持っていれば、誰でも14%の割引を受けることができた。しかし、マイレージサービスでは、高速道路を頻繁に利用する人でないと、同じ割引を受けられなくなってしまったのだ。
 結局、道路公団民営化で利益を得たのは、早朝深夜の時間帯に高速道路を頻繁に利用する営業車が中心になる。
 昼間に走行する普通の国民にとっては、ETCの設置費用がかかり、前払い割引がなくなるという二重苦が襲うだけだ。これで民営化の成果が出たといえるのだろうか。

 




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