MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

 伊皿子坂社会経済研究所のスクラップファイルサイトにようこそ。

#2546 投票率を上げるには?

2024年02月21日 | 国際・政治

 日本の国政選挙の投票率は、直近では令和3年10月に行われた第49回衆議院議員総選挙で55.93%、令和4年7月に行われた第26回参議院議員通常選挙では52.05%となっています。

 これまでの衆議院議員選挙の中で投票率が最も高かったのは、昭和33年の第28回の76.99%とのこと。その後、平成の始め頃までは70%前後をキープしていましたが、平成8年の第41回に59.65%まで急落。以降、いくつかの波はあったものの平成26年の第47回には、52.66%の最低投票率を記録しています。

 因みに、直近の(第49回)衆議院議員選挙における年代別の投票率の状況を見ると、最も低いのが20歳代の36.5%とのこと。以下、10歳代の43.21%、30歳代の47.12%と続き、特に若い世代の投票率の低さが目立つ状況です。

 メディアなどでも大きく取り上げられる国政選挙ですら、有権者の約半数程度しか投票所に足を運ばなくなっている現状に「若者の政治への無関心」を嘆くのは簡単ですが、ここで(個人の生活に忙しい)20代、30代を責めても恐らく何も変わらないでしょう。

 海外ではパレスチナやウクライナの情勢がひっ迫し、また国内では能登地域での昼夜を徹した復旧作業が続く中、一方で派閥の在り方や政治とカネの問題などの「井戸の中」の議論ばかりに終始する国政の議論に、有権者が何も期待しなくなっているのは想像に難くありません。

 国民の三大権利のひとつとされる「参政権」ですが、国内の普通の人々が、もっと普通に、主体的に政治に関われるようにするにはどうしたらよいのか?2月8日の総合情報サイト「Newsweek日本版」に、社会派のコラムもこなすお笑い芸人のプチ鹿島氏が、「日本の不思議さ」が浮き彫りに…台湾のお祭り的な選挙現場が教えてくれること」と題する一文を寄せているので、参考までにその一部を残しておきたいと思います。

 先日の総統選挙に併せ、台湾の選挙の様子を見に行ってきた。ここ数年日本各地の選挙戦を現場で見ている私だが、台湾の選挙は本当にお祭りだったと鹿島氏はこの論考の冒頭に綴っています。

 与野党の各集会に出てみると20万人以上集まっていて、若者や家族連れも多い。音楽ライブもありフェスのようで、毎日が年越し気分だったというのが氏の感想です。

 台湾には期日前投票や不在者投票がないのに、投票率は7割超。なぜこんなに選挙が熱いのかといろいろ聞いてみたところ、「多様な考えがあるからこそ選挙で自分の考えを示さないと存在している意味がない」という言葉が印象的だったと氏は言います。

 台湾の選挙を見て考えさせられたのは、まず4年に1度の総統選というシステムの分かりやすさがあるということ。政党も有権者も過去4年の総括ができ、皆がその日に備えるから盛り上がりやすいのだろうというのが氏の見解です。

 日本とは選挙制度が異なり単純比較はできないが、日本でももっと「祭り」に近づける工夫はできるのではないか。例えば首相の専権事項としての憲法7条に基づく「解散権」を制限するのも一案ではないかというのが、この論考で氏の提案するところです。

 解散権があれば権力側が有利なときに解散を仕掛けられるため、「また選挙?」というタイミングで無党派層をシラケさせ、組織票を持つ党や候補が有利にすることも可能になる。(いわば)l国民を「祭り」にさせない選挙ができるので、こういう解散権の乱用は制限すべきではないかと氏は言います。(ちなみに、台湾総統にも解散権はあるが、過去一度も使われたことがないということです。)

 また、台湾では若者はイデオロギーだけでなく「家賃が高い」「給料が安い」など生活に関することにも声を上げていたと氏はしています。今回の選挙では新興政党の民衆党は、そんな若者層に支持されて存在感を示した。若者たちは政治を「自分ごと」と認識し、それぞれの判断を口にし、それぞれの運動につなげていたということです。

 さらに、台湾では「権力に対する警戒」も実感したと氏は話しています。現野党の国民党の一党独裁が続いた歴史もあり、国金の間には長期政権に対する警戒感がかなりある。今回は政権交代がなかったが、(国民の選択は)議会に当たる立法院選で民進党は過半数を取れないという絶妙といえば絶妙な結果だったということです。

 さて、昨年3月12日の日本経済新聞は、自民党の麻生太郎副総裁が千葉県八千代市での街頭演説で、日本は他国と比べて国内情勢や治安が安定しているとして「政治に関心がないことは決して悪いことではない。健康なときに、健康に興味がないのと同じだ」と話したと報じています。

 彼がしばしば口にしてきた、「「政治に関心がないのはけしからん」とえらそうに言う人もいる。しかし政治に関心を持たなくても生きていけるというのは良い国で、考えなきゃ生きていけない国のほうがよほど問題なんだ。」という言葉は、長年日本の政治を担ってきた与党政治家のまさに持論と言うべきものなのでしょう。

 一方、鹿島氏はこの論考の最後に、台湾の有権者は政治家や権力に対して常に緊張感を与えていると話しています。彼の国では、政治権力に対して「下手をすれば政権交代させられる」という緊張感を与え続けることが必要だという感覚が、国民の間に共有されているとのこと。

 翻って、日本の政治家たちはどうなのか。この予算編成の大事な時期に、国会の議論は(与野党を含め)派閥や献金の在り方などに終始するばかり。既に世論に見放されかけていることに気が付かない(昨今の)彼らの緊張感の無さには、改めて呆れるばかりです。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