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きままに映画や趣味を

淵に立つ

2017-04-10 18:54:12 | 映画
怖い!凄い!
筒井真理子はやっぱり名優だ、幅広い役、存在感ある演技をやる。表情、振舞い、心の動きが映画全体の流れを形成し、僕らを不安定にしてくれる。


肝心な所を控え流れだけ記す。
ある郊外の金属加工工場を営む鈴岡家~利雄(古舘寛治)、妻章江(筒井真理子)、娘蛍(篠川桃音)~の元にある日、利雄の旧友八坂(浅野忠信)が訪ねる。
利雄は章江に相談なく八坂を雇い、部屋を与える。八坂は利雄にときおり毒づくが、礼儀正しく振舞いオルガンの発表会を控えている蛍の練習にも付き合う。蛍は八坂に
なつき、章江も次第に八坂に好意をもつようになる。
発表会前日、章江手づくりのドレスを着たまま蛍はいなくなる。利雄が娘を発見するのだが。
八坂は姿を消す。

平和な鈴岡家は八坂の登場により一変してしまう。

8年後、新しく雇い入れた工員山上(大賀)が、ひょんなことから八坂の息子だったことが 分かる。
利雄は8年もの間、興信所を使い八坂を探していたのだが…。



浅野の優しそうな笑顔が、ときおり凄みある表情に変わるから、柔らかな表情さえ何となく怖く感じてしまう。殺人で服役していただけに、何をやるかも分からない。


古舘寛治も俺はイイと思う。

カンヌ映画祭で「ある視点部門審査員賞」を受賞。筒井は、毎日映画コンクールの女優主演賞。ヨコハマ、高崎の映画祭でも受賞しているのはとても喜ばしいことだ。

筒井はこの映画で13キロも体重の増減をしたという。美貌もセクシーさも失わずに。凄い役者魂を備えた我が国には希有な女優の一人と言える。

監督 深田晃司は素晴らしい。家族は不条理だという。私たちの日常は唐突に理由もなく破壊することがある。深田は具体的な暴力を避けて描くことに成功している。








怒り

2017-04-08 17:48:33 | 映画
評判になっていた「怒り」を観た。
正直余り心に響かなかった。
何だかがっかりした。
千葉、沖縄、東京での各々の指名手配犯に似た男を巡る関係性、沖縄の問題を絡ませているが、欲張りだと思う。消化不良じゃないか?
渡辺謙は演技過剰な気がしてきて、宮崎あおいの演技まで過剰になってしまった、熱演する程白けてきた。
松山ケンイチ、妻夫木聡、綾野剛、森山未來、池脇千鶴、高畑充希とかキャストは豪華だが。


妻夫木や池脇はいい演技してる。千葉すずはまだ下手くそ。可愛いい子だがまだ修業が必要。
たぶん、原作は良いのだろうと思う。
恐縮だが、怒りが伝わってこなかった。





郵便配達は二度ベルを鳴らす

2017-04-06 20:52:01 | 映画
ヴィスコンティ生誕110年、没後40年記念祭を忘れていた。昨年末から1月にかけてだったか。
ロビーで上映スケジュールを観ていたが、既に観ているのか確信を持てないままだった。日本公開が1979年。なんと制作が1942年。ヴィスコンティの長編処女作「郵便配達は二度ベルを鳴らす」だ。

やっぱり観ていなかった、たぶん。
観たのはアメリカ映画ジャック ニコルソンのだった。それだって相当昔1981年作だ。

新宿武蔵野館は素晴らしい企画をやってくれた。
デジタル修復、画質も音質も想像を超え立派だ。なんと言っても大戦中のムッソリーニのファシズム体制下の作品なのだ。

北イタリアの街道筋でブラガーナ(ファン デ ラング)は年の離れた美しい妻ジョヴァンナ(クララ カラマイ)とガソリンスタンドと食堂を営んでいる。ある夏、一文無しの風来坊のジーノ( マッシモ ジロッティ)は自動車修理の腕を見込まれブラガーナの店で雇われる。

ジョヴァンナはジーノを目線を合わせたときから性的魅力に圧倒される。


風来坊の色男は危険な怪しい魅力を持っている。ジョヴァンナは身も心も揺らぐ。僕らも胸騒ぎがしてくる。何かしら必然的に事件が起こるに違いないと。

二人は駆け落ちを試みるが、ジョヴァンナは思案のあげく罪悪感で思い直し家に戻る。

ジーノは再び流浪の旅に出るのだが。
ある港町でブラガーナ夫妻に再会することになる。 ジーノに再会したジョヴァンナの心は再び燃えはじめる。
ジーノは店に戻ることになる。
その夜、ジーノとジョヴァンナは交通事故と見せかけ夫を殺してしまう。

二人の生活は暫し続くのだが、店に留まっているジーノは息苦しさから町にでる、町で若い女性と恋仲になりジョヴァンナの元に戻らなくなる。

やがて事故は儀装とばれジーノは追われる身となる。
ジーノはジョヴァンナが警察に通告したからだと思い込むが、結果的にジョヴァンナの元に戻ることになる。

ジョヴァンナはジーノの子を宿していた。

二人は、新しい土地に旅立つことにする。ジーノは猛スピードで車を走らせる。トラックとすれ違いざまだ。
ハンドルミスでジョヴァンナは崖下に投げ出されて亡くなってしまう。
夫ブラガーナと同じように。

愛人との共謀による夫殺し映画と言ってしまえば、通俗だが、4本も映画化されていることから原作ジェームズ M ケインの「The Postman Always Rings Twice」は魅力あるのだろう。


郵便配達員などは出てこない。
二度ベル鳴らすことで郵便配達だと分かる、これを引き合いに、二度目のベルは決定的な報告を意味するのだ、という意味で原作者はタイトルを決めたと言う。
映画では、重要なこと=事件が二度ずつ起きて二度目が決定的な事態になっている。

いま、何故か、ジーノと再会した港町で、
ブラガーナがのど自慢で歌った「椿姫」のアリアのシーンが思い出される。

とても美しい声だった。