公開が1997年と古い。
西田尚美さん主演のコメディ作品。
今やバイプレイヤーとして確固たる地位を築き、色んな役をこなせる名女優である。
不思議な存在感のある魅力的な女優だ。
監督は矢口史靖。
ウォーターボーイズ、スウィングガールズ、ハッピーフライト、Wood Job、サバイバルファミリー等の作品がある。
何故か全部観ていた。

鈴木咲子(西田尚美)は、子どもの頃からお金を貯めるのが大好きで、小学生のときには預金通帳を持っていた。銀行に勤めたのも母の勧めもあるが、お札を数えられるから。
ある日、咲子は銀行強盗に巻き込まれ拉致されてしまう。強盗団は車で逃走中に富士の樹海・青木ヶ原で横転、爆破。車のトランクに閉じ込められていた咲子は爆破寸前に脱出。
激流に流れ流され、やがて池壺に落下。辛くも助かる。
無事生還した咲子はTVでも放映され、時の人となる。
半年ほどの治療、リハビリ終えて職場復帰するが怠け癖がついてしまい、お札を数えても自分のものにならないと嫌気がさしてくる。
樹海で一緒に池に落ちた黄色のトランクが忘れられない。5億円が入っているからだ。
青木ヶ原の池の場所が特定できない。
何とか探し出し5億円を手にすることが咲子の目標になる。
咲子の作戦が始まるのだ。
まず家族で青木ヶ原に向かう。
理解ある家族だが妹の美香は渋々。咲子は一人で勝手に樹海に入り岩から落下し、またも遭難しかける。
富士の樹海の探索など素人が容易に出来るものではないと悟り、TVに出ていた樹海の専門家の森田教授を訪問。
森田教授から地質学を学ぶために多摩川大学を受験。何とか補欠合格。
とにかく熱心。真面目に講義を聴きノートもしっかり。他の学生のお手本になる。
教授からは特待生に推され、卒業後も研究室に残るように勧められる。

本来なら無気力でダラダラしているのが得意な咲子だが、金の為なら物凄い集中力と行動力を発揮するのだ。
咲子は、樹海の池の稚拙なイラストマップを作成している。
高額な機材も買いそろえ測量・探査の技術も習得してゆく。目的達成のために必要なことに迷わず投資する。資金は銀行辞めるときに解約した定期預金だ。
知識だけではなく技術も磨く。
池に潜るためスキューバダイビング教室、同時にスイミングスクールで水泳を。
岸壁を登るため、ロック・クライミング。
咲子は優れた運動神経の持ち主だったんだ。
自動車運転免許もとり、車も購入。
どれも秘密のお宝を手にするための投資だ。
出費が重なり、預金が底をついてもくじけない。ランジェリー・パブで働く。逞しい。


咲子は実家に忍びで戻り、預金通帳と印鑑を拝借して、銀行員の制服に着替える。
家族が帰宅。咲子は2階の屋根から飛び降り逃走。紙袋は破れて通帳は散逸。
4WD車の後にカエルのごとく張りつき移動。
咲子は銀行員の制服姿で青木ヶ原に。
諦めずに苦労の末、池壺を発見。
透き通った池壺の底に確かに黄色のトランク見える。
見事に5億円を手に入れる。
いつも緩い感じの咲子の顔がキラキラと輝く。

地質学研究室の江戸川には、5億円は自分だけのひみつの場所に埋めてしまったと言う。
次なる目標を見つけているのだ。
バミューダ海域に沈んでいるというお宝探しだ。

キャスティングがいい、演技もいい。
まず西田尚美さんのキャラ、演技だろう。
モデルから女優になり初主演。綺麗で可愛い方だが、咲子の脱力した空気感は西田さんしか出せないような気がする。金に執着し、「コーヒーおごりならその分お金ちょうだい」、払えない授業料に「じゃ前借りで」。
咲子らしく笑っちゃう。
咲子の家族はリアリティがあり代役が効かないほどハマっている。
母親は角替和枝、父親は鶴田忍。
妹の美香役の田中規子がよい。妹らしい表情・表現は見事だ。田中さんは芸能界は引退しているらしいが。
鈴木家の家族は雰囲気がよいのは、明るい母親の存在があるから、角替さんの自然な演技ならではだ。鬼籍に入って残念だ。
注意していないと気がつかないかもしれないが、水泳のインストラクターを木村多江が演じている。ロッククライミング指導は田中要次。伊集院光は自動車教習所の教官役。
30年も前だが皆んな若い。
椿銀行支店長に徳井優。
徳井さんはどんな作品でもいいカラーを出す方だ。
多摩川大学の森田教授に内藤武敏。
助手の江戸川に利重剛。
利重剛は今はオヤジ役のバイプレイヤーで活躍してるいるが、何処にでも居そうな男を出しゃばらず演じている。できそうでできない。
江戸川助手の元カノの伊丹弥生役に加藤貴子。なかなか面白い絡みを見せる、元カノなのに咲子に嫉妬している。
彼女も西田さんと同じ位の年齢で、デビューしてから間もないのではないだろうか。
弥生は咲子への対抗心で水泳をやり、オリンピック強化選手まで上りつめてしまう。
ちょい役だが図書館受付嬢に濱田マリ。
ストーリーはシンプルだがテンポがよい。
咲子は思いたったらまっしぐらにバンバン進む。努力が報われるところがいい。
教訓じみたことはゼロ、不思議な勇気を与えてくれる。
も一つ言えば、恋愛沙汰がないこと、また誰も死なない(強盗団の事故は別)、殺人や流血に及ぶ暴力がないこと、
悪い輩が登場しないこと。
については一番評価したい。
結局、咲子は5億円のトランクを見つけるが、その過程で自分の生きる道を見出したのかもしれない。お金をゲットすることが目的でも、一つ達成したらそこで満足せず次々にトライしていく生活を続けるのだろう。
この咲子というヒト、クラークケントならぬ、自然体のスーパーウーマンだ。
自分のための行動だが、周りをポジティブにする不思議なパワーを持っている。
とにかく痛快な作品だ。