小説・鉄槌のスナイパー・二章・NOー(62)&CG合成
その話しを元に、警察では身元を探しております。そして現在、長野県警山岳救助隊では天候が良くなり次第、救助に向かう準備を整え、待機していると言う事です」。京兵はテレビを消した。
「あの六人じゃない。天罰だよ、私達が手を下さなくても罰が当たったのよ」。
「こんな事ってあんのかな。まさかあんな所で滑落するなんてさ。道幅も十分あるし、何もロープを結び付けて歩くほど危険な所じゃないぞ。不意を憑かれたんだ。遭難する時ってそんなもんだ」。
「それで六人が落ちた所ってどんな所なの」?
「うん、下はガレ場で鋭く尖った石がゴロゴロしていてさ。落ちたらまず助からないだろうな。あんな所で落ちたなんて話しは聴いた事がないよ」。
「そう、今日はもう捜索は無理ね。もう時期真っ暗になるもの」。
「いや、あそこなら暗くても天候さえ良くなれば行けるよ。下は灘かで何にもないから、ヘリも着陸できる」。
しかし、その夜は一晩中激しい雨が降り続き、捜索は断念された。
翌朝、その朝もまだ激しく大粒の雨は振っていた。「こりゃ捜索は無理だな」。
現地の捜索隊は成す術がなかった。
激しい雨はようやく昼前には雨が上がり、今度は濃霧が辺りを包み込んでいた。
そしてガスっていた霧も晴れ、山々が目視されるようになったのは午後になってからだった。捜索隊は重装備で山へ向かった。
上空には救助に向かうヘリの爆音が山岳に鳴り響いていた。
そして二時間、午後二時に滑落した現場に辿り着いた救助隊が目にしたのは、無残な遭難者の六人の姿だった。
滑落のショックで頭部が割れ、大雨で脳が流されていたのだった。そして、或者は手足が折れ曲がり、身体は砕け、腹部は裂けて体がバラバラになり、滑落の恐ろしさをまじまじと物語っていた
誰一人として生存者はなかった。救助隊員は手足を拾い集めては六人全員の死亡を確認し、遺体を収容した。
翌日の晩、京平の元へ救助に向かった山岳救助隊隊員の山田が来た。その話を聴いた。美保は目を細めて聴き入っていた。
「それで身元はやっぱり登山者が聴いた人達だったよ。なんでも大学の同期で六人とも開業医の院長さんだってさ。
なんであんな所から落ちたのかな。ザイルが六人の命を奪ったようなもんさ。じゃあ奥さん御馳走様」。と、山田政晴は帰った。
「なんか残酷な話しね、でも死に様がその人の人生の縮図って言うけど。あんな事さえしなきゃ長生き出たのに」。
「それもそうだけど、まともな病院経営さえしてれば僕等の罠に嵌まる事もなかった。例え事故死とは言え、千五百人だからな、その女性の恨みを背負って死んだんだよ。
六人の中の宮田輝雄と言う医者を通して話を進めていたろ。あの男が上高知の話を出した時に、そこで私達を殺すんですかって聞いたんだ。覚悟していたと思うよ」。
「そう、そんな事言ったの。じゃあ身辺整理して来たのかも知れないね。最後に何か悟って死んだんなら良いけど」。
「ほら、中の湯温泉でダンボール箱を抱えて来たろ、あの声が宮田だってすぐに分かった。患者を騙してあんな卑劣な事をしていたような顔には思えなかったけど、人間って分からないもんだな」。
「京平さん・・・」。そう言うと自分を指さしている美保だった。
「エ~ッ・・・本当だ、僕達も一緒か。顔や見掛けでは判断できないって事か。こいつ~っアッハハハハ」。京平は美保を抱き締め、そっと唇を重ねた。
そして二日が過ぎた。京平と美保は食事を済ませ、テレビを付けた。午後のュースが始まっていた。画面では割谷山から転落死した遺体の司法解剖も済んだ事を伝え、遺族が遺体を引き取りに来た事を流していた。
すると、美保が突然立ち上がってテレビに走った。そして画面を食い入るように見ていた。
そして映像が切り替わって外のニュースになると京平の隣に座った。
「いまの遺族の女の子、私の同期の子よ。大学では殆ど話した事なかったけど顔は覚えている。佐野加奈江さん、まさか佐野吉晴の娘だったなんて皮肉ね」。
「そうか、美保の同期か」。
そんな話しをしていると「お二人さ~ん!」と京平と美保は母良江に呼ばれて事務所に降りた。すると静岡県警の三河警部と小森刑事が立っていた。
「どうも、お休みの所済みません。少し良いですか」?
