中谷美紀さんの「インド旅行記」を読んでいたら、無性に「嫌われ松子」が観たくなってきた。
結構記憶に残っているし、当時原作も読んでいる。

凄く気に入り大拍手の作品だった。
監督から酷いパワハラ受けながら「松子」の撮影をしていたことを、「インド旅行記」で知る。今頃になって、中谷さんごめんなさいだ。
すこぶる消耗してひと月ほど旅に出たらしい。もともとインドが好きだったのだろうか?
ヨガもやっていたらしいから。
インド旅行記は1から4まである。
続け様4回も行っている。
なお4は写真集だ。

「松子」はやっぱり素晴らしい作品だ。
小気味よい展開。だが星、花、蝶のCGが今みると少しうるさく感じた。
ミュージカル仕立てがいい。松子の状況と時代を歌で表現しテンポよくバンバン進むのは心地よい。懐かしい曲も少なくない。
今更ながらだが中谷さんは歌も上手い。
松子は昭和22年生まれ団塊世代一期生だ。
福岡の大野島で育つ。53歳で亡くなったが生きていれば今、喜寿。
東京では北千住に住む。風景が大野島と似ているからだろう。
北千住が仕事場になったとき、東西南北どっちにでも30分も歩くと、河川にたどり着くのを不思議に思ったことがあった。
よくみると北千住は荒川と隅田川に挟まれた島状の地形だ。
松子は故郷に帰りたかったのだろうか。荒川を筑後川にみたてていた。

中学教師をクビになり不本意な形で家を出たからか。妹を絞め殺そうともしたからか。
筑後川の小船に乗り教え子たちと合唱する松子のシーンが何回か出てくる。
幸福な時代だった。
ところが教え子の龍に裏切られ、教頭、校長の保身から松子は強制的に教員をクビになる。
自転車にボストンバックを積み逃げる様に筑後川の堤防をひた走る。
このボストンバックを生涯愛用していた。
ファザーコンプレッスゆえか、たえず男に尽くし遍歴を重ねるのだが、本当は父親(柄本明)に甘えたかったに違いない。
松子が愛する男は何故かクズ男ばかり。綺麗で聡明な松子なのに何故?
こちらがタコ唇で変顔(父親が面白がる)したくなる。
父親は松子が出奔した1年後に亡くなったと弟(香川照之)から聞く。弟からは絶縁を告げられているが実家に立ち寄る。
仏壇前にあった父の日記を開く。松子のことが毎日記してある。父親は身体の弱い妹(市川実日子)を優先し大切にしたが、松子もちゃんと愛されていたのだ。が、もう少し見える形で松子に愛情を注いでいたならば、
松子は好きな筑後川のそばで立派な教員として幸福な生涯を送ることになるのだろうが
、それでは映画、小説にならない。
松子の人生は波乱万丈。
一般的には転落と表現するが、松子は素直で自由に生きた。神になるまで?
松子が愛おしく感じてくる。
刑務所仲間で出所後成功した沢村(黒沢あすか)がなかなかいい。松子の唯一の味方だった。
アパートの隣人パンクロッカーのゴリも味を出していた。
龍を演じる伊勢谷ははまっている。
皆んな嫌いになってしまう役だ。松子を不幸にした男だから。修学旅行の宿泊先で1万2千円盗みながら、しらばくれ松子を追い詰めた中学生であり、刑期明けを待ち続け出所祝いに松子が差し出した薔薇の花束を投げ捨て、走り逃げ去った男だ。
松子は周りに好かれたが孤独な生涯だった。
同棲男(宮藤官九郎)には飛び込み自殺され、果ては教え子の龍(伊勢谷友介)にはズダズダにされた。
松子は沢村のもとで美容師として再起しようと決意した夜、中学生にバットで撲殺されるのは余りに皮肉だ。
筑後川に似た荒川の河川敷で、教師魂から夜遊びを注意した直後の出来事だ。

大勢の役者や歌い手が出演している。
木村カエラ、柴咲コウ、カンニング竹山、谷原章介、劇団ひとり、大久保佳代子、濱田マリ、武田真治、山田花子、あき竹城,土屋アンナ、AI、荒川良々、BONNIE PINK、角野卓造、キムラ緑子等々。ちょい役でも各々存在感は揺るぎない。
松子の子ども時代を演じた奧ノ矢佳奈さんと中谷さんの、
「曲げて伸ばして」の歌声が耳に残る。

実はインド旅行を予定していた。
図書館でインド関係資料を検索、その時ヒットしたのが中谷さんの「インド旅行記」。
大いに参考になった。

あれやこれやでひと月も経ってしまった。
当たり前の様な3人乗りオートバイ、幹線道路でも忽然と現れる牛、至るところで寝そべるか徘徊する野犬、土産物を買えと執拗に迫る子どもたち、屈託のない笑顔、丹精な小顔に黒い髭を蓄えた若者たち…、
若者が多くエネルギーが溢れている。
我が国の昭和を彷彿させた。

タージマハルに感動したのは言うまでもない。