コレクター仲間のやくみつるさんが、エチオピアのコーラの瓶を持って帰ってきてくれました。感激\(^O^)/です。ということで、今週のお題は、コーラです。
私はニッポン放送の携帯情報サイトで、毎週その週に起こったことを中心にコラムを書いています。一週間遅れで、その記事を公開しています。世の中の流れが速いので、だいぶずれてしまうこともありますが、ご容赦ください。なお、最新版は携帯電話からニッポン放送のサイトに行ってください(こちらは有料です)。
ライブドア騒動の本質は何か
1月16日の夜、ライブドアに東京地検特捜部の強制捜査が入った。被疑事実は証券取引法で禁じられている風説の流布と偽計だ。証券取引法では、株価を操作する目的でこの2つを行ってはならないことになっている。
風説の流布は、当時子会社だったライブドア・マーケティング(以下LM社、当時はバリュークリック)が04年第3四半期で、売上の水増し等の粉飾決算をした疑いだ。ただ、今回の大きな問題は、偽計の方だ。そこにライブドアの錬金術が詰まっているからだ。
LM社が、出版社のマネーライフ社を株式交換方式で子会社化したあと、LM社の株価は急騰した。LM社がマネーライフを買収したことによって、事業の拡大を市場が評価したことが株価上昇の一因だった。ところが、マネーライフ社は、ライブドアが実質支配する投資事業組合がすでに取得しており、実質的にライブドアグループにすでに入っていた。にもかかわらず、実質的にすでに手に入れていたマネーライフ社を、あたかもそのときに手に入れたように偽装して、投資家を欺いたのだ。
なぜ、ライブドアはそんなことをしたのか。もちろん、カネを生み出すためだ。例えば、ライブドアが株式交換方式で、直接マネーライフ社を買収したと仮定しよう。ライブドアは、自社株を発行してマネーライフ社のオーナーに渡す代わりに、マネーライフ社の株式を受け取る。マネーライフ社を子会社にすることはできるが、ライブドアは発行済み株式数が増えるだけで何も起こらない。マネーライフの買収で事業拡大したことを受けてライブドアの株価が上昇するかもしれないが、それだけのことだ。
ところが、実際に行われたことは、次のようなことだった。ライブドアが実質支配する投資事業組合が、すでに取得していたマネーライフ社の株式をLM社に渡すのと引き換えに、LM社が発行した株式を受け取る。その後、LM社の株価が急騰し、投資事業組合は、手に入れたLM社の株式を売却し、その利益をライブドアに環流させる。このやり方だと、マネーライフ社を直接買収した場合と同じ「子会社化」という効果を得ながら、株価上昇による利益をライブドア本体が獲得ができてしまうのだ。その後の調べで、こうした偽装は合計6件が確認され、ライブドア本体に環流した資金は総額100億円にものぼるとみられている。
このやり方のおかしさは、事業を買収すると言って買った会社の株式を実質的にすぐに売り払うことになっているという点だ。
例えば、ライブドアは事件当時LM社の75%の株式を保有していた。しかし、昨年八月末現在のライブドアの保有率は29.3%まで下がっている。マネーライフはLM社の100%子会社だから、ライブドアの支配する投資事業組合がLM社の株式を売るということは、実質的にマネーライフの株式を売ることに等しいのだ。しかも、LM社自体が、04年にライブドアがTOB(株式公開買い付け)で子会社化した会社だ。公開買い付けして手に入れた会社の株式を短期間に売ってしまうということは、そもそも事業拡大のために株式を取得したというよりは、マネーゲームの目的で株式を取得したと非難されても仕方がないだろう。
今回の東京地検による強制捜査は、そうしたライブドアの錬金術を暴き出すことに主眼が置かれていたと言ってよいだろう。
ライブドアの経営の問題点を「法律を守れば何をやってもよい」と考えていたことだと指摘する人もいる。しかし、私はそうではないと思う。ライブドア経営の問題は「法律を破っても、捕まらなければ何をやってもよい」と考えていたことなのだ。
その典型が、昨年2月8日にライブドアがニッポン放送の発行済み株式の30%を東京証券取引所の時間外取引で取得した事件だ。それまでにライブドアはニッポン放送の発行済み株式の5%を取得していたから、このとき合計で35%のニッポン放送株がライブドアの手に渡った。ルール上、発行済み株式の3分の1以上の株式を市場外で取得する場合には、公平を期すために、株式公開買い付け(TOB)を行うことが義務づけられている。ところが、堀江社長は時間外とは言え、市場での取引だから、TOBの義務はないと主張したうえで、たまたまリーマンブラザーズから800億円の資金調達をしたその日に、時間外市場をみると、たまたまちょうどよい金額のニッポン放送株が売りに出ていたので、買っただけだと強弁した。