刑事は済まなそうに頭をかいていた。京平は家の応接間に通した。
「またですか、今日はなんです?・・また大浜の事ですか」?
「いいえ、今日は割房山で転落死した東京の医師の吉原信次さんの事で来ました。実はあの吉原医師は大浜で殺害された二人の一人、堀田俊也と関係がありましてね。驚きましたよ、我々が調べていた或事件の容疑者が突然転落死ですから。それで事実確認と滑落したその時の状況を調べに来たんです。後に続いて登山していた人から聞くと事故だったようです。
それで調べていたら、当日お二人が登山に行かれていた事をお聞きしましてね。それであの人達の事で何かご存じかと思いまして、また叱られるのを覚悟でお邪魔した次第です」。
「確かに行っていました。警部は僕たちの行く所死人ありですか」。
「いいえ、そう申し上げている訳ではありません・・・」。
「あの日は前以て予定していた登山なんです。今年最後の登山をと思いましてね。妻も初めてでしたから。行動から話しますか?・・・」。
「いえ、それは結構です。何か見たとか聞いたとかありませんでしたかね」。
「それは何に着いてですか?・・・登山者はいつもの休日より少なかったですが大勢いましたから。何か見たかと聞かれても漠然として何を話していいのか分かりませんよ」。
「では到着した時間は何時ころですか」?
「九時ごろですが、勿論車でですが。止めたのは中の湯温泉の北にある駐車場です。それで直ぐに山に入りましたけど」。
「そうですか、では歩荷さんと会いませんでした。その歩荷さんと一緒に上って行ったと言う女性は知りませんか」?
「いいえ、美保は見たか」?
「刑事さん、その歩荷さんってなんですか。私は初心者もいいとこで山の事は何も知らないんです」。
刑事は薄笑いを浮かべると説明した。美保はうんうんと身を乗り出して聞いていた。NO-62-46
その話しを元に、警察では身元を探しております。そして現在、長野県警山岳救助隊では天候が良くなり次第、救助に向かう準備を整え、待機していると言う事です」。京兵はテレビを消した。
「あの六人じゃない。天罰だよ、私達が手を下さなくても罰が当たったのよ」。
「こんな事ってあんのかな。まさかあんな所で滑落するなんてさ。道幅も十分あるし、何もロープを結び付けて歩くほど危険な所じゃないぞ。不意を憑かれたんだ。遭難する時ってそんなもんだ」。
「それで六人が落ちた所ってどんな所なの」?
「うん、下はガレ場で鋭く尖った石がゴロゴロしていてさ。落ちたらまず助からないだろうな。あんな所で落ちたなんて話しは聴いた事がないよ」。
「そう、今日はもう捜索は無理ね。もう時期真っ暗になるもの」。
「いや、あそこなら暗くても天候さえ良くなれば行けるよ。下は灘かで何にもないから、ヘリも着陸できる」。
しかし、その夜は一晩中激しい雨が降り続き、捜索は断念された。
翌朝、その朝もまだ激しく大粒の雨は振っていた。「こりゃ捜索は無理だな」。
現地の捜索隊は成す術がなかった。
激しい雨はようやく昼前には雨が上がり、今度は濃霧が辺りを包み込んでいた。
そしてガスっていた霧も晴れ、山々が目視されるようになったのは午後になってからだった。捜索隊は重装備で山へ向かった。
上空には救助に向かうヘリの爆音が山岳に鳴り響いていた。
そして二時間、午後二時に滑落した現場に辿り着いた救助隊が目にしたのは、無残な遭難者の六人の姿だった。
滑落のショックで頭部が割れ、大雨で脳が流されていたのだった。そして、或者は手足が折れ曲がり、身体は砕け、腹部は裂けて体がバラバラになり、滑落の恐ろしさをまじまじと物語っていた
誰一人として生存者はなかった。救助隊員は手足を拾い集めては六人全員の死亡を確認し、遺体を収容した。
翌日の晩、京平の元へ救助に向かった山岳救助隊隊員の山田が来た。その話を聴いた。美保は目を細めて聴き入っていた。
「それで身元はやっぱり登山者が聴いた人達だったよ。なんでも大学の同期で六人とも開業医の院長さんだってさ。
