衆議院選挙が昨日公示されました。そこで今週のお題は、選挙 です。
私はニッポン放送の携帯情報サイトで、毎週その週に起こったことを中心にコラムを書いています。今週から、一週間遅れで、その記事を公開しています。世の中の流れが速いので、だいぶずれてしまうこともありますが、ご容赦ください。なお、最新版は携帯電話からニッポン放送のサイトに行ってください(こちらは有料です)。
危うい純化政策
この一週間も小泉総理が自分に反対する者を切り捨てて行く「純化政策」が、着々と進みました。
まず、衆議院で反対票を投じた前議員への対抗馬として有名文化人が次々に擁立されました。彼らは議員というステイタスが欲しいだけですから、当然権力には従順で、当選すれば、小泉総理の言いなりになるのは目に見えています。御用学者が審議会で役人の作ったタタキ台を鵜呑みにしてしまうのと同じ構造です。
そして造反議員からも小泉総理に白旗を揚げる者が相次ぎました。
東京12区に出馬予定だった八代英太前議員は、実質的な選挙活動を始めていたにもかかわらず、同区からの出馬を断念しました。同区からは公明党幹事長代行の太田昭宏氏が立候補することになっていて、公明党から自民党に八代英太氏を出馬させないよう強い要請が出されていたそうです。自民党から「公認しない」と切り捨てられたのに、自民党と公明党との選挙協力を守るために八代英太氏は身を退いたのです。相当大きな見返りを自民党が示したとしか考えられません。一部では八代氏の子息の公認を自民党が示唆したとも報じられています。
また岡山2区から出馬予定だった造反議員の熊代昭彦氏は、岡山市長選に出馬するとして、衆院選の立候補を取りやめる考えを明らかにしました。そもそも、熊代氏の刺客として現職の萩原誠司岡山市長が擁立されたために岡山市長選が行われることになったのですから、熊代氏が仮に市長選に当選したとしても、代議士のポストを市長ポストと交換するという結果になってしまいます。郵政民営化法案に反対したツケは、少なくとも「代議士から市長への転落」ということになるのです。
また郵政民営化法案に棄権・欠席した議員のうち立候補を決めた11人は、小渕優子氏を最後に全員が郵政民営化に賛成するという確認書を自民党に提出して、公認を受けることになりました。郵政民営化法案に反対だったからこそ、棄権や欠席をしたのに、全員が民営化賛成の意を表明したのです。公認権という権力がいかに国会議員を支配する道具になるかという証拠でしょう。
こうしたことから考えても、与党が選挙で勝利すれば、小泉総理の権力がますます強大になることは明らかです。
国民はこの事態をどう思っているのでしょうか。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が16日と17日の両日に合同で世論調査を行っています。その結果をみると、「郵政民営化を目指すべき」だと思う人は63・7%で、「思わない」の21・3%を大きく上回っています。ところが、郵政法案の採決で反対票を投じた自民党造反議員を公認しないという小泉首相の政治手法については、「支持する」が45・8%、「支持しない」が44・1%と世論は真っ二つです。やはり小泉総理の独裁的な政治手法に疑問を持っている国民は多いのです。
ただ、いまの情勢では、政治手法への違和感は次第に消え、「改革」への賛意だけが残るという方向になっていきそうです。 毎日新聞が13日、14日に実施した世論調査では、小泉内閣の支持率は51%と衆議院の解散直後の8日、9日に行われた緊急世論調査の46%を5ポイント上回りました。解散直後も、参院での否決を理由に衆院を解散する政治手法に批判がありましたが、それはすぐに消えてしまったのです。
「郵政民営化に賛成か反対か」という小泉総理の選挙の争点設定が巧みだったということでしょう。
しかし、こうした単純化がきわめて危険だということは認識しておく必要があるでしょう。世の中というのは、すべてが白と黒にはっきり分かれるのではなく、その間のグレーゾーンに解答がある場合が多いからです。
イラク戦争のときにブッシュ大統領は「我々につくのか、テロリストにつくのか」と二者択一の選択を迫りました。しかし、少なくとも私はブッシュ大統領も嫌だし、テロリストも嫌なのです。
危うい純化政策
