夕暮菜日記

私的日記、教育、社会、音楽、等々について

子どもの意向、とは、、、

2009年05月01日 05時48分55秒 | 日記
少し前の記事『国を愛して何が悪い!(笑)』に寄せられたコメントに対し、私の説明が足りなかったので、(その記事の主題と関係が薄かったこともあり)新たな記事を立て、説明してみたい。

私の「子どもの意向に従うべし」という主張に対し、寄せられたコメントは次のようなものだった。

>親は子を教育し躾ける義務があります。親や周りが子供のいう事を聞いてばかりいると、子供はダメになります。我慢も教わらずわがまま放題で育った子供がそのまま大人になったらどうなるか、考えてください。これは子供にとっても不幸な事です。子供の意向は無視してよい、と言うことではありません。子供の意向のみで生活方針を決めるべきではない、と言っているのです。

以前にも当ブログで紹介した河合隼雄先生の言葉を、私の記憶を便りに紹介したい。
「問題児とは大人に問題を出す子どものこと。大人はその問題に正解を出さなければならない。不正解を提出すると、子どもはさらに難問を出題してくる」
まぁ、詳しくは河合先生の著書を読んで頂くのがいいのだが、私の経験から具体例を紹介してみたい。長年にわたり進学塾で子どもと接してきたので、平均よりは子どもと接する機会は多かったと思うからだ。

受験直前の12月。小学校6年生の男子、S君は授業中に突然「H小せえ!」と、同じクラスで勉強していたHさんをバカすることを言い出した。Hさんは成績優秀だったので、身体が小柄であることくらいしかバカにできなかったのだろう。しかしHさんはそのことを気にしていた。

さて、ここでS君の『意向』は何だろう?
『Hさんの悪口を言い続けること』だとしたら、その意向を優先させたら先のコメントの通り、S君にとり不幸なことである。
しかし、私はそうは思わない。
私の考える『S君の意向』とは次のようなものだ。
『身体の特徴を捉えて人をバカにするのはとてもいけないことだ。先生はその『いけないことを注意すること』と『受験勉強』のどちらを優先するだろうか? ここで『人間性』より『受験勉強』を優先するようならこの先生も大したことはないな。そんな先生に勉強を教わりたくはない。ここはイッチョ試してみるか!』だ。
もちろん表層意識でそう考えたわけではない。

S君の「H小せえ!」という暴言に対し、私は一瞬迷った後、思い切り怖い顔を作り、
「今、『H小せえ!』と言ったのは誰だ?!」
すると、一番後の席にいたS君は、手を挙げ、
「ホーイ」
私は、
「それは言って良いことか、悪いことか、Sはどう思う」と恫喝した。
S君は、
「いけないことだと思います!」と応える。
私は
「わかっているなら二度と言うな!」とどやしつけて、この件終了。
これが私の言う『意向に従う』ということだ。

これは子どものワガママを受け入れることでもなく、ワガママを捩じ伏せて我慢させ躾けることでもない。
子どもが、悪い行い、ワガママなどを通して、本当に大人に望んでいることに従う、ということなのだ。

では、表に見えている行い、ワガママなどから、本当の子どもの意向をつかむにはどうしたらいいだろう。
私の今の結論は『勇気の必要な方を選べばよい』というものだ。
先の例の場合、S君の「H小せえ!」を聞こえないフリをして、或は無視して、単に算数の授業を強行することでS君を捩じ伏せる、という方法もあった。そうすれば、S君を直接叱らなくてもコトはすんだ。
この方法の長所は、私がS君に嫌われてしまう心配がない、ということだ。
短所は、S君や他の生徒に『身体の特徴を捉えて悪口を言うのはいけないことだ』という機会を逸することである。
『先生』という立場の者として、子どもに嫌われることは、できれば避けたい。
しかも12月。
受験勉強が佳境入っているころだ。
ただし、これは単なる私のエゴだ。
だからこそS君はそこを突いてきた。
子どもというのは、大人の勇気を試す天才なのである。

子どもの言うことを聞いてばかