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梨木香歩「水辺にて」

2011年02月18日 | な行の作家

 

筑摩書房
2006年11月 初版第1刷発行
221頁


梨木さんの作品は、いつも人が自然の近くにいるのですが、梨木さんの趣味のひとつにカヤックがあると知って納得

カヤックを繰りながらすぐ間近に見る水辺、山、空、風
日本各地やイギリス、カナダの自然の中で
水がここまで来る間に辿ったであろう、そして海に流れ出るまでの長い距離と時間について
さらに、動植物、そこに暮らす人々の文化や習慣などについて綴られています


森の音
本当に、森は水の産まれてくるところ
ここからスタートし、そしてまたここへ帰る
森の様々な匂いを集めて、風が川筋に寄っていくように、水もまた、人の想像の及ばない時間をかけて、様々な場所を留まることなく走り抜け、その履歴を背負っていつか海に向かう
川の水を迎える海は、魚は生物たちは、その物語をどう読み解くのだろう
その微妙に違う物語を、読み込む力が人に備わっていないにしても、そのことに思いを巡らせ、感官を開こうとすることは、今、この瞬間にも、できることなのだと信じている
そしてその開かれてあろうとする姿勢こそが、また、人の世のファシズム的な偏狭を崩してゆく、静かな戦いそのものになることも

 


春のある日
ダム湖でカヌーを繰りながら底に沈んだ村に思いを馳せる話しがあるのですが
岸に近づくと、チューリップが目に入ります
そこで梨木さんは
この村が湖の底に沈む前、この岸は山の中腹だったはず
きっと女の子がチューリップの球根を、ここまで運んで植えたのに違いない、と考えます
村にまだ人の生活があった頃、毎日楽しく暮らす子供たちを少し高いところから俯瞰しながら、梨木さんの頭の中には次々と物語が生み出されます


梨木さんのように、五感で感じ取ったものを深く考察し展開させていけたら、どんなにか素敵でしょう
羨ましいことです

そこここで
池澤夏樹さんを思い出したり
堀江敏幸さんを思い出したり

感受性とか、柔軟性とかが衰え始めたかな、と思う今日この頃
こういうものを読んで、引き戻してもらっています

 


コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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よろしくお願いいたします (たんぽぽ)
2011-02-19 16:19:47
こにさん、こんにちは。
ブックマーク恐縮です。
この本では、私もダムに沈んだ村の上をカヤックで行くシーンがとても好きでした。
時間と空間を経た不思議な感覚が呼び起こされますね。
こにさんは大変幅広い読書をされていますね。私は元はといえばミステリファンなので、かなり偏りがあります。芥川賞よりは直木賞。
最近非常に目の疲れを感じて、読書がややペースダウン。未読の本がたまっていきます・・・。
私の方も、ブックマークさせていただきますね。
今後ともよろしくお願いいたします。
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たんぽぽさん (こに)
2011-02-20 10:11:01
こちらこそ、ありがとうございます

梨木さん
最近はエッセイが多いですね
物語を創り上げるのは並大抵な努力だけじゃ駄目なんでしょうが、そろそろ長編小説が読みたいです

幅広いといってもらえると嬉しいです
けれど、ただの乱読なんですよ
飽き性なので色々手を出しているだけ^^;

私も夜は眼鏡が必要になってきまして…
若い頃のようにはいきませんね~

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