馳星周ファンとしては、 


5年前の直木賞受賞はとても嬉しかった。
サイン会があれば出かけた思うが、2020年はコロナ禍で緊急事態宣言が発せられた年だった。東京オリンピックを延期せざるを得ない、とても難しい年だった。

ノワール作家と言われているわりには、穏やかな作品だなと印象をもった記憶がある。
馳さんの犬への愛情がひしひしと伝わり、ウルウルした記憶はあるのだが、内容はすっかり忘れていた。
映画化と知り、封切り20日を待っていたのだが年度最終日31日になってしまった。
春休みのせいか、結構入りが良かった。
期待していたのが裏目にでたのか、何だか軸がはっきりせずバラバラだなとか、犬との対話が希薄だなという印象を持ってしまった。
何故か?場面展開で多聞が登場するが、和正(高橋文哉)と美羽(西野七瀬)が中心になっているからだ。二人は言葉で経緯や過去を話してくれるから、流れは理解出来るのだが、犬の多聞は喋れないのだ。
ならば道中のシーンをもっと入れてもらわないといかんのではないか。
5年かけて熊本まで行ったのだから。
かつ、熊本到着するなり地震なんだから。
可哀想な犬なんだ。
犯罪者がヒーロー、ヒロインになっているのはよくある話だから何とも言えないが、
仙台で窃盗団に加わった和正は罪悪感とか後悔とかない、能天気な人物として描いたのか?
アクションを起こしている意思というか動機づけが分からない。どうでもいいみたいにしか感じられない。
そんな男が多聞探しとか起こす筈ないと思うのだが。
まだ、滋賀の山中に死体を埋めた美羽の方が心の動きが多少なりとも訴えてくる。
人との交流というほど多聞を描いていない。日常的な遊びや戯れ、目線や間(ま)などを何故いれないのかな。
犬への愛がないヒトがつくってるなと感じてしまう。
ご都合的に登場してるって感じ。
も一つ、亡霊が熊本まで多聞を導くなんてのはどういうことなのか。理解に苦しむ。
美羽は亡くなった和正の亡霊と会話していたの?意味不明だ。何故だか分からない。
また和正は事故死のようだが、居眠り運転のトラックに追突されたということだが、訳分からない映像だった。
滋賀の山中で美羽(西野七瀬)は多聞に出会い、第二章のような感じで進む。
美羽の家族や恋人との関係の複雑さを描いているのだろうが。この辺ももう少し何とかならんもんか。
歌わせることなど、どうでもいい。
ラストシーン近くなり、塀の外に出た美羽は、バスの中で知り合った少女に説明して、エンディングに向かう。
ここで時間は何年か経ったことが分かる。服役していたのだろうから。

タイトルが「少年と犬」となっているが、「美羽の再生と和正の青春」を描いた。
オムニバスをどうやって繋いでいくか腐心したのだろうが、分からないところが多い作品だった。
帰宅して原作の目次を見たら、「男、泥棒、夫婦、娼婦、老人、少年と犬」となっていた。
いま、本映画の情報を集める意欲がわかない。初めてみたのかもしれない俳優、西野、高橋さんの今後に注目したい。
嵐梨奈さんが出ていたが何の役だったのかな。
また、本の方を読み返してみようと思う。
