昨年の春ごろから、外食産業の客単価などに少し変化があったのではないかと言われています。消費者の消費に対する考え方が変わったのでしょうか?「長崎ちゃんぽん」の店を展開する「リンガーハット」も今までの商品の単価は下げないが、低価格の新メニューで対応しているとのことです。
最近は、景気浮揚の期待感で、消費者の氣持ちは明るくなっているようですので、景気がもっと良くなってくれるといいですね。
次のような記事が載っていましたのでご紹介いたします。
誰がマックを「食べた」のか――内食強まり神通力失う(経営の視点)
外食最大手の日本マクドナルドホールディングスの既存店売り上げが低迷し
ている。7カ月連続のマイナスで、8年続いた年間の既存店売上高プラスも2
012年で途切れそうだ。
「今年は想定を見誤った」。原田泳幸社長はこう総括する。昨年は東日本大
震災やそれに伴う原発事故の影響などで消費者の外出が減少。このため今年4
月からは反動で売り上げは回復すると踏んでいた。
ところが客足はいっこうに戻らない。4月以降、100円メニューの拡充な
ど新たな戦略を打ち出し、客数こそ増えてきたが、単価下落を補うほどの売り
上げ増には結びつかなかった。
いったい誰がマックの売り上げを「食べた」のか。これまでコンビニエンス
ストアが総菜などを拡充したため、外食市場を「食べた」とされているが、同
社はこれを否定する。
日本マクドナルドではコンビニ食や牛丼、カフェチェーンなど競合する業態
の売上高で合算した市場について調査した。するとマックだけでなく、コンビ
ニ食を含めた中食市場そのものが落ち込んでいることが分かった。
外食どころか、好調と見られていた弁当・総菜などの中食市場も実はいまひ
とつ。厳しく出費を抑えている消費者の姿が浮かび上がってくる。
とりわけマックが主戦場とする20~30歳代の食生活が変わりつつある。
企業はその行動をとらえきれていないようだ。
出版不況を尻目に好調な雑誌がある。主婦向けの雑誌を手がけるオレンジペ
ージ(東京・新宿)が今年6月から月刊化した「食べようび」だ。20~30
代向けをターゲットとした料理雑誌で、とことん読みやすさを追求している。
使用する素材や調味料の形、量から料理の流れまですべて図解で記載。火の
強さ、時間まで事細かく示し、一切迷うことなく1人分のメニューを作ること
ができる。しかも低額で。
号を重ねるごとに部数は増え、すでに8万部。好調の理由を花村哲編集長は
「単身者が多い若い層は家で簡単に安く済ませる合理的な食志向を強めている
ため」とみており、10万部までは伸びると予想する。
外食不振について「食への欲求が低下している」と分析するのは電通総研の
大屋洋子主任研究員だ。いつでもどこでも食べられる環境で、3食をしっかり
とる生活パターンが崩れた。電通が食生活について調べたところ、10~20
代の女性では7割が「食事を抜くことがある」と回答している。
東日本大震災以降、日常の食生活がさらに多様化し、マクドナルドが掲げる
「バリューフォーマネー」と「コンビニエンス」の優位性が崩れたわけだ。内
食志向が強まったとはいえスーパーでも1人当たりの購入量は減少し、値下げ
頼みだ。逆風下でヒット商品を出し、既存店の増収を続けたマクドナルドも神
通力を失った。胃袋を奪い合う消耗戦の激しさを物語る。
「目先の売り上げを落としても長期的な成長戦略が不可欠」と話す原田社長
は宅配強化などに取り組む方針。食べない消費者にいかに接近し購買意欲をか
き立てるか。ひと味違う経営力が求められている。
(編集委員 中村直文)
2012/12/03 日本経済新聞