そんなことがありうるはずがない。おそらく売り手の村上ファンドと口裏をあわせただけだとほとんどの専門家は思っただろう。しかし、それを立証することはできない。結局、ライブドアによるニッポン放送株の買収は合法とされたのだ。
今回の強制捜査で東京地検が優秀だったのは、ライブドアに不意打ちで家宅捜索をかけ、パソコンを押収し、コンピュータサーバーのデータを押さえたことだ。ライブドアの社員が使っているパソコンは会社のものではなく、社員の自前のものだ。だから、ライブドアで日常の連絡手段として用いられていた電子メールのデータがハードディスクのなかに残っている可能性が高い。仮に消されていたとしても、特殊な方法を用いることによってデータを復活させることができる。このことによって、本当は何が起こっていたのかを明らかにすることができるとみられるのだ。
「法律を破っても、捕まらなければよい」という経営方針は、証拠がでてきたときに経営を瓦解させてしまう。特捜部の分析で証拠がでてくれば、ライブドアの経営そのものが糾弾されることになるだろう。
堀江社長は常に「株主の利益を考えたい」と言ってきた。しかし、その本質が「株主の利益をないがしろにしても、自分の利益を増やしたい」だったことは、ライブドア株の暴落が早くも示唆しているのではないだろうか。
※この記事は1月22日に書いたものです
ライブドア騒動の本質は何か
1月16日の夜、ライブドアに東京地検特捜部の強制捜査が入った。被疑事実は証券取引法で禁じられている風説の流布と偽計だ。証券取引法では、株価を操作する目的でこの2つを行ってはならないことになっている。
風説の流布は、当時子会社だったライブドア・マーケティング(以下LM社、当時はバリュークリック)が04年第3四半期で、売上の水増し等の粉飾決算をした疑いだ。ただ、今回の大きな問題は、偽計の方だ。そこにライブドアの錬金術が詰まっているからだ。
LM社が、出版社のマネーライフ社を株式交換方式で子会社化したあと、LM社の株価は急騰した。LM社がマネーライフを買収したことによって、事業の拡大を市場が評価したことが株価上昇の一因だった。ところが、マネーライフ社は、ライブドアが実質支配する投資事業組合がすでに取得しており、実質的にライブドアグループにすでに入っていた。にもかかわらず、実質的にすでに手に入れていたマネーライフ社を、あたかもそのときに手に入れたように偽装して、投資家を欺いたのだ。
なぜ、ライブドアはそんなことをしたのか。もちろん、カネを生み出すためだ。例えば、ライブドアが株式交換方式で、直接マネーライフ社を買収したと仮定しよう。ライブドアは、自社株を発行してマネーライフ社のオーナーに渡す代わりに、マネーライフ社の株式を受け取る。マネーライフ社を子会社にすることはできるが、ライブドアは発行済み株式数が増えるだけで何も起こらない。マネーライフの買収で事業拡大したことを受けてライブドアの株価が上昇するかもしれないが、それだけのことだ。
ところが、実際に行われたことは、次のようなことだった。ライブドアが実質支配する投資事業組合が、すでに取得していたマネーライフ社の株式をLM社に渡すのと引き換えに、LM社が発行した株式を受け取る。その後、LM社の株価が急騰し、投資事業組合は、手に入れたLM社の株式を売却し、その利益をライブドアに環流させる。このやり方だと、マネーライフ社を直接買収した場合と同じ「子会社化」という効果を得ながら、株価上昇による利益をライブドア本体が獲得ができてしまうのだ。その後の調べで、こうした偽装は合計6件が確認され、ライブドア本体に環流した資金は総額100億円にものぼるとみられている。
このやり方のおかしさは、事業を買収すると言って買った会社の株式を実質的にすぐに売り払うことになっているという点だ。
例えば、ライブドアは事件当時LM社の75%の株式を保有していた。しかし、昨年八月末現在のライブドアの保有率は29.3%まで下がっている。マネーライフはLM社の100%子会社だから、ライブドアの支配する投資事業組合がLM社の株式を売るということは、実質的にマネーライフの株式を売ることに等しいのだ。しかも、LM社自体が、04年にライブドアがTOB(株式公開買い付け)で子会社化した会社だ。公開買い付けして手に入れた会社の株式を短期間に売ってしまうということは、そもそも事業拡大のために株式を取得したというよりは、マネーゲームの目的で株式を取得したと非難されても仕方がないだろう。
