別離のときじゃけん

　わしがその友人宅にいくと、いつも歓迎してくれて庭の菜園でとれた果物や野菜をミヤゲにくれるご夫婦がおるけん。

ところが、そのふたりがそろって体調をくずしたりで、入院したりしとったんじゃがぁ……、

おとうさんは幸い帰宅できるまで回復したけん。

でも、友人が言うにはおかあさんは危篤状態。

医者にはきょうあすじゃろうと言われたそうじゃ……。

それほど親しいとは言えんけど、面識のあるひとのイノチが尽きようという現実に、どうリアクションしたものか戸惑うたけん。

後になって知るぶんには、ご愁傷さまとなぐさめのコトバもかけられるんじゃがのう……。

いま目の前のこのひとは、大きな別離の瞬間をむかえようとしとるワケで、かけるコトバが見つからんけん……。

ほとんどのひとが少なくとも人生に何度かこういうコトを体験するんじゃろうけど、やっぱり辛いもんじゃのう。

いまはのう、わずかな時間でも一緒にいられるのを願うだけじゃけん。

その時間が長ければ長いほど、残されたひとたちは冷静にそのときをむかえられるような気がするけん……。