この一週間も小泉総理が自分に反対する者を切り捨てて行く「純化政策」が、着々と進みました。
まず、衆議院で反対票を投じた前議員への対抗馬として有名文化人が次々に擁立されました。彼らは議員というステイタスが欲しいだけですから、当然権力には従順で、当選すれば、小泉総理の言いなりになるのは目に見えています。御用学者が審議会で役人の作ったタタキ台を鵜呑みにしてしまうのと同じ構造です。
そして造反議員からも小泉総理に白旗を揚げる者が相次ぎました。
東京12区に出馬予定だった八代英太前議員は、実質的な選挙活動を始めていたにもかかわらず、同区からの出馬を断念しました。同区からは公明党幹事長代行の太田昭宏氏が立候補することになっていて、公明党から自民党に八代英太氏を出馬させないよう強い要請が出されていたそうです。自民党から「公認しない」と切り捨てられたのに、自民党と公明党との選挙協力を守るために八代英太氏は身を退いたのです。相当大きな見返りを自民党が示したとしか考えられません。一部では八代氏の子息の公認を自民党が示唆したとも報じられています。
また岡山2区から出馬予定だった造反議員の熊代昭彦氏は、岡山市長選に出馬するとして、衆院選の立候補を取りやめる考えを明らかにしました。そもそも、熊代氏の刺客として現職の萩原誠司岡山市長が擁立されたために岡山市長選が行われることになったのですから、熊代氏が仮に市長選に当選したとしても、代議士のポストを市長ポストと交換するという結果になってしまいます。郵政民営化法案に反対したツケは、少なくとも「代議士から市長への転落」ということになるのです。
また郵政民営化法案に棄権・欠席した議員のうち立候補を決めた11人は、小渕優子氏を最後に全員が郵政民営化に賛成するという確認書を自民党に提出して、公認を受けることになりました。郵政民営化法案に反対だったからこそ、棄権や欠席をしたのに、全員が民営化賛成の意を表明したのです。公認権という権力がいかに国会議員を支配する道具になるかという証拠でしょう。
こうしたことから考えても、与党が選挙で勝利すれば、小泉総理の権力がますます強大になることは明らかです。
国民はこの事態をどう思っているのでしょうか。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が16日と17日の両日に合同で世論調査を行っています。その結果をみると、「郵政民営化を目指すべき」だと思う人は63・7%で、「思わない」の21・3%を大きく上回っています。ところが、郵政法案の採決で反対票を投じた自民党造反議員を公認しないという小泉首相の政治手法については、「支持する」が45・8%、「支持しない」が44・1%と世論は真っ二つです。やはり小泉総理の独裁的な政治手法に疑問を持っている国民は多いのです。
ただ、いまの情勢では、政治手法への違和感は次第に消え、「改革」への賛意だけが残るという方向になっていきそうです。 毎日新聞が13日、14日に実施した世論調査では、小泉内閣の支持率は51%と衆議院の解散直後の8日、9日に行われた緊急世論調査の46%を5ポイント上回りました。解散直後も、参院での否決を理由に衆院を解散する政治手法に批判がありましたが、それはすぐに消えてしまったのです。
「郵政民営化に賛成か反対か」という小泉総理の選挙の争点設定が巧みだったということでしょう。
しかし、こうした単純化がきわめて危険だということは認識しておく必要があるでしょう。世の中というのは、すべてが白と黒にはっきり分かれるのではなく、その間のグレーゾーンに解答がある場合が多いからです。
イラク戦争のときにブッシュ大統領は「我々につくのか、テロリストにつくのか」と二者択一の選択を迫りました。しかし、少なくとも私はブッシュ大統領も嫌だし、テロリストも嫌なのです。
私はニッポン放送の携帯情報サイトで、毎週その週に起こったことを中心にコラムを書いています。今週から、一週間遅れで、その記事を公開することにしました。世の中の流れが速いので、だいぶずれてしまうこともありますが、ご容赦ください。なお、最新版は携帯電話からニッポン放送のサイトに行ってください(こちらは有料です)。
小泉総理のさらなる暴走
