MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2519 鮮明化する構図 「日米韓vs中朝ロ」

2023年12月27日 | 国際・政治

 岸田文雄首相は11月11日、航空自衛隊入間基地で開かれた航空観閲式での訓示において、(仮想敵として)日本周辺で軍事活動を活発化させる中国と北朝鮮、ロシアを名指し。現状は「戦後最も厳しく複雑な安全保障環境」にあるとしたうえで、「必要な予算水準を確保して防衛力を抜本的に強化する」と訴えたと伝えられています。

 ウクライナ問題や核開発などにより国際社会から制裁を受け、軍事的にも経済的にも窮地に立たされているロシアと北朝鮮。国境を挟み隣り合う両国が武器取引などにより関係を強める中、一方、その南に接する中国は(こうした)朝ロの動きにやや距離を置き始めているようにも見受けられます。

 とはいえ、地政学的に言っても「敵の敵は味方」というのは万人の知るところ。東アジアを舞台にした「反米同盟」の枢軸国として、中ロは最近、艦艇による射撃演習や爆撃機の共同飛行の頻度を上げているのも事実です。

 ウクライナ、パレスチナと軍事衝突が続く国際情勢ですが、東西の軍事力の接点となる朝鮮半島付近や台湾周辺の東アジアを、「第三の火薬庫」として危険視する向きもあるようです。

 そうした折、11月22日の日本経済新聞に、同紙編集委員の峰岸博氏が『日韓に迫る「同時危機」説 中朝、東アジアで米軍かく乱』と題する論考を寄せていたので、参考までに小欄にその一部を残しておきたいと思います・

 東京・市ケ谷の防衛省庁舎内を歩くと、あちこちで「逆さ地図」が目に入る。それは、大陸側から見たら日本列島がどう映るかを理解するためだと峰岸氏はこの論考に記しています。中国には、日本列島が海洋進出を妨げる「不沈空母」に映り、「いかに邪魔かがわかる」(同省幹部)。さらに韓国は日本の防波堤のような位置にあり、台湾や沖縄などに近いことにもあらためて気づかされるということです。

 さて、日米韓と中朝ロの陣営対立が深まるにつれ日韓の政府関係者や安全保障専門家の間で高まっているのが、この地域を舞台にした「同時危機」説だと氏は話しています。

 中台統一をめざす中国が台湾への侵攻を始める際に、北朝鮮も韓国に局地的挑発をしかけて日米韓をかく乱するというのが一つのシナリオ。中朝が連携して在韓米軍と韓国軍を朝鮮半島に足止めし、台湾への援軍を断つ。ロシアも日本に揺さぶりをかけ、米軍の能力を分散させるといった不気味な観測もあるということです。

 最悪の事態を想定するのが危機管理であれば、備えは怠れない。実際、台湾海峡での有事では、日本は米軍の作戦・後方支援基地としてほぼ自動的にかかわるケースが予想されていると氏はしています。

 一方で、邦人の保護も重い課題になる。海上貿易が約9割を占める韓国も台湾周辺は主要な海上輸送路のひとつ。敵対勢力が台湾を手にし、バシー海峡や台湾海峡が封鎖されれば、中東から重要物資が届かなくなる日韓両国の利害は重なるということです。

 一般に台湾有事への関心が薄いと言われる韓国。国民の間には米中紛争に巻き込まれたくない意識も強く、北朝鮮危機が加われば、目の前の敵に専念せざるを得ないだろうと峰岸氏は見ています。一方、二正面での展開が難しいのは日本も同じこと。氏によれば、同時危機なら台湾有事は日米同盟が、朝鮮半島有事は米韓連合軍が主体となって対処し、もう一方が後方支援に回る役割分担が現実的な解だろうということです。

 そして、その際頼りになるのが50万人あまりの韓国軍だと峰岸氏は指摘しています。米最新鋭戦闘機F35Aを40機導入し、長距離打撃能力や最先端の技術を活用した戦略もめざましい。米国の軍事力評価機関によるランキングで世界6位を誇る彼の国は、世界第4位の武器輸出大国をめざしているということです。

 一方の日本も、韓国にとって地政学的に重要な位置を占めていると氏は言います。日本は国連軍の後方基地としての役割を担っている。北朝鮮が侵攻した場合、国連軍司令部が自動的かつ即時的に介入して報復することになっていると、尹錫悦大統領は国民に向け話しているということです。

 日韓はインド太平洋の「ミッシングリンク」(欠けた輪)と危惧されてきた。しかし、中朝ロの軍事的な連携が指摘される現在、同じ危険にさらされていることを肝に銘じる必要があるというのが、この論考で氏の主張するところです。

 一方、日米と米韓の2つの同盟が連携を深めるほど、メリットだけでなくリスクも生じると氏は指摘しています。反撃能力が高まれば、敵から一体としてみられ、ともに狙われかねないというものです。

 そうした中では、(だからこそ)日米韓で指揮命令系統を擦りあわせておくことが必要で、中国や北朝鮮への抑止力の強化にも繋がると氏はこの論考の最後に綴っています。2つの同盟は成り立ちや性格が異なる。日韓は現状を突き詰め、相手を生かすシナジー(相乗効果)が求められる。それが歴史の葛藤を乗り越える一歩にもなろうと話す峰岸氏の指摘を、私も興味深く読んだところです。



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