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太田裕美について少し真面目に語ってみようか

35年の時が過ぎ、太田裕美についてあらためてもう一度考えてみようと思っています。

ガラスの腕時計

2009年12月03日 | アルバム「12ページの詩集」
いったい午前2時57分になにが起こったのだろうか?

「12ページの詩集」に収録されている「ガラスの腕時計」という曲には午前2時57分で止まってしまった時計が登場する。午前2時57分といえば、午前3時3分前で、年寄りならもう2時間くらいで起きだしてくるような夜更け過ぎである。

う~む。二人はいっしょに暮していて、そのうち彼がぐれはじめて、なかなかまっすぐ帰ってこなくなり、その日もバーかなにかで飲んだくれていて、もうじき夜も明けるような午前3時ころ酔っぱらって帰ってくる。彼女はずっと起きて彼を待っていた。帰ってきたとたん口げんかになって彼は家を出ていってしまった....もう彼は二度と帰ってこなかった、というような状況だろうか....

この曲でも二人がうまくいかなくなった原因は不明だ。ただ「あの人の心を変えた いじわるな季節の流れ」としか語られていない。もしかしたら彼は彼女にあきたか、なんか嫌気がさしてほかの女に手を出していたかもしれない。口げんかはそんな痴話げんかなのかもしれない。修羅場?? と妄想はどんどんふくらんでしまう。

とにかくこの曲では、そのときから時間が止まってしまった女性の心理が歌われている。彼女はもしかしたら彼からもらったかもしれない腕時計に小石をぶつけて壊してしまう。腕時計のガラスはひび割れ、針が止まってしまった。短針と長針の二つの針は、彼と自分のようで、止まってしまった二つの針はもう二度と重なりあわないことを思い知る。腕時計はなにかの象徴かもしれない。

女性はかつてのように「自分のこんなところが悪かったんだわ。あんなところが悪かったんだわ」とただ反省するようなことはなく、かといって彼のどこが悪いといって恨むようなこともない。ただ時間がたち、彼が心変わりした。悪いのはいじわるな季節である。

この作品では、萩田光雄が作曲と編曲の両方をてがけていて、そんなところで「12ページの詩集」に収録されたようだ。松本隆が「12ページの詩集」を「一回休み」と評していたが、12曲のうち5曲の作詞を担当しているので、この曲の作曲と「カーテン」の編曲しかしていない筒美京平のほうが「一回休み」状態だ。

1番の「小石ぶつけたぁ~」のところで太田裕美の長~く伸ばした声を聴くことができる。はかってみたら、1分3秒あたりから1分17秒あたりまでで、その間およそ14秒間くらい。とてもきれいな声だ。2番の「悲しみを繕い止めているぅ~」のあとには「あなたは黒い歯車 わたしは白い歯車 噛み合わないままに 月日が空廻り」という語りがあって、1曲で2回楽しめる(笑)。

よく聴いてみると、舌たらずっぽい歌い方あり、ある人いわく「風邪声」っぽい歌い方(私いわく鼻をつまんだ歌い方)あり、きれいな伸ばした歌い方ありで、けっこうこの曲はこのころの太田裕美の声と歌い方が詰まっている。

ところで歌詞カードには「悲しみを繕いとめている」とあるのだが、そのまま読めば「つくろいとめている」なのだが、聴いてみると「くいとめている」としか聴こえない。そんな読み方あったっけ? あて字? あて字だとするとなんかへんなあて字のような気がしてならない。

作詞:松本隆 作曲・編曲:萩田光雄

あの日から動かない
腕時計があるの
はかなげに淋しげに
時間が止まってる
あの人の心を変えた
いじわるな季節の流れ
何故かしらとても憎くて ああ
文字盤に小石ぶつけた

(略)


かなしみ葉書

2009年12月01日 | アルバム「心が風邪をひいた日」
アルバム「心が風邪をひいた日」では「夕焼け」の次にこの「かなしみ葉書」という曲が続く。彼から一枚の絵葉書が届き、別離の言葉が書かれている。それを読んで彼女が泣く。というアイドル歌謡曲? みたいな曲である。

このころの太田裕美作品のほとんどのように彼女は彼をけっして悪くは思わない。「あなた遠い町でさよなら書いたのは せめてもの私へのいたわりね」となってしまう。私なんかは、別れ話をちゃんとしないで絵葉書で書き記すなんてあまりよくないんじゃないかと思うが、彼女はそうは思わない。しかし、吊り橋の写真を見て「吊り橋の写真 選んだ理由は 心の架け橋がなかったせいかしら」となるとまるで暗号解読のような気がしてしまうなぁ。

それはともかく「旅立ちの前にここに来たあなた せめてその隣に私を横たえて なぐさめる事ぐらいできたはずだわ」である。う~ん。「その隣に私を横たえて なぐさめる事ぐらいできた」とは....そういうこと? 裕美ちゃん、それはいけないと思うんだよ、おじさんは、とPTAのような気になってしまう。

それもともかく「去りゆく季節を追いかけてみても あなたはもう帰らないの」にあるように、松本隆作詞の世界で別離の原因が出てくるとこのころから「季節が変わった」「時間がたった」というように時間の流れで別れることになったということになっている。

現実的には、彼か彼女かのどちらかか、あるいは両方に原因があったように思うが、原因はすべて時間の経過である。時間の経過が原因なので、巻き戻すわけにはゆかず、ただ主人公は悲嘆にくれるだけである。これでは進歩がないではないかと憤慨しても始まらない。それがこのころの太田裕美の世界なのだから。ああ。

作詞:松本隆 作曲:筒美京平 編曲:萩田光雄

泣きはらした目に絵葉書が揺れる
あなた遠い町でさよなら書いたのは
せめてもの私へのいたわりね

吊り橋の写真 選んだ理由は
心の架け橋がなかったせいかしら
やさしさを読みとれば胸がつまるわ

あなたと私の淋しさを足せば
それが愛と信じていたの

(略)