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北重人「蒼火」

2009年11月10日 | か行の作家
主人公は「夏の椿」同様、旗本立原左右衛門の妾腹の息子、立原周乃介
「夏の椿」より三年前の出来事が描かれています

周乃介が追うのは定期的に繰り返される商人殺し
下手人は商人殺しをしない時は罪もない大道芸人で生様(いきだめし)をせずにいられない
人を斬ることをやめられなくなった男・新兵衛が背負う蒼火

周乃介の長屋暮らし
市弥との恋
なども織り交ぜながらスリルとサスペンスに満ち満ちた展開

最終章
新兵衛と同じく蒼火を背負う周乃介の一騎打ちの場面
最高潮です


二人の間合いは、およそ十間。
西の空で、残り陽が消えようとしていた。梢にわずかに陽が残っている。
白かった月が、団々と赤味を帯びている。幽かな明るさの中で、和田新兵衛が嗤っていた。

蒼い火焔の中で、新兵衛の野太い長刀が煌めいた。
互いに青眼に構えた。草原を静寂が包んだ。
右に緩やかな円を描き、二人は少しずつ動いた。次第に間合いが詰まった。
辷るように新兵衛が近づいてきた。剣尖が引き気味に下がった瞬間、大きな踏み込みとともに掬い上げる一閃がきた。


痛快時代劇ではありますが、それだけではありません
下手人・新兵衛の心の闇、狂気
周乃介が、自らが背負う蒼火を乗り越え安らぎを得られるまでの心の葛藤
人の命の重さとは

北重人さん
益々お気に入り!



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