みつばちマーサのベラルーシ音楽ブログ

ベラルーシ音楽について紹介します!

スカルィナの詩、多言語翻訳プロジェクト

2016年10月30日 | フランツィスク・スカルィナ
 中世ベラルーシの知の偉人、フランツィスク・スカルィナの一つの詩を多言語に翻訳して、一冊の本にまとめるという多言語翻訳プロジェクトに参加しました。
 全部で66ヶ国語に翻訳され、日本語訳は私が担当するという名誉をいただきました。
 2016年に翻訳をまとめた本「Францыск Скарына на мовах народаў свету」(世界の民族の言葉になったフランツィスク・スカルィナ) が出版されました。(「ズビャズダ」社。Выдавецкі дом "Звязда")

フランツィスク・スカルィナは聖書をベラルーシ語に翻訳して出版したという偉業により、ベラルーシの誇りになった人です。
 1519年2月、旧約聖書に収められている「ユディト記」をベラルーシ語に訳して出版しました。スカルィナはいつも聖書の翻訳に自分で前書きを書いているのですが、その中に自作の詩を入れているのです。
 タイトルはないので「フランツィスク・スカルィナのユディト記から」という説明がよくついている詩です。中世のベラルーシ語を現代ベラルーシ語で使われている文字で表して、改行も現代の詩に近づくように加えるとこうなります。

Понеже
от прирожения звери, ходящия в пустыни,
знають ямы своя,
птици, летающие по возъдуху,
ведають гнезда своя;
рибы, плывающие по морю и в реках,
чують виры своя;
пчелы и тым подобная боронять ульев своих,
тако ж и люди,
и где зродилися
и ускормлены суть по бозе,
к тому месту великую ласку имають.

 これを現代ベラルーシ語に翻訳したものから日本語に翻訳しました。

森を駆ける獣が
生まれたときから
自分の隠れ場を
知っているように
空を飛ぶ
鳥が
自分の巣を
覚えているように
海や川を泳ぐ
魚が
水の淀みを
感じているように
そして蜜蜂が
自分の巣を守るように
神の御許、育まれた
大きな愛着を
人も同じく
自分が生まれたその場所に抱く


Пераклад з беларускай мовы Масако Тацумі.
Францыск Скарына на мовах народаў свету, Звязда, 2016, стр. 121

 祖国愛に満ちた詩なので、ベラルーシ人に人気があるんですね。ベラルーシ出身だけれど、あちこちの国に行っていたスカルィナの胸中を思うと、詩を読んでいても深みを感じますね。
 せっかくなので、このブログでもご紹介します。