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事実の錯誤

2005年03月19日 22時50分00秒 | 
胸、腹刺し「間違えた。すまん」殺人未遂容疑 組幹部ら逮捕 福岡県警

 こんなことが実際あるんだなぁ。
刑法の総論のところで論点となる、具体的事実の錯誤のうち、客体の錯誤にあたる事例。
具体的事実の錯誤とは、
①Aを殺そうと思って、実行に移したところ、その被害者は実はBだったという場合(客体の錯誤)
②Aに向かって拳銃を発砲したところ、Aにはかすっただけで、Aの隣にいたBに当たってしまったという場合(方法の錯誤)

②の場合では、具体的符号説、抽象的符号説、法定的符号説で結論が異なってくる。

 まぁ、今回の事例は①なので、どの説によっても結論は殺人未遂罪。
具体的符号説からは、Aに対する故意しかないので、Bとの関係では犯罪不成立となるという
不合理な結果になってしまうが、具体的符号説からも、この場合は殺人未遂。
そりゃ、「間違えた。ごめん」では済まされへんわ。
この点は、具体的符号説が批判されるところである。

 自分の持っている刑法の浅はかな知識をひけらかしてしまった…
でも、実際こういう事件が起きると、生きた教材になるし、
自分の知識を整理するという点では、意味があると思う。
法学部生なら、共感していただけるはず…

 法律を学ぶ時は、教科書を読むだけでは机上の空論になるから、
「それぞれの当事者の立場に立って」考えることが大事だと、
特に民法なんかではよく言われるが、それでも、限界がある。
一番手っ取り早い方法は、自分自身が当事者になるのが一番いい。
例えば、本を間違えて買って、錯誤無効を主張してみたり、
無権代理人として他人の土地を売買してみたり…下手したら犯罪やな。

 こういうことを積み重ねていけば、自然と法律が身につくのではないかな。
時間とお金がどんだけ必要かわからないけれど。
隠居されて時間的、経済的に余裕がある方で、憲法訴訟とかやってもらえないだろうか、
と前から思っている。できれば最高裁までがんばっていってほしい。
憲法訴訟が少ないので。

 もっとも、刑法の当事者にはなってはいけない…間違っても。