経済社会コラム#13

2005年12月18日 | 経済問題
私はニッポン放送の携帯情報サイトで、毎週その週に起こったことを中心にコラムを書いています。一週間遅れで、その記事を公開しています。世の中の流れが速いので、だいぶずれてしまうこともありますが、ご容赦ください。なお、最新版は携帯電話からニッポン放送のサイトに行ってください(こちらは有料です)。

少子化をどのように防ぐのか
 先日、テレビ朝日の「朝まで生テレビ」に出演しました。奥谷禮子さん、蓮舫さん、福島瑞穂さんなど、多くの女性有識者が登場したのですが、私がとても不思議に思ったのは、彼女たちが口を揃えて働く女性の子育て支援を少子化対策として主張したことです。もちろん、それが悪いことだとは思いませんが、働く女性が生む子供の数は、専業主婦の生む子供の数を上回っています。働く女性の支援で、出生率の大幅な上昇が見込めるということは、あり得ないのではないでしょうか。
 合計特殊出生率(15歳から49歳までの女性の年齢別一人当たり平均出生児数を合計したもの)は、戦後一貫して下がってきたわけではありません。大きな減少を起こしたのは、戦後二回です。最初は団塊の世代が生まれた1940年代後半から1960年までです。団塊の世代のころは合計特殊出生率が4程度あったのですが、それが高度経済成長の始まる1960年には2.0まで下がりました。これが家族社会学で第一の家族革命と呼ばれるものです。この時期の出生率の低下は、一家で生む子供の数が減少することを原因にして起こりました。
 そして1960年から1975年、つまり高度経済成長期に合計特殊出生率は、2.0前後で安定していました。再び合計特殊出生率が下がり始めたのは1975年以降現在にいたるまでです。この期間は第二の家族革命と呼ばれています。この期間の特徴は、出生率低下の原因が、一家で産む子供の数の減少ではなく、結婚そのものが減ることによって起こっているということです。
 実際、合計特殊出生率は、1987年の1.69から2000年の1.36へと大きく下がりましたが、この間夫婦の完結出生児数は2.19から2.14と、ほとんど下がっていないのです。また、30歳台前半男性の非婚率は1985年の29.6%から2000年の45.0%へと急増しているのです。つまり、いま少子化が進んでいる最大の原因は、子供を産まなくなったからではなく、そもそも結婚ができなくなったからなのです。
 なぜ、そんなことが起こったのでしょうか。私は、構造改革によって弱肉強食社会がやってきたからだと考えています。「君のことを一生守り続けるから」というセリフは、男性が誰もが一生に一回だけ使える結婚の切り札でした。ところが終身雇用制や年功序列賃金の崩壊で、そうしたセリフはリアリティを持たなくなってしまったのです。
 どうせ長期的な安定は得られないのだと悟った女性たちは、短期的な利益を求めるようになりました。その結果、彼女たちは、イケメン、あるいは金持ちとの享楽的関係を求めるようになったのです。すでに、経済的な富の集中よりも、もしかしたら恋愛の富の集中の方が、ずっと進んでいるのかもしれません。イケメン男性やヒルズ族の男性たちは、同時に数十人、人によっては数百人の女性とつき合うようになったのです。
 ところが、世の中の男性の大部分はイケメンでもありませんし、金持ちでもありません。結婚できない彼らの一部が秋葉原に集い、恋愛の相手をアニメキャラクターに求めるようになっているのです。
 そのためにはどうしたらよいのでしょうか。「電車男」のように、普通の女性がオタクに恋をすることなどあり得ません。あり得ないことが起きたからこそ、電車男は大きなブームを起こしたのです。
 普通の男が結婚できるようになるための解決策は、残念ながら私には一つしか思い浮かびません。それは、昔のような終身雇用制の世の中に、日本を戻すことです。オタクだって、女性が相手にしてくれるのだったら、女性とつき合いたいと思っているのです。彼らに雇用と所得の安定を与えない限り、少子化は止まらないと思うのです。
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