走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

拮抗剤

2016年01月15日 | 仕事
病院外での麻薬のオーバードースは死だけではない。一命は取り留めたものの、十分な酸素が脳に行かず植物状態になることもある。

麻薬のオーバードースとは過剰な量を摂取することにより、呼吸が停止してしまう。よく眠っていたから起こさなかったと翌日に冷たくなった体を発見して初めてオーバードースだと気づく家族もいる。息をしていないことに気づき救急車を呼んでも、救急隊が来るまでに人工呼吸をしなければ確実に死に向かっていく。

麻薬を嗜好目的に使用する人は、その人自身、そして家族や友達に使用していることを伝えることも大切だ。もしもの時にどう対処するか教育もしていかなければならない。一人ぼっちで使用することは非常に危険だ。

麻薬には拮抗剤がある。ノルカンとかナロキソンと呼ばれている。私は登録している処方者の一人だ。地元では唯一の処方者だ。他の医師たちは謙遜している。薬物使用のスティグマはこういう所にも現れる。登録以來10人ちょっとに処方した。しかし、それではまだまだ足らないのが現実だ。

クリスマス、新年にまたもやオーバードースによる死の報告が出てきた。死ななくても病院で治療を受けた人の数はまだ報告されていない。しかし近年の件数の多さは目を見張るものだ。

それを受けてか、今日のニュースでヘルスカナダが処方なしに拮抗剤が使えるようにするべきだと申し出てきた。副作用は非常に少ない薬だ。私も賛成だ。しかし、それにまつわる教育も大切だ。教育が伴わなければ、拮抗薬を使おうとする人は少ないだろう。薬物使用がなくなる世の中が一番だがそれができないのなら、多くの人に薬物使用について知ってもらいたいと思っている。



1959年に噴火したキラウエア火山の噴火口。真っ赤な溶岩の湖は今は冷え固まり歩くことができます。

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