去年の夏、友人から一枚のDMが送られてきた。
それは原宿のトーキョー・ヒップスターズクラブで行われる、「ニューヨーク・アンダーグラウンド展」のDMだった。黒を基調にし、スパイスのように赤を少し使ってレイアウトされた、パティ・スミスのうつむいて手を胸のところで合わせているマリアのようなポーズの写真・・・。
そのデザインに私は思わず「カッコいい!」とうなった。
その頃、私はちょうど詩集の装幀をやってくれる人を捜していた。私はそのDMを一目見て、直感的に私の詩集は絶対この人にやってもらおうと決めたのだった。何しろ私は今までの人生のすべてを直感と衝動で生きてきた“直感動物”なのだ。私はすぐに友人に「これをデザインしたのは誰なの?」と尋ねたところ、「Fさんだよ」という返事が返ってきた。私は彼とはトーキョー・ヒップスターズクラブのオープニング・パーティで面識があったので、厚かましくも早速彼にお願いしたら、快く引き受けてくださった。
そんないきさつで、詩集『荒涼天使たちの夜』の装幀はFさんにやってもらえることになった。
出来上がったものは、やっぱり黒を基調にして赤をピリッと効かせたドラキュラ・カラーだった。
満足。それ以来私は黒地に少量の赤の組み合わせに取り憑かれている。
ファッションとして自分が身につける色は、長年黒が基本だった。すべての色を内包している黒という色は、私にとって最も包容力のある魅力的な色。
子供の頃から、なんとはなしに赤という色は女が身につける色だという認識があったので、あえて避けてきた色だった。ただ女の子だというだけで、社会や親から押しつけられるように与えられてきた色、赤。赤いランドセル、赤いスカート、赤い靴、三つ編みのお下げの髪に結ばれた赤いリボン・・・。私はそれらに内心反発していた。「なんで女の子はなんでも赤で、男の子はなんでも青なの?」と。だからはっきり言って、押しつけの色の赤が嫌いになったのだった。
燃えるような曼珠沙華や真っ赤なダリヤなどの赤い花も、あまりにも生々しく強烈で嫌いだった。
それなのに去年の夏から、一転して熱病的なまでに赤が好きになってしまった。
今では秋になれば田んぼの畦を炎のように彩る曼珠沙華を美しいと思い、思わず車を止めて眺めてしまったり、花屋で赤い花を見るとつい買ってしまう。ドラキュラがワイングラスで飲み干すような、血の色したTシャツも増えた。自分には赤は似合わないと思いこんでいたのに、去年ライブで真っ赤なTシャツを着たら、あとでそのビデオを見て友人が「メグ、赤似合うね」と言ってくれた。
このように色の好みというのは、ある時突然変わったりもするものなんだなあと不思議な感じがする。ともあれ当分の間、私はこの「黒の中の少量の赤」という組み合わせの、いわゆるドラキュラ・カラーに魅惑され続けそうな気がする。
それは原宿のトーキョー・ヒップスターズクラブで行われる、「ニューヨーク・アンダーグラウンド展」のDMだった。黒を基調にし、スパイスのように赤を少し使ってレイアウトされた、パティ・スミスのうつむいて手を胸のところで合わせているマリアのようなポーズの写真・・・。
そのデザインに私は思わず「カッコいい!」とうなった。
その頃、私はちょうど詩集の装幀をやってくれる人を捜していた。私はそのDMを一目見て、直感的に私の詩集は絶対この人にやってもらおうと決めたのだった。何しろ私は今までの人生のすべてを直感と衝動で生きてきた“直感動物”なのだ。私はすぐに友人に「これをデザインしたのは誰なの?」と尋ねたところ、「Fさんだよ」という返事が返ってきた。私は彼とはトーキョー・ヒップスターズクラブのオープニング・パーティで面識があったので、厚かましくも早速彼にお願いしたら、快く引き受けてくださった。
そんないきさつで、詩集『荒涼天使たちの夜』の装幀はFさんにやってもらえることになった。
出来上がったものは、やっぱり黒を基調にして赤をピリッと効かせたドラキュラ・カラーだった。
満足。それ以来私は黒地に少量の赤の組み合わせに取り憑かれている。
ファッションとして自分が身につける色は、長年黒が基本だった。すべての色を内包している黒という色は、私にとって最も包容力のある魅力的な色。
子供の頃から、なんとはなしに赤という色は女が身につける色だという認識があったので、あえて避けてきた色だった。ただ女の子だというだけで、社会や親から押しつけられるように与えられてきた色、赤。赤いランドセル、赤いスカート、赤い靴、三つ編みのお下げの髪に結ばれた赤いリボン・・・。私はそれらに内心反発していた。「なんで女の子はなんでも赤で、男の子はなんでも青なの?」と。だからはっきり言って、押しつけの色の赤が嫌いになったのだった。
燃えるような曼珠沙華や真っ赤なダリヤなどの赤い花も、あまりにも生々しく強烈で嫌いだった。
それなのに去年の夏から、一転して熱病的なまでに赤が好きになってしまった。
今では秋になれば田んぼの畦を炎のように彩る曼珠沙華を美しいと思い、思わず車を止めて眺めてしまったり、花屋で赤い花を見るとつい買ってしまう。ドラキュラがワイングラスで飲み干すような、血の色したTシャツも増えた。自分には赤は似合わないと思いこんでいたのに、去年ライブで真っ赤なTシャツを着たら、あとでそのビデオを見て友人が「メグ、赤似合うね」と言ってくれた。
このように色の好みというのは、ある時突然変わったりもするものなんだなあと不思議な感じがする。ともあれ当分の間、私はこの「黒の中の少量の赤」という組み合わせの、いわゆるドラキュラ・カラーに魅惑され続けそうな気がする。