8月8日の参議院本会議で郵政民営化法案が否決されたことを受けて、小泉総理大臣は衆議院を解散する決断をしました。当初から、法案が否決されれば衆議院を解散する意向を総理は示唆していましたが、正直言って私は、最後まで半信半疑でした。参議院で造反議員がたくさん出たからと言って、郵政民営化関連法案の可決に協力した衆議院議員を全員クビにするというのは、理不尽以外の何物でもないからです。
しかし、その後の小泉総理の行動はさらに驚くべきものでした。法案に反対した衆議院議員37人については選挙での公認を与えないとしたのです。これまで自民党では何回も造反劇が繰り返されてきましたが、こんな事態はもちろん初めてです。しかも、すべての造反議員に対して、自民党としての対立候補を擁立するように小泉総理は厳命しました。最初に刺客を送られたのが、反小泉総理の急先鋒、東京10区選出の小林興起前議員でした。兵庫から出馬予定だった小池百合子環境大臣を落下傘候補として東京10区から出馬させることにしたのです。また、静岡7区では城内実前議員の対抗馬に、財務省課長の片山さつき氏を擁立し、岡山2区では熊代昭彦前議員の対抗馬に岡山市長の萩原誠司氏を擁立しました。片山さつき氏は桝添要一参議院議員の元妻で、元ミス東大という才媛です。現職大臣、現職市長、そして現職財務相課長という強力な対抗馬を立ててきたのです。一方で、綿貫民輔元衆議院議長や亀井静香元政調会長という造反劇の主役には、大物の対抗馬をぶつけていません。
小林興起前議員、城内実前議員、熊代昭彦前議員は、いずれも選挙に強くありません。つまり、倒せる可能性の高い相手には、大物対抗馬を立てて、確実につぶしに行く戦略なのです。※熊代昭彦前議員は立候補を取りやめ、岡山市長選に出馬することになりました。
その一方で、衆議院で郵政民営化関連法案に棄権・欠席した議員は、郵政民営化関連法案に賛成の意を表明すれば、公認するとしました。これは実におかしな話です。郵政民営化関連法案に反対だからこそ、やむを得ず棄権や欠席をしたのだから、そもそも公認と引き換えに郵政民営化関連法案に賛成しろというのは、人質をとって政治信条を変えさせるということです。もし、自民党は郵政民営化関連法案に賛成しない者を許さないというくらい強い姿勢を採るのであれば、棄権・欠席した議員の公認も見送るべきでしょう。しかし、それをしないのは、もし棄権・欠席した14人の議員まで公認をしないと、現有勢力で過半数割れをしてしまうという数あわせの打算なのです。さらに言えば、郵政民営化法案に反対して否決の原因をつくった22人の参議委員議員には、お咎めがありません。もし、本当に郵政民営化関連法案に賛成しない者を許さないなら、彼らこそ除名すべきではないでしょうか。しかし、それはしないのです。なぜかと言えば、彼らを除名すると与党が参議院で過半数割れをしてしまうからです。
さらにおかしなことがあります。先週も書きましたが、それは、小泉総理が今度の解散総選挙を「郵政民営化に反対するか賛成するか国民に判断してもらう」としたことです。実は、郵政反対派の急先鋒と言われる小林興起前議員も、さらにはリーダーの綿貫民輔前衆議院議長も郵政民営化自体には賛成なのです。それでは、反対派の人たちはなぜ今回の郵政民営化関連法案に反対したのか。理由は様々ですが、要は今回の法案にはいくつもの問題点があって、それを法案修正という形で盛り込みたいと言ったのに、官邸側が一切応じなかったからです。
修正をしなければならないと反対派が考えていた大きなポイントは、大きく二つです。一つは、郵便貯金と簡易保険のユニバーサルサービスが確保されていないということです。過疎地域の7220の郵便局は維持されることになっていますが、そこで郵便貯金や簡易保険のサービスが提供される保証はありません。新しく発足する三菱UFJフィナンシャルグループでも、リテールの国内店舗数は912に過ぎません。しかも平成20年度までに170店舗が統廃合される予定になっています。金融拠点の維持にはコストがかかります。2万4700もの郵便局で金融サービスをすることを民営化会社が選択するとはとても思えません。