なんであんな所から落ちたのかな。ザイルが六人の命を奪ったようなもんさ。じゃあ奥さん御馳走様」。と、山田政晴は帰った。
「なんか残酷な話しね、でも死に様がその人の人生の縮図って言うけど。あんな事さえしなきゃ長生き出たのに」。
「それもそうだけど、まともな病院経営さえしてれば僕等の罠に嵌まる事もなかった。例え事故死とは言え、千五百人だからな、その女性の恨みを背負って死んだんだよ。
六人の中の宮田輝雄と言う医者を通して話を進めていたろ。あの男が上高知の話を出した時に、そこで私達を殺すんですかって聞いたんだ。覚悟していたと思うよ」。
「そう、そんな事言ったの。じゃあ身辺整理して来たのかも知れないね。最後に何か悟って死んだんなら良いけど」。
「ほら、中の湯温泉でダンボール箱を抱えて来たろ、あの声が宮田だってすぐに分かった。患者を騙してあんな卑劣な事をしていたような顔には思えなかったけど、人間って分からないもんだな」。
「京平さん・・・」。そう言うと自分を指さしている美保だった。
「エ~ッ・・・本当だ、僕達も一緒か。顔や見掛けでは判断できないって事か。こいつ~っアッハハハハ」。京平は美保を抱き締め、そっと唇を重ねた。
そして二日が過ぎた。京平と美保は食事を済ませ、テレビを付けた。午後のュースが始まっていた。画面では割谷山から転落死した遺体の司法解剖も済んだ事を伝え、遺族が遺体を引き取りに来た事を流していた。
すると、美保が突然立ち上がってテレビに走った。そして画面を食い入るように見ていた。
そして映像が切り替わって外のニュースになると京平の隣に座った。
「いまの遺族の女の子、私の同期の子よ。大学では殆ど話した事なかったけど顔は覚えている。佐野加奈江さん、まさか佐野吉晴の娘だったなんて皮肉ね」。
「そうか、美保の同期か」。
そんな話しをしていると「お二人さ~ん!」と京平と美保は母良江に呼ばれて事務所に降りた。すると静岡県警の三河警部と小森刑事が立っていた。
「どうも、お休みの所済みません。少し良いですか」?
刑事は済まなそうに頭をかいていた。京平は家の応接間に通した。
「またですか、今日はなんです?・・また大浜の事ですか」?
「いいえ、今日は割房山で転落死した東京の医師の吉原信次さんの事で来ました。実はあの吉原医師は大浜で殺害された二人の一人、堀田俊也と関係がありましてね。驚きましたよ、我々が調べていた或事件の容疑者が突然転落死ですから。それで事実確認と滑落したその時の状況を調べに来たんです。後に続いて登山していた人から聞くと事故だったようです。
それで調べていたら、当日お二人が登山に行かれていた事をお聞きしましてね。それであの人達の事で何かご存じかと思いまして、また叱られるのを覚悟でお邪魔した次第です」。
「確かに行っていました。警部は僕たちの行く所死人ありですか」。
「いいえ、そう申し上げている訳ではありません・・・」。
「あの日は前以て予定していた登山なんです。今年最後の登山をと思いましてね。妻も初めてでしたから。行動から話しますか?・・・」。
「いえ、それは結構です。何か見たとか聞いたとかありませんでしたかね」。
「それは何に着いてですか?・・・登山者はいつもの休日より少なかったですが大勢いましたから。何か見たかと聞かれても漠然として何を話していいのか分かりませんよ」。
「では到着した時間は何時ころですか」?
「九時ごろですが、勿論車でですが。止めたのは中の湯温泉の北にある駐車場です。それで直ぐに山に入りましたけど」。
「そうですか、では歩荷さんと会いませんでした。その歩荷さんと一緒に上って行ったと言う女性は知りませんか」?
「いいえ、美保は見たか」?
「刑事さん、その歩荷さんってなんですか。私は初心者もいいとこで山の事は何も知らないんです」。
刑事は薄笑いを浮かべると説明した。美保はうんうんと身を乗り出して聞いていた。NO-62-46