走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

国公立病院の再編成- 急性期のケアとは?

2019年11月03日 | 仕事
シリーズ2日目

国公立病院が削減されれば医療へのアクセスが難しくなる、と多くの国民が思っていると思います。急性期医療への距離的アクセスが今より悪くなるのは事実です。しかし急性期のケアって何でしょうか?病気中の病気の人です。これについても以前書きました。急性期つまり重症度は介護レベルではなく看護レベルで語られます。寝たきりかどうかではなく、介護量の多さ少なさではなく、症状が安定しているかどうかつまり看護の観察を24時間必要かどうかで決まります。

ここでよく勘違いされるのは意思の疎通ができないので要観察、とか認知度が低くチューブが挿入されているので抜去しないように観察が必要、失禁がありオシメ交換が必要だから24時間観察。これらは全て介護です。看護師でなくても、家族でも介護士でも出来ること。介護が24時間必要なのです。看護レベルというのは病状が不安定で循環、呼吸、代謝が不安定(精神科系疾患であれば精神状態が不安定で自傷や他傷の可能性)でその病状変化を観察し、24時間いつでも医師に報告し、速やかに対処しなければならない状態です。

この事を良く理解した上で病院に入院している人を考えてみてください。日本の場合急性期病院へ入院するべきでない人が入院している現状が見えてきませんか? 欧米では外来手術、外来ガン治療、短期入院は当たり前です。病院が空床を埋めるために入院日数を増やすことは許されないのです。病気でない人を医療システムによって病気とする事を英語でMedicalization と揶揄します。日本はこの振りが少し高い位置にあるのではないでしょうか?もちろん第3次救急に第1救急レベルの患者が来ることや、不安だからもう少し入院させてとせがまれるなどの国民側の理由もあります。そこは国民への教育とサポートするシステムの構築も重要です。これらも急性期病院にかかるコストを考えれば安いものです。

そして病院以外の医療の充実も病院依存型医療を軽減させる良策です。特に在宅医療。術後に排液チューブが入ったままで自宅管理する、緩和ケアで腹水や胸水の排液自己管理が確立されている、褥瘡や創傷の治癒の遅延状態に使う局所陰圧創傷治療システムも在宅で開始し管理する事が出来るのも在宅医療に投資してきた産物で、「病院」の出番は無いのです。病院では使用しない安価で安全で一般人に使い勝手が良い在宅用の医療機器も諸外国では発展しています。

近代医学の発展により世界の看護では療養上の世話と診療補助の比率が変わっていき、介護師や准看護師の活用にも変化が出てきました。これについても以前書きました。日本に介護士が誕生(初回の認定試験日)したのは1987年。それなりにタイムリーな事であったと思います。しかし日本の場合、看護と介護の違いが不明瞭なまま、先述した介護レベルと看護レベルを分けず、昔ながらの介護レベルも含んだ看護レベルを診療報酬などに使ってきた事も一因ではないでしょうか?

続く

追加: 医師が退院の指示を出しても不安だからもう少し居させて、と患者に頼まれると医師の指示なしでは保険が効かないので自費となります。一泊20万円ですがよろしいですか?
なーんて事を話さなければならない時が看護師時代ありましたよ。非常にシビアです。急性期の病院はホテルではありませんから、、、、もちろん患者は怒ります。しかし一泊20万の入院を入院が必要ない人に使うことはできないのです。無料の医療で痛くも痒くもない国民にコスト意識を持ってもらう事は必要です。



サローナは大きくなりすぎたローマ帝国を4つに分けた時にこのダルメシアン地方の首都となった街です。競技場から城壁が続き、今もその城壁と街の一部が残っています。



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