今回の東京地検による強制捜査は、そうしたライブドアの錬金術を暴き出すことに主眼が置かれていたと言ってよいだろう。
ライブドアの経営の問題点を「法律を守れば何をやってもよい」と考えていたことだと指摘する人もいる。しかし、私はそうではないと思う。ライブドア経営の問題は「法律を破っても、捕まらなければ何をやってもよい」と考えていたことなのだ。
その典型が、昨年2月8日にライブドアがニッポン放送の発行済み株式の30%を東京証券取引所の時間外取引で取得した事件だ。それまでにライブドアはニッポン放送の発行済み株式の5%を取得していたから、このとき合計で35%のニッポン放送株がライブドアの手に渡った。ルール上、発行済み株式の3分の1以上の株式を市場外で取得する場合には、公平を期すために、株式公開買い付け(TOB)を行うことが義務づけられている。ところが、堀江社長は時間外とは言え、市場での取引だから、TOBの義務はないと主張したうえで、たまたまリーマンブラザーズから800億円の資金調達をしたその日に、時間外市場をみると、たまたまちょうどよい金額のニッポン放送株が売りに出ていたので、買っただけだと強弁した。
そんなことがありうるはずがない。おそらく売り手の村上ファンドと口裏をあわせただけだとほとんどの専門家は思っただろう。しかし、それを立証することはできない。結局、ライブドアによるニッポン放送株の買収は合法とされたのだ。
今回の強制捜査で東京地検が優秀だったのは、ライブドアに不意打ちで家宅捜索をかけ、パソコンを押収し、コンピュータサーバーのデータを押さえたことだ。ライブドアの社員が使っているパソコンは会社のものではなく、社員の自前のものだ。だから、ライブドアで日常の連絡手段として用いられていた電子メールのデータがハードディスクのなかに残っている可能性が高い。仮に消されていたとしても、特殊な方法を用いることによってデータを復活させることができる。このことによって、本当は何が起こっていたのかを明らかにすることができるとみられるのだ。
「法律を破っても、捕まらなければよい」という経営方針は、証拠がでてきたときに経営を瓦解させてしまう。特捜部の分析で証拠がでてくれば、ライブドアの経営そのものが糾弾されることになるだろう。
堀江社長は常に「株主の利益を考えたい」と言ってきた。しかし、その本質が「株主の利益をないがしろにしても、自分の利益を増やしたい」だったことは、ライブドア株の暴落が早くも示唆しているのではないだろうか。
※この記事は1月22日に書いたものです
ブログ特別版モリタク日記
フジテレビはどう対応すべきか
1月17日の東京地検特捜部による強制捜査以降、ライブドアの錬金術が次々に明らかになってきた。合計6件にのぼる投資事業組合を使った株式交換による利益環流や子会社やライブドア本体の粉飾決算疑惑などだ。
ライブドアの株価は1月20日現在で336円、12月21日の最高値773円から1ヶ月足らずで半額以下に下落した。まだ大量の売り注文が残っているため、ライブドアの株価は下げ続けていく可能性が高い。
こうしたなか、堀江貴文社長に次ぐ第2位の株主であるフジテレビは、粉飾決算等による株価の急落で損失を被ったとして、堀江貴文社長ら経営陣や同社を相手取り損害賠償請求訴訟を起こす方向で検討に入った。また、東京証券取引所が重大な法令違反があった場合には、上場を廃止すると明言しているため、今後ライブドア株の上場が廃止される可能性が高い。そうなった場合は、堀江社長らに対して個人株主の提訴が相次ぐとみられ、堀江社長は最悪の場合、自己破産に追い込まれる可能性もある。
ニッポン放送株の買収事件でライブドアに煮え湯を飲まされた形のフジテレビは、精神的には溜飲を下げているだろうが、問題はこの後、どう行動するかだ。
ライブドアの個人株主は上場が廃止されると、市場で株式の売却ができなくなる。しかし、ライブドアグループの事業のなかには、しっかりしたスポンサーが存在すれば存続できる可能性のあるものが多い。それをにらんで、おそらく上場廃止とともに、ライブドアの経営権を取得すべく、ハゲタカファンドが株式公開買い付け(TOB)をかけてくるだろう。しかし、そうなっては、結局個人投資家の資金が食い物にされるだけに終わる。
