MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2557 政治への信頼を回復するには

2024年03月16日 | 国際・政治

 世界最大の世論調査会社イプソス株式会社が、世界31カ国22,816人を対象に行った職業別信頼度調査(「イプソス職業信頼度調査2023」)によれば、世界でも日本でも、信頼できる職業トップの1位は「医師」、2位は「科学者」が占め、世界の3位は「教師」、日本の3位は「裁判官」だったということです。

 因みに、最も信頼が得られていない職業は共通して「政治家全般」で、世界でのブービー賞は「広告担当幹部」、日本のブービー賞は「政府の閣僚」だったとされています。

 また、自民党の政治資金をめぐる事件を踏まえ、埼玉大学発ベンチャー企業の(株)社会調査研究センターが今年の2月に行った(政治への信頼感に関する)全国調査では、「(政治家を)信頼している」との回答は「大いに」の2%と「ある程度」の23%を合わせても全体の25%過ぎなかったとされています。

 一方、「信頼していない」については、「あまり」の43%と「全く」の31%を合わせて74%に上り、日本人の「大半」が(自分たちが選んだはずの)政治家や政治そのものを信頼していないことが見て取れます。

 このような状況に、「だったら違う政治家を選べばいいのに」…とも思わないではありませんが、実際の選挙でいざ投票となれば、「投票すべき人がいない」「人となりがよくわからない」ということになり、結局「知った顔」に投票してしまうことになるのでしょう。

 こうして(地盤、看板、カバンの3つを備えた)二世、三世が跋扈する日本の政治の特殊性が生まれてくるわけですが、このままでは国民の「政治離れ」は益々進んでしまいます。こうした危機感の下、3月9日の日本経済新聞のコラム『大機小機』に『政治の信頼回復には』と題する一文が寄せられていたので、参考までに小欄にその概要を残しておきたいと思います。

 派閥ぐるみの政治資金規正法違反の重大性もさることながら、改革に及び腰な自民党の内向きな体質が国民の前に露呈されていると、コラムはその冒頭に綴っています。

 (振り返れば)昭和戦前期の軍部の暴走も、政党が国民の信を失ったことに遠因がある。今こそ、危機感を持って全関係者が政治の信頼回復に取り組むべき時だというのが筆者の指摘するところです。

 政治資金に関する徹底した透明化や罰則強化、第三者監査導入は当然必要なこと。合法的な政治活動に必要なお金であれば、資金授受・使途のウェブによる即時公開をためらう理由はないと筆者はしています。

 必要があれば、その上で堂々と使えばよいだけの話である。しかし、たとえ抜本的な政治資金制度改革が実現できても、信頼回復には程遠いというのがコラムにおける筆者の見解です。

 日本の国会議員選挙は供託金が国際的に見ても高く、地方議員などは辞職しないと立候補できない。選挙制度改革でせっかく導入した比例代表でも小選挙区での惜敗率が当選の決め手になるなど、新規参入のハードルが極端に高いと筆者は指摘しています

 結果として、女性や若者は国会議員になりにくい。政治資金団体の相続は非課税という問題もあり、政治家の特権階級イメージが拭えずに国民に政治への疎外感を与えているということです。

 さらに、

①国会審議が形式化し、国会議員が社会的に「有意義な仕事」をしているようには見えにくいこと

②日本独特の与党(関係部会における)における事前審査制があり、非公開で、既得権に影響され不透明な形で法案などの政策が決まってしまうこと

③国会提出後は与野党による実質的審議が少なく、政府からも柔軟に修正提案がしにくいこと

などもあり、政治が国民に身近なもの(つまり「自分たちのもの」)とは感じられなくなっているのが実態だろうということです。

 そんな折、(一方で)昨今の岸田文雄首相の党運営は、小泉純一郎氏以来、安倍晋三・菅義偉氏へと引き継がれた党総裁主導とは一線を画し、派閥に基軸を置き、党内調和を尊重する伝統的手法へ回帰したかに見えたと筆者は話しています。

 しかし、今回の政治資金の不祥事が明らかになった後は、首相自身が派閥の解消を先導。指導力発揮の自由度はむしろ広がったようにも感じられるというのが筆者の感覚です。

 そうした状況を踏まえれば、今求められているのは「ガバナンス改革」のような美語ではなく、実のある具体的行動だと筆者は言います。

 例えば、①比例代表の名簿順位における惜敗率制度を廃止し、若者を増やしジェンダー平等にすること、②事前審査制はやめて委員会審議終了後に党議拘束をかけることなど、自民党の内部で即決できることも多いということです。

 政治家の不法行為や問題行動が国民の「政治離れ」を促し、国民の政治への無関心が政治家から常識や倫理観やさらに奪うという悪循環が、これから先どこまで続くのか。

 最終的には、サラリーマンや主婦のような(いわゆる「普通の」)人たちが、日常の仕事をこなしながら(若しくは仕事を一時的に休んで)政治に簡単に参加できるような仕組みが必要なのでしょう。

 機は既に熟している。まずは最初の一歩として、総裁主導で政治不信の混沌を打開してほしいと話すこのコラムにおける筆者の指摘を、私も興味深く読んだところです。

 



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