走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

緩和ケアと薬物依存医療の似ているところ

2020年02月11日 | 仕事
今回の事で思った事。薬物依存医療はホスピス緩和ケアが始まった頃に非常に似ている。

もともと医療は人命を助けるところから始まった。なので緩和ケアは医療の敗北と言われ、その概念を受け入れる医師は少なかった。死に逝く人にも症状緩和の医療は必要と概念が広がっても、痛みの緩和に麻薬を積極的に使う医師は少なかった。危ない事はしたくない。麻薬に対する恐れとでも言おうか?処方する医師の拒否反応は強かった。しかし緩和ケア医師のみならず看護師や薬剤師やソーシャルワーカーなど全ての医療職の不断の功績で、緩和ケアの教育は世界中に広がり、痛みに対する麻薬の使用も特別な事ではなくなってきた。非癌の緩和ケアでも、始めはガンではないからと麻薬の使用を渋る時代だってあったが、それも今は変わった。

このような流れが薬物依存医療に似ていると思った。薬物依存で苦しんでいる患者の認識はあっても、出来ることとできないことの線引きをしっかりして、専門家であっても患者の鼻先でドアを閉める。薬物をやめる意思が患者にないのだから信頼できるわけがない、と患者を選別する。複雑な患者こそ全人的なケアが必要で、患者が何にどこで、薬物使用を辞める一歩がに踏み出せないでいるのか、患者と向き合って知ることだって必要だ。そのようなトータル的なケアを抜きにして、治療薬を処方する。そんな医学では真の患者中心のケアとはならない。

彼の尿検査は陰性で、頻回に薬局へ行き全ての処方の服薬を薬剤師の前でする事を了承した彼。メサドンからサボキソンへの変更も承諾した。彼の反応を見る限り転売していた事は完全否定できる。彼の友達も、今回の彼の変化(辞めたいという強い意志と実行力)には感心していると言っていた。保守派の依存医が指摘した事を全て否定できように証拠を残す準備は整った。革命的な薬物依存医療医と繋がり、今後の計画を立てた。計画Aを行なってダメなら入院して計画Bを行う事まで。計画Aは全行程に24日プラス数日かかる。出発まで26日。厳しいぞ!

注意、海外で言うケアとは統合的な医療を指すもので医療行為や処方も含まれる。医療職全員が患者の目標に向かって行う全ての行為をケアと言います。詳しくはこちら

冒頭写真:靄がゴーグルで氷の粒のように張り付いている


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