キジが鳴いたけん

　南大沢の街の成り立ちを知るにはのう、ジブリのアニメ
「平成狸合戦ぽんぽこ」
を見るといいけん。
ニュータウンで、平成に入ってから開発がすすんだのは、この地域だしのう、劇中見たような風景がいっぱいあるけん。
開発がすすむ以前、この辺りはチベットなどと呼ばれとってのう、タヌキくらいしか住んどるもんもおらんかったようじゃけん。

　駅前はリッパに見える南大沢だけどのう、一歩奥地に入ると、東京都が開発を断念した痕跡がまだまだ広がっとるけん。
長年守られてきた里山は、公園を残して大部分が削りとられて、造成した野っ原だけが残されとるけん。
その造成地も、年に何回か草を刈るくらいでのう、だいたい放ったらかしじゃけん。
ぼーぼーにススキのはえた草っ原に毎年暖こうなると、
「ケンケーン！」
と、キジの鳴く声が聞こえるけん。
造成地のススキの間に、姿を見る事も少なくないけん。
この、中途半端な環境に適応しとる、逞しい生き物じゃけん。

　ところが、今年はなかなか声を聞かんのう。
この２年ほど、この界隈はマンションの建設ラッシュでのう、建設技術の向上もあってか、タケノコのように建物が建っているけん。
キジたちも、生活の場を追われて、おらんようなったんかのう。

　と、寂しがっとった矢先、朝からけたたましい声を聞いて安心したけん。
これからは、キジの保護のために、開発はやらん方がいいと思うけん。