走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

解釈の違い

2019年12月15日 | 仕事

最近オープンした慢性的なホームレスの為のハウジング。そこのマネージャーから質問を受ける。

心肺蘇生を拒否する(DNR)人がオーバードース(OD)をした時には拮抗薬を使わないんですよね、とサポートワーカーから言われて、、、美加の見解は?

あららら、、、、

整理するべきポイントは

DNRは不治の病(癌、末期の心不全、腎不全、肝不全、老衰などなど) がある人が心臓か肺の機能が停止した時に蘇生させない意思表示。それだけで医療を拒否する意思表示ではありません。DNRは期待される「死」が前提にある事。期待されていない心肺停止、つまり事故的や偶然的なケースには当てはまりません。

麻薬の拮抗剤は麻薬のODにしか効きません(ODで心肺停止して時間が経っている場合に、この薬を投与したから心肺が蘇る事もありません)。そして心筋梗塞など、OD以外の心肺停止の要因をリバースする為のものでもありません。

薬物依存の方は薬物を使用する危険(この場合、ODによる死)を知りつつも薬物を使用します。しかし死にたくて薬物を使用しているわけではありません。ODはあくまでアクシデント(偶然的な事象)で意図的な事象ではありません。つまりDNRは当てはまらない。

個人の人権が守られている国では、危険を承知で生きていくのも個人の自由、人権として守られています。その人の選択を干渉されたり、それによって差別されてはならないのです。薬物依存にネガティブな思いを抱く人が多いのも事実です。しかし薬物依存は嗜好の域を超えた疾病です。そして嗜好だとしてもその危険な嗜好を選び死や大怪我をする人は他にも大勢います。例えば冒険家、登山家、カーレーサーなど。危険だとわかりつつも続けていく。その結果死に至りそうになった時、こう言う事になるってわかってたんだから助けません、とはならないですよね。それと同様に薬物依存者がアクシデントでODした時には助けなければならないのです。

元々の質問のケースのように、その薬物依存者のベースに不治の病があり、ODをした時にも何もしないでくれと言うのなら、DNRにその旨を一筆書いてもらうよう、医療者に依頼するべきだと思います(DNRは州の公式文書を使う)。特殊な条件依頼ですから。

ありがとう、とても明確になった!と質問者は満足していました。以上書いた事はODに関する初期処置の話です。法律やスタンダードは状況、タイミング、誰に対してなどいろいろな条件で解釈は変わりますから。わからない時には他に聞いてみる、、、大事です。

冒頭の写真は6ヶ月前にオープンしたノースショアにあるラーメン屋。ラーメンブームであちこちにお店がありますが、日本人かアジア系のお店が多い中、ここは完全白人スタッフによる運営。それが思いの外美味しく驚きました。どこでラーメン修行したのか次回に聞いてみよ。


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