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20XX年・クエスチャン (-14-)

2010-09-06 01:18:26 | 20XX年・クエスチョン
20XX年・クエスチャン (-14-)

「真由美の言う通りです。旅客機は一瞬にしてエンジンは停止し、乗員乗客は即死だったでしょう。でも疑問は残ります」。
新田の表情は見る間に蒼白し、眼鏡の下の目は、カッと見開いていた。
佐伯は次のページを捲った。
「解らないのは何故あんな大きなタンカーや航空機が消えたかです。何処へ消えたかです。それも同時刻に世界中で不規則な範囲で異変が起きてるんです」。
真由美は夫にも言えず、ある仮説を描いて居た。口にして良いのか戸惑いながら夫の横顔を、チラ、チラと見ている。
「真由美、何か良いたそうだけど・・・」。 
「う・・うん、科学者として根拠が無いんだけど。あの真空層は異次元空間じゃないかって、でも真空層の周辺から磁波が観測されてないから・・・」。まるで少女の様に、尻蕾に言葉がか細くなっていた。佐伯は二度三度と頷く。
「俺もその事は頭になかった訳じゃないんだ。こうは考えられないか。宇宙にブラックホールやワームホールが存在するなら、何らかの理由でこの地球上に類似した何かが出現したとしたら」。
「何だ、その聞き慣れないワームホールと言うのは。ブラックホールと言うのは何でもかんでも引き寄せて飲み込んでしまうって奴だろ。
高密度の天体で重力が強烈に強い為に物質も光も放出できないっていう」。
「知っているじゃないですか。ええ、ワームホールと言うのは簡単に言うと新しい宇宙に通じる入り口だと言われています。その先にはホワイトホールと言う新しい宇宙が存在していると言う学説です」。
「ああ、聞いた事あります。ホーキンス博士ですね」。
「ええ、物理学者なら誰でも知っている名です。当時は不治の病だった筋ジストロフィー症と闘いながら、アインシュタインの一般相対性理論を解明した車椅子の偉大な物理学者です。今ではDNA治療で完治しますが」。
「でもどうしてそんな物が・・・」。 
その問いに答えられる適格な言葉は用意してなかった。
「逃げろ~ッ崩れるぞ~ッ」
倉庫中に響き渡る作業員の声。振り返った。佐伯たちは我が目を疑った。灰色の埃に包まれていた。目を閉じ、袖で口と鼻お覆った。
「皆~ッ!じっとして動くな~ッ!・・・」。新田の声が響き渡る。次第に粉塵が収まり、徐々に視界が開けて行く。そこで目にした物は・・・旅客機の残骸を支えていた足場を残して機体が粉々に崩れていた。  
五人は走る事を忘れた様に小幅に足を運ぶ。関係者も唖然と立ち竦んでいる。
「嘘だろう、なんなんだこれは。何が起こったんだ。これが飛行機の機体か、まるで砂の様にサラサラじゃないか」。
佐伯は屈んだ、砂状になった機体に振れ様と腕を延ばす。
「駄目ッ!触っちゃ駄目ッ!・・・調べてからじゃないと危険よ」。
「大丈夫だよ、もし毒性があればここに居る人間はとっくに死んでいるさ。崩れた時に舞い上がった埃を吸い込んでいるからね。         
さっきまで乗って調べていたのにどうして突然崩れたんだ。御覧、さっきより粒子が細かくなってる。小麦粉だ」。
まるで生き物の様に粒子が更に分解している。ポケットからビニール袋を出して広げ、真由美に持たせ、両手でゴッソリと掬ってサンプルを取った。
「誰かッ、崩れた所をビデオに収めた人はいますかッ」。
周囲を見回す佐伯。 
「司令、全て収めました。監視カメラでも撮っています」。それは事務所から流れるスピ-カ-からだった。
「佐伯司令さん、撮っているそうですよ・・・ウフッ・・・」。
「からかうなよ・・・真由美、皆さん、これはきっと真空帯に関係あるぞ。
新田先輩、至急オーストラリアで墜落したセスナの脱落した垂直尾翼とデーターを取り寄せて下さい。きっと向こうでも同じ事が起きている筈です」。
新田は頷き、事務所を見ながら大きく手を上げた。そしてトランシーバーを持つと、佐伯に言われた儘を指示する。
佐伯は思った。消息を絶ったタンカーや航空機が真空帯が原因なら・・・生存者は絶望だろうと。何万人もの人達が犠牲になった。
自分等学者の怠慢が悲劇をもたらした。そう思うと、用宗港で見た肉片となった女性の顔が脳裏を過ぎる。沈黙し、粉状になった機体を見詰める佐伯だった。
そんな夫が何を思うか真由美は察していた。そっと左腕を夫の視線に差し出した。
「うん、分かっている。そろそろ行こうか」。
NO-14-28

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