MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2602 結婚して良かったな…と思うこと

2024年06月28日 | 日記・エッセイ・コラム

 株式会社オノフ(東京都渋谷区)が昨年(2023年)7月、全国の16〜69歳の未婚女性2816人を対象にインターネットを通じて「結婚観」に関する調査を行っています。

 その結果ですが、まず「結婚願望の有無」について、「結婚は考えていない/したくない」と答えた女性が半数を超える50.9%を占めたとのこと。一方、「絶対に結婚がしたい」は10.5%、「いい人がいれば結婚したい」は38.6%となり、未婚女性の間で「結婚」がさほど重きを置かれていないことが改めてみて取れます。

 そこで、「結婚は考えていない/したくない」と答えた1433人に対して、「結婚願望がない理由」を複数回答で答えてもらったところ、①「人と一緒に住むことが負担に感じるから」(37.8%)、②「独り身の方が向いているから」(37.3%)、③「必要性を感じないから」、③「自由な時間が欲しいから」(いずれも31.1%)、⑤「結婚に憧れがないから」(30.4%)などが上位に挙がったとされています。

 一方、「絶対に結婚がしたい」に答えた297人に対して同様に答えてもらったところでは、①「好きな人/パートナーとずっと一緒にいたいから」(50.5%)、②「家庭を持ちたいから」(45.5%)、③「子供が欲しいから」(44.1%)、④「安心感が欲しいから」(43.8%)などが上位に挙がったということです。

 確かに私の経験上から言って、結婚生活には結構面倒くさい面があるのもまた事実。実際、(それまで何不自由なく暮らしていた)赤の他人が四六時中一緒に過ごしていくのですから、それなりのストレスが溜まってくるのも仕方のないことなのでしょう。

 時に、結婚生活が監獄のように感じられ、「不幸の原因」としてパートナーにかすかな殺意を抱くことなどもないとは言えない。少なくとも、「あー、この人と結婚さえしていなければ…」と、己の決断に後悔の念を抱いている人だったら、割合として決して少なくはないでしょう。

 現代人にとって、それでも結婚する理由はどこにあるのか。6月13日の経済情報サイト「東洋経済ONLINE」が、韓国の精神科医で作家キム・ヘナム氏の近著「人間として最良のこと as a person」を抜粋し、『夫婦の仲を維持し親密にする最も大きな力とは?』と題する興味深い記事を掲載していたので、前回に引き続き一部を小欄に残しておきたいと思います。

 キム氏によれば、結婚生活を不幸にする大きな要素のひとつに、配偶者をほかの人と絶えず比較する癖があるとのこと。いざ1人を選んで結婚をしてみると、ほかの人を選んだほうがよかったような気がして、思わず比較するようになる。「隣の旦那さんは稼ぎもいいし家庭的なのに…」、「あの奥さんはやりくり上手だし、愛嬌もあって満点だね…」などともし言われたら、あなたは「わかったから、その人を連れてきて一緒に暮らしなよ」と強気に言い返さなければならないとキム氏はその著書に綴っています。

 もちろん、配偶者よりも「よく見える人」はいる。しかし、その見えている姿がすべてではないと氏は言います。

 その人物が家で配偶者に対して、どのような態度を取るのかは誰にもわからない。しかしそれでも、配偶者の欠点を目の前にして、あなたの選択に深い悔恨が押し寄せてくるのだとすれば、しばらく視線を自身に向けてみる必要があるというのが氏の見解です。

 それは、(何度も同じような理由で離婚した人たちがそうであったように)例え配偶者を別人に取り換えても、あなたが変わらない限り似たような問題が繰り返されるはずだから。そして、あなたが今、誘惑に心ゆらいでいるのであれば、もしかしたら「選ばなかった道」を見ようとして、目の前に咲いているきれいな花々を見逃している可能性があるということです。

 「死んでしまえばいいのに」…だれが言ったかは知らないが、「妻が死んだら夫はトイレでほくそ笑む」という言葉があると、氏はここで話しています。憔悴した顔で弔問客を迎えていた男性が、1人で便器を前に笑う姿…女であれば、その姿を思い浮かべるだけで鳥肌が立つと氏は言います。

 この話はおそらく、日々の結婚生活にうんざりし、心のなかで妻が死んでしまえばいいのにと思っている男たちの想像から始まっているはず。しかし、妻たちもおとなしくしているだけではない。酒を呑んで夜遅く帰ってきた夫が眠っている家族を起こして大騒ぎをしたりすると、大概の妻は夫に背を向けて「あんたが死んでしまえばいいのに」と考えるだろうということです。

 しかし、本当に不思議な関係が夫婦だとキム氏は続けます。「死んだらいいのに」と思っていた夫が、いざ連絡なしに数日間いなくなるだけで大変不安になるし、ある日、後ろ姿すら見たくなかった妻が病に倒れると、1人取り残されるのではないかと突然におじけづいたりする。

 しかも、それが1日、2日と過ぎると、様々なことに気づくことになる。1人で食べる食事はおいしくないし、好きなテレビ番組を好きなだけ観ることができるのになんとなくつまらない。そして、あんなにうんざりしていたいつもの小言が聞きたくなったりするということです。

 これは、夫婦の仲を維持し親密にする最も大きな力が、この「共に行う」ことだからだとキム氏はこの著書で指摘しています。

 1人で行う経験は瞬間的に終わるものが多いが、配偶者とともに行った経験とそのときの感情は二人の間で共鳴し増幅する。それだけでなく、その経験を配偶者とともに記憶しているという事実は経験の記憶に確信を与え、そこに生命力を吹き込んでくれるということです。

 「喜びは分かち合えば2倍になる」という言葉のように、感動も分かち合えば共鳴し、増幅し、そして心に刻まれると氏は言います。

 あなたのつまらない習慣さえも知りつくし、知りながら我慢してくれるだけでなく愛してくれる人。人生の歴史を一緒に歩んでいる人であり、いまの経験を共有しその経験に意味と生命力を与えてくれる人。その人こそがあなたの配偶者だということです。

 結婚は、(今流行りの)「コスパ」で言えば、確かにそんなに良くはないかもしれません。でも一旦結婚をしてしまえれば、(嫌でも)自分のすぐ近くで、自分の人生を見てくれている人がいる。そして、たったそれだけのことで、時に人は頑張れることもあるような気がします。

 多少思い通りにならないところがあったとしても、それはそれで人生のスパイスのようなもの。何にしろ「共に行う」誰かがいるということ、それこそが人生における最大の祝福ではないかと話すキム氏の指摘を、私も「さもありなん」と頷きながら読んだところです。



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