もう一つの問題は、郵便貯金会社と郵便保険会社の株式を完全放出するという点です。完全売却でどれだけの売却収入が入ってくるのかは明確ではありませんが、メガバンク全体を超える資金量を持つ金融会社の株なのですから、メガバンク並みの値段がついても不思議ではありません。現在、りそな銀行を含めた5大メガバンクの時価総額は25兆円になっていますから、それに近い金額になることも予想されます。しかし、そんな巨大な資金を一体誰が出すのでしょうか。現時点では外資しか考えられないでしょう。実際、国会審議のなかで政府は、郵政民営化準備室幹部が過去17回、米国生命保険協会などと接触した事実を認めています。外資が郵便貯金や簡易保険を買収したらどうなるでしょうか。私はまず間違いなく資金運用をアメリカ国債など米国の金融商品にシフトすると思います。しかし、ドルは暴落の瀬戸際にあります。もし、ドルが暴落すれば、国民の大切な金融資産が半額以下になることも十分あり得るのです。
こうしたことを考えれば、私は今回の郵政民営化法案は、国民生活に重大な危機をもたらす可能性が高いと思います。それにもかかわらず、政府は修正に応じなかったのです。
つまり、今回の自民党の紛争は、郵政民営化の是非を争うのではなく、郵便貯金や簡易保険のサービスを大都市部に限るかどうか、あるいは郵便貯金や簡易保険を外資に売り渡すかどうかという紛争なのです。
ですから、国民はそのどちらを選ばなければなりません。しかも、もう一つ重要なことがあります。それは、もし今回の選挙で与党が選挙に勝利すれば、小泉総理の権力は一層巨大化し、誰も小泉総理に反対の意見を言えなくなるということです。総理に反旗を翻せば、厳しい処分をされるということが今回明らかになったからです。いまでも、小林興起前議員を支援しようとした東京都連は、自民党執行部の圧力を受けて、公認を受けていない候補の応援をしないことを決めました。いままで長年培ってきた議員との信頼関係よりも、党執行部の命令を優先したのです。
もちろん、小泉総理がこの選挙で勝利すれば、改革は加速するでしょう。ひょっとしたら、総裁任期がさらに延長されて、長期政権になるかもしれません。
そうした意味を含めて、今回の選挙は、小泉純一郎という政治家に日本のすべてを委ねられるかどうかが、問われていると言えるのではないでしょうか。
小泉総理のさらなる暴走
8月8日の参議院本会議で郵政民営化法案が否決されたことを受けて、小泉総理大臣は衆議院を解散する決断をしました。当初から、法案が否決されれば衆議院を解散する意向を総理は示唆していましたが、正直言って私は、最後まで半信半疑でした。参議院で造反議員がたくさん出たからと言って、郵政民営化関連法案の可決に協力した衆議院議員を全員クビにするというのは、理不尽以外の何物でもないからです。
しかし、その後の小泉総理の行動はさらに驚くべきものでした。法案に反対した衆議院議員37人については選挙での公認を与えないとしたのです。これまで自民党では何回も造反劇が繰り返されてきましたが、こんな事態はもちろん初めてです。しかも、すべての造反議員に対して、自民党としての対立候補を擁立するように小泉総理は厳命しました。最初に刺客を送られたのが、反小泉総理の急先鋒、東京10区選出の小林興起前議員でした。兵庫から出馬予定だった小池百合子環境大臣を落下傘候補として東京10区から出馬させることにしたのです。また、静岡7区では城内実前議員の対抗馬に、財務省課長の片山さつき氏を擁立し、岡山2区では熊代昭彦前議員の対抗馬に岡山市長の萩原誠司氏を擁立しました。片山さつき氏は桝添要一参議院議員の元妻で、元ミス東大という才媛です。現職大臣、現職市長、そして現職財務相課長という強力な対抗馬を立ててきたのです。一方で、綿貫民輔元衆議院議長や亀井静香元政調会長という造反劇の主役には、大物の対抗馬をぶつけていません。
小林興起前議員、城内実前議員、熊代昭彦前議員は、いずれも選挙に強くありません。つまり、倒せる可能性の高い相手には、大物対抗馬を立てて、確実につぶしに行く戦略なのです。※熊代昭彦前議員は立候補を取りやめ、岡山市長選に出馬することになりました。
その一方で、衆議院で郵政民営化関連法案に棄権・欠席した議員は、郵政民営化関連法案に賛成の意を表明すれば、公認するとしました。これは実におかしな話です。郵政民営化関連法案に反対だからこそ、やむを得ず棄権や欠席をしたのだから、そもそも公認と引き換えに郵政民営化関連法案に賛成しろというのは、人質をとって政治信条を変えさせるということです。もし、自民党は郵政民営化関連法案に賛成しない者を許さないというくらい強い姿勢を採るのであれば、棄権・欠席した議員の公認も見送るべきでしょう。しかし、それをしないのは、もし棄権・欠席した14人の議員まで公認をしないと、現有勢力で過半数割れをしてしまうという数あわせの打算なのです。さらに言えば、郵政民営化法案に反対して否決の原因をつくった22人の参議委員議員には、お咎めがありません。もし、本当に郵政民営化関連法案に賛成しない者を許さないなら、彼らこそ除名すべきではないでしょうか。しかし、それはしないのです。なぜかと言えば、彼らを除名すると与党が参議院で過半数割れをしてしまうからです。
さらにおかしなことがあります。先週も書きましたが、それは、小泉総理が今度の解散総選挙を「郵政民営化に反対するか賛成するか国民に判断してもらう」としたことです。実は、郵政反対派の急先鋒と言われる小林興起前議員も、さらにはリーダーの綿貫民輔前衆議院議長も郵政民営化自体には賛成なのです。それでは、反対派の人たちはなぜ今回の郵政民営化関連法案に反対したのか。理由は様々ですが、要は今回の法案にはいくつもの問題点があって、それを法案修正という形で盛り込みたいと言ったのに、官邸側が一切応じなかったからです。
修正をしなければならないと反対派が考えていた大きなポイントは、大きく二つです。一つは、郵便貯金と簡易保険のユニバーサルサービスが確保されていないということです。過疎地域の7220の郵便局は維持されることになっていますが、そこで郵便貯金や簡易保険のサービスが提供される保証はありません。新しく発足する三菱UFJフィナンシャルグループでも、リテールの国内店舗数は912に過ぎません。しかも平成20年度までに170店舗が統廃合される予定になっています。金融拠点の維持にはコストがかかります。2万4700もの郵便局で金融サービスをすることを民営化会社が選択するとはとても思えません。
もう一つの問題は、郵便貯金会社と郵便保険会社の株式を完全放出するという点です。完全売却でどれだけの売却収入が入ってくるのかは明確ではありませんが、メガバンク全体を超える資金量を持つ金融会社の株なのですから、メガバンク並みの値段がついても不思議ではありません。現在、りそな銀行を含めた5大メガバンクの時価総額は25兆円になっていますから、それに近い金額になることも予想されます。しかし、そんな巨大な資金を一体誰が出すのでしょうか。現時点では外資しか考えられないでしょう。実際、国会審議のなかで政府は、郵政民営化準備室幹部が過去17回、米国生命保険協会などと接触した事実を認めています。外資が郵便貯金や簡易保険を買収したらどうなるでしょうか。私はまず間違いなく資金運用をアメリカ国債など米国の金融商品にシフトすると思います。しかし、ドルは暴落の瀬戸際にあります。もし、ドルが暴落すれば、国民の大切な金融資産が半額以下になることも十分あり得るのです。
こうしたことを考えれば、私は今回の郵政民営化法案は、国民生活に重大な危機をもたらす可能性が高いと思います。それにもかかわらず、政府は修正に応じなかったのです。
つまり、今回の自民党の紛争は、郵政民営化の是非を争うのではなく、郵便貯金や簡易保険のサービスを大都市部に限るかどうか、あるいは郵便貯金や簡易保険を外資に売り渡すかどうかという紛争なのです。
ですから、国民はそのどちらを選ばなければなりません。しかも、もう一つ重要なことがあります。それは、もし今回の選挙で与党が選挙に勝利すれば、小泉総理の権力は一層巨大化し、誰も小泉総理に反対の意見を言えなくなるということです。総理に反旗を翻せば、厳しい処分をされるということが今回明らかになったからです。いまでも、小林興起前議員を支援しようとした東京都連は、自民党執行部の圧力を受けて、公認を受けていない候補の応援をしないことを決めました。いままで長年培ってきた議員との信頼関係よりも、党執行部の命令を優先したのです。
もちろん、小泉総理がこの選挙で勝利すれば、改革は加速するでしょう。ひょっとしたら、総裁任期がさらに延長されて、長期政権になるかもしれません。
そうした意味を含めて、今回の選挙は、小泉純一郎という政治家に日本のすべてを委ねられるかどうかが、問われていると言えるのではないでしょうか。
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