映画道楽

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幸せのちから★★★★☆

2007年02月16日 | Weblog
幸せのちから
原題The Pursuit of Happyness

私の幸せの力とは何だろう。あなたの幸せの力は何ですか?

誰かのために頑張ろう。そう思うことで幸福になろうと努力すること。それが幸福の力なのでしょう。例えば妻や子のためにとか。

 人は自分だけのために頑張ろうなんて思っても、そう頑張れません。

映画はアメリカンドリームを実現させた人物の実話をベースにしています、彼もまた頑張れたのは息子がいたからでしょう。

 ウィル・スミスのすばらしい演技だって息子と共演したから引き出されたと思います。

 人は自分だけにためにではなく誰かのために頑張ろうと思わなければ、簡単に気持ちが萎えてしまいます。

 この作品が伝えたかった大事なところです。
 
原題は「The Pursuit of Happyness」、Happynessのyはiが正解で、「The Pursuit of Happiness
」となり、訳は「幸せの追求」です。劇中、チャイナタウンにある託児所に書かれてあるいたずら書きが「Happyness」となっていて、ウィル・スミス演じる父親が子供の教育に良くないと、さかんに訂正をするように託児所の中国人に行っています。
どうしてiをyとわざわざ間違えたのでしょうか。

 原題の「幸せの追求」とはアメリカの独立宣言が元になっています。

すべての人間は平等につくられている.創造主によって,生存,自由そして幸福の追求を含むある侵すべからざる権利を与えられている.これらの権利を確実なものとするために,人は政府という機関をもつ.その正当な権力は被統治者の同意に基づいている(アメリカ独立宣言)

映画のテーマもそこにあります。ただアメリカの独立宣言とは、ちょっと日本人にはピンと来ないと思います。それはアメリカを個人主義の国だという時に、個人主義という意味を取り違えてしまいます。個人主義は利己主義とは違います。日本では個人主義は利己的に見られてしまいます。他人を気にする帰属意識が強い日本人には仕方がないことです。
幸福の追求は決して利己的なものではありません。
劇中のヒッピーのような世界平和を訴え、自分のことだけを考えて生きることのほうが、もっと利己的ではないですか。

だから、この作品を見るときは「私の幸福の追求」を考えるのではなく、「私の幸せの力は何だろう」と考えてみたほうが、よりよく作品を理解できると思います。

原題の意味を歪めたことには間違いないのですが、邦題で「The Pursuit of Happyness」と間違ったスペルを出しても気づかない人だって多いでしょうし、そのままyで覚えられても困ります。また「幸福の追求」ではピンときません。個人主義と同じように誤解されるのはイヤです。そうなると「幸せの力」というのは、よくできた邦題だと思います。

この作品では主人公と同じように無一文になる感覚を味わえます。家賃が払えずアパートから安モーテルへ移ったものの宿代が払えず追い出され地下鉄のトイレで父子が夜を越すシーンや宿泊場所を探して教会の無料宿泊所に並んだとき、定員内に入るためにホームレスと父親が言い争いをするシーンなどから、私は貧しさへの恐怖を感じました。
感じない人は危機意識に欠如していると思われます。ニートかホームレスにならないうちに人生を考え直しましょう。

父親は貧しさの中で絶望するかと思いきや、決して希望だけは捨てませんでした。努力は報われるとは限りません。報われないかもしれないのです。だからと言って努力しないわけにもいきません。努力をしないと権利さえ与えられません。努力するということは希望を持つということです。逆に努力をやめるとは希望を捨てるということです。

笑顔で街を歩く人、希望を持ち明るく歩く人、そちらの側に行きたい。父親はそう願い努力を続けます。息子のためにも頑張りたいと。

幼い息子は父のことを信じています。だから頑張れる。信頼関係がないと頑張れません。
ウィル・スミスは実の息子と共演しています。だから役者としての実力を発揮できたのでしょう。僕はアカデミー賞最優秀主演男優賞を取れると思います。

「クラッシュ」に出演していたダンディ・ニュートンも良かったです。今回も情が薄くて、あまり理解のない妻役でしたがピッタリはまっていました。でも見る側の共感を得ることができる役者です。貧しさに耐えられず家を出て行く妻役なのですが、それは耐えられないだろうと共感しました。薄情な女にはなってしまわない微妙なさじ加減がうまい。役者として力のある証です。

そうした役所の力を最大限に引き出したのはガブリエレ・ムッチーノという監督。英語映画を始めて撮ったイタリアの監督です。リアリズム重視の演出には好感が持てます。話がご都合主義なところはありますが、そこはハリウッド映画なので仕方ないでしょう。