フジテレビはニッポン放送事件の和解の際に、ライブドアの発行済み株式の13%を取得している。堀江社長が損害賠償のために自社株を手放せば、フジテレビはライブドアの筆頭株主になる。だから、TOBをかけるときに最も有利な条件を備えているのは、実はフジテレビなのだ。
私は、ライブドアが上場廃止になったときには、フジテレビがTOBをかけるべきだと思う。ライブドアグループがフジサンケイグループの傘下に入れば、事業を安定的に継続できる会社が増え、そこで働く人も救われる。フジテレビ自体も大きな利益を上げることが可能になるだろう。
堀江社長らのライブドア経営陣は、乗っ取ろうとしていたフジテレビに、逆にライブドアが買収されることを不快に思うだろうが、そのときにはこう言えばよい。「買収されたくなかったら、株式公開などしなければよいのだ」。
ライブドア問題に関する詳しいコラムは、明日からニッポン放送の携帯情報サービスで公開する予定です。
フジテレビはどう対応すべきか
1月17日の東京地検特捜部による強制捜査以降、ライブドアの錬金術が次々に明らかになってきた。合計6件にのぼる投資事業組合を使った株式交換による利益環流や子会社やライブドア本体の粉飾決算疑惑などだ。
ライブドアの株価は1月20日現在で336円、12月21日の最高値773円から1ヶ月足らずで半額以下に下落した。まだ大量の売り注文が残っているため、ライブドアの株価は下げ続けていく可能性が高い。
こうしたなか、堀江貴文社長に次ぐ第2位の株主であるフジテレビは、粉飾決算等による株価の急落で損失を被ったとして、堀江貴文社長ら経営陣や同社を相手取り損害賠償請求訴訟を起こす方向で検討に入った。また、東京証券取引所が重大な法令違反があった場合には、上場を廃止すると明言しているため、今後ライブドア株の上場が廃止される可能性が高い。そうなった場合は、堀江社長らに対して個人株主の提訴が相次ぐとみられ、堀江社長は最悪の場合、自己破産に追い込まれる可能性もある。
ニッポン放送株の買収事件でライブドアに煮え湯を飲まされた形のフジテレビは、精神的には溜飲を下げているだろうが、問題はこの後、どう行動するかだ。
ライブドアの個人株主は上場が廃止されると、市場で株式の売却ができなくなる。しかし、ライブドアグループの事業のなかには、しっかりしたスポンサーが存在すれば存続できる可能性のあるものが多い。それをにらんで、おそらく上場廃止とともに、ライブドアの経営権を取得すべく、ハゲタカファンドが株式公開買い付け(TOB)をかけてくるだろう。しかし、そうなっては、結局個人投資家の資金が食い物にされるだけに終わる。
フジテレビはニッポン放送事件の和解の際に、ライブドアの発行済み株式の13%を取得している。堀江社長が損害賠償のために自社株を手放せば、フジテレビはライブドアの筆頭株主になる。だから、TOBをかけるときに最も有利な条件を備えているのは、実はフジテレビなのだ。
私は、ライブドアが上場廃止になったときには、フジテレビがTOBをかけるべきだと思う。ライブドアグループがフジサンケイグループの傘下に入れば、事業を安定的に継続できる会社が増え、そこで働く人も救われる。フジテレビ自体も大きな利益を上げることが可能になるだろう。
堀江社長らのライブドア経営陣は、乗っ取ろうとしていたフジテレビに、逆にライブドアが買収されることを不快に思うだろうが、そのときにはこう言えばよい。「買収されたくなかったら、株式公開などしなければよいのだ」。
ライブドア問題に関する詳しいコラムは、明日からニッポン放送の携帯情報サービスで公開する予定です。
私はニッポン放送の携帯情報サイトで、毎週その週に起こったことを中心にコラムを書いています。一週間遅れで、その記事を公開しています。世の中の流れが速いので、だいぶずれてしまうこともありますが、ご容赦ください。なお、最新版は携帯電話からニッポン放送のサイトに行ってください(こちらは有料です)。
財政再建は何を目標にすべきか
昨年12月26日に開催された「構造改革と経済財政の中期展望」を審議する経済財政諮問会議に、政府は基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化を1年前倒しする暫定試算を提出しました。これまで政府の財政再建の目標は、2012年度に基礎的財政収支を黒字化するというものでした。政府はそれを1年早めて、2011年度にしようというのです。
政府が財政緊縮化目標を引き上げようとするのは、それだけではありません。1月4日に明らかになった議事録によると、竹中平蔵総務相が昨年1月に示した中期展望について、与謝野経済財政担当相が激しく対立する議論があったことが明らかになりました。与謝野経済財政担当相が、現行の中期展望を「楽観的すぎる」と批判したのです。
二人の対立の核心は、名目経済成長率と長期金利の関係でした。竹中大臣が「日本は戦後、名目成長率の方が高かった」と主張したのに対して、与謝野大臣は「名目成長率がずっと長期金利より高い状況を作り出せるなら明るい展望は開けるが、そう楽観的な話で真実に近づけるか疑問だ」と見直しを迫ったのです。
この2人の対立は、実は財政再建の目標をどこに置くのかという本質的な問題とかかわっています。いまの政府の目標は、2012年度に基礎的財政収支を黒字化するというものです。基礎的財政収支とは、借金のことは、利払いを含めてとりあえず忘れた場合の財政収支です。いま入ってくる歳入から、借金関連以外の歳出を差し引いたものが基礎的財政収支です。基礎的財政収支がプラスマイナスゼロの場合、いま支払う政府支出のために新たな借金をする必要がありませんから、過去に作った借金はそのまま残ります。もちろん借金には金利が付きますから、基礎的財政収支が均衡していても、借金の残高は金利の分だけ増えていきます。金利が3%だったら、借金は1年間に3%増えていくのです。
そのとき、名目GDPの大きさが、年間3%以上拡大していれば、GDPに占める借金の比率は下がっていきます。つまり、経済全体の大きさに占める借金の割合が小さくなっていくのです。逆に、名目GDPの成長率3%を下回れば、経済全体に占める借金の比率は高まり、借金が発散して行く可能性がでてきます。
ですから、長期金利と名目成長率のどちらが高いとみるかが、決定的に重要なのです。竹中大臣の主張するように、名目成長率の方が高いとみるのであれば、いまのように財政の基礎的収支を黒字化するという目標でよいのですが、与謝野大臣の言うように長期金利の方が高いとみるのであれば、より厳しい財政再建目標を課さないといけないからです。
いまの政府はどちらの方向に進んでいるのかは、まだ明確ではありませんが、私には、どうやら与謝野大臣の主張する方向に動き出しているように見えます。それは平成18年度予算の編成できわめて厳しい緊縮政策が採られたからです。
昨年12月20日に発表された平成18年度予算の財務省原案は、新規国債の発行を30兆円以下に抑えるという小泉総理の当初の公約を実現するものでした。しかし、予算は政府の中期目標から考えると、必要以上に緊縮財政になっているのではないかと思われます。今年度当初予算の基礎的財政収支の赤字は15兆9千億円でした。ですから、政府が基礎的財政収支黒字化の目標年次としている7年後の2012年度に、黒字化という目標を達成するためには、年間2兆3千億円ずつ赤字を削減していけばよいことになります。昨年度の赤字は当初予算で19兆円でしたから、昨年度から今年度にかけて基礎的財政収支は3兆1千億円も改善しているのです。
今年度は大きな増税がありませんでしたから、デフレを脱却し、景気を拡大していけば、増税をしなくても財政再建は十分に可能なのです。ところが、平成18年度予算の財務省原案では、基礎的財政収支を4兆7千億円も削減しています。つまり、本来の2倍のスピードで財政赤字を削減しているのです。
計画達成を急いでいるだけという見方もできます。しかし、景気を失速させる可能性もあるほど厳しい緊縮財政を敷いたのは、やはりその先があるのではないかと私は思います。財務省はおそらく借金の残高そのものを減らそうと考えているのではないでしょうか。
借金が減っていくこと自体は望ましいのですが、それを実行するために、景気が失速してしまったり、国民が増税に押しつぶされてしまうようであれば、元も子もありません。政府はもっと時間的に余裕を持って財政再建をすべきですし、それ以前に公共事業や地方や中小企業を切り捨てることではなく、徹底的な行政改革を行って、増税なき財政再建を図るべきなのではないでしょうか。
財政再建は何を目標にすべきか
昨年12月26日に開催された「構造改革と経済財政の中期展望」を審議する経済財政諮問会議に、政府は基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化を1年前倒しする暫定試算を提出しました。これまで政府の財政再建の目標は、2012年度に基礎的財政収支を黒字化するというものでした。政府はそれを1年早めて、2011年度にしようというのです。
政府が財政緊縮化目標を引き上げようとするのは、それだけではありません。1月4日に明らかになった議事録によると、竹中平蔵総務相が昨年1月に示した中期展望について、与謝野経済財政担当相が激しく対立する議論があったことが明らかになりました。与謝野経済財政担当相が、現行の中期展望を「楽観的すぎる」と批判したのです。
二人の対立の核心は、名目経済成長率と長期金利の関係でした。竹中大臣が「日本は戦後、名目成長率の方が高かった」と主張したのに対して、与謝野大臣は「名目成長率がずっと長期金利より高い状況を作り出せるなら明るい展望は開けるが、そう楽観的な話で真実に近づけるか疑問だ」と見直しを迫ったのです。
この2人の対立は、実は財政再建の目標をどこに置くのかという本質的な問題とかかわっています。いまの政府の目標は、2012年度に基礎的財政収支を黒字化するというものです。基礎的財政収支とは、借金のことは、利払いを含めてとりあえず忘れた場合の財政収支です。いま入ってくる歳入から、借金関連以外の歳出を差し引いたものが基礎的財政収支です。基礎的財政収支がプラスマイナスゼロの場合、いま支払う政府支出のために新たな借金をする必要がありませんから、過去に作った借金はそのまま残ります。もちろん借金には金利が付きますから、基礎的財政収支が均衡していても、借金の残高は金利の分だけ増えていきます。金利が3%だったら、借金は1年間に3%増えていくのです。
そのとき、名目GDPの大きさが、年間3%以上拡大していれば、GDPに占める借金の比率は下がっていきます。つまり、経済全体の大きさに占める借金の割合が小さくなっていくのです。逆に、名目GDPの成長率3%を下回れば、経済全体に占める借金の比率は高まり、借金が発散して行く可能性がでてきます。
ですから、長期金利と名目成長率のどちらが高いとみるかが、決定的に重要なのです。竹中大臣の主張するように、名目成長率の方が高いとみるのであれば、いまのように財政の基礎的収支を黒字化するという目標でよいのですが、与謝野大臣の言うように長期金利の方が高いとみるのであれば、より厳しい財政再建目標を課さないといけないからです。
いまの政府はどちらの方向に進んでいるのかは、まだ明確ではありませんが、私には、どうやら与謝野大臣の主張する方向に動き出しているように見えます。それは平成18年度予算の編成できわめて厳しい緊縮政策が採られたからです。
昨年12月20日に発表された平成18年度予算の財務省原案は、新規国債の発行を30兆円以下に抑えるという小泉総理の当初の公約を実現するものでした。しかし、予算は政府の中期目標から考えると、必要以上に緊縮財政になっているのではないかと思われます。今年度当初予算の基礎的財政収支の赤字は15兆9千億円でした。ですから、政府が基礎的財政収支黒字化の目標年次としている7年後の2012年度に、黒字化という目標を達成するためには、年間2兆3千億円ずつ赤字を削減していけばよいことになります。昨年度の赤字は当初予算で19兆円でしたから、昨年度から今年度にかけて基礎的財政収支は3兆1千億円も改善しているのです。
今年度は大きな増税がありませんでしたから、デフレを脱却し、景気を拡大していけば、増税をしなくても財政再建は十分に可能なのです。ところが、平成18年度予算の財務省原案では、基礎的財政収支を4兆7千億円も削減しています。つまり、本来の2倍のスピードで財政赤字を削減しているのです。
計画達成を急いでいるだけという見方もできます。しかし、景気を失速させる可能性もあるほど厳しい緊縮財政を敷いたのは、やはりその先があるのではないかと私は思います。財務省はおそらく借金の残高そのものを減らそうと考えているのではないでしょうか。
借金が減っていくこと自体は望ましいのですが、それを実行するために、景気が失速してしまったり、国民が増税に押しつぶされてしまうようであれば、元も子もありません。政府はもっと時間的に余裕を持って財政再建をすべきですし、それ以前に公共事業や地方や中小企業を切り捨てることではなく、徹底的な行政改革を行って、増税なき財政再建を図るべきなのではないでしょうか。
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