世界の移民政策、移住労働と日本

日本型移民政策とは何か?世界の移民政策に関するニュース、エッセイ、本の紹介など

日経ビジネス 11.23. 2009 「移民YES」

2010年01月14日 | 日本の移民政策
すこし古くなるが、昨年11月23日付けの日経ビジネスでは、「移民YES]と題した特集が組まれていた。ようやく入手したので、すこし感想を書きたい。

まず、本誌が、定番の「外国人労働者」ではなく「移民」という言葉を使って問題に切り込んでいるところが興味深い。掲載記事自体は、労働者としての外国人の受け入れを議論しているのだが、タイトルをあえて移民とすることで、分野での政策議論を、「国のあり方」を問うより長期的・未来志向なものに軌道修正している。もちろん、これは「日本型移民政策-1000万人受け入れ構想」の流れを大きく汲んだものである。(1000人受け入れ構想自体はどうにも頓挫してしまっているのだが...)。

この特集が組まれた時期についても、非常にタイムリーである。本誌が述べているように、経済危機から再生に必要な労働力を、先進国の多くは途上国に求めることになる。現に、いくつかの送り出し国では、海外雇用される労働者の数が昨年末から増加傾向にある。(フィリピンにおける経済危機と海外雇用に関するデータや情報はこちらを参照のこと)。海外からの労働力が経済危機からの脱出に欠かせないものであるという主張は昨年末の国際移民デーにおける国連事務総長のスピーチでもみられた。帰国支援などをしている場合ではないということだ。

本誌は、外国人なしには継続が難しいという状況にまで陥っている日本の漁業・介護の知られざる現場、そして待ったなしの対応が求められる日系二世が抱える課題などを網羅し、「移民YES]派、とくに上記の日本型移民政策の構想を踏襲する政策提言を展開している。そして、(この手の議論ではよくあるのだが)日本が移民すら来なくなる国になる前に、抜本的な改革を!ということになる。論調としては、日経ビジネスの読者であろう、企業側の主張を反映する議論展開であるが、難民受け入れケースや二世の統合といった労働者ではなく「人」としての外国人受け入れが抱える課題も織り込んだ包括的な議論がされいるように感じた。

多少残念なところといえば、「移民」という斬新的なコンセプトを提示しながら、依然として、YES・NO、つまり開国・鎖国議論を引きずっているところであろうか。もうすでに沢山の外国人が日本に定住しているのだから、NOといっている暇は、本当のところない。日系人、国際結婚、就学生に研修生など、本来労働者受け入れスキームではないところから就労のために、日本にやってきているのである。これは未だ日本そして国民がYES/NO論議から乳離れできないでいることの表れか?

これからの議論は、どのようなYESなのかをさらに検討していくところなのではないか。外国からの労働者を韓国に見られるような短期受け入れの制度で受け入れるのか、それとも移民として長期・永住の受け入れを進めるのか、どの分野で受け入れを推進するのか、何人受け入れるのか、それを誰がどのように決めて管理するのか。そういう具体的なところを突き詰めていく作業が必要があるように思えてならない。







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