講談社文芸文庫
1990年6月 第1刷発行
2009年8月 第5刷発行
解説・菅野昭正
185頁
「告別」
主人公は音楽評論家、上条
彼の友人=「私」の視線で上条を語る章と、第三者の視線で上条=「彼」を語る章が交互に繰り返されます
自分の中途半端な才能に苦悩していた上条が留学先のヨーロッパで出会った女性マチルダとののびやかな関係
しかし、日本には妻と二人の娘がいる
帰国後、上条の家を訪ねてきたマチルダの存在にショックを受けた長女は自ら命を絶つ
それから一年、上条自身も病に冒され死を待つ者となる
常に福永さんの小説の主題となる
生と死、愛、孤独、芸術がここにも取り上げられています
「形見分け」
記憶喪失の男が「さっちゃん」と二人で暮らす海辺の村
男がなぜ記憶を失ったのか
さっちゃんはなぜ男の記憶が戻ることを怖れているのか
その背後に死の意識が結びついているあたり、やはり福永さんの世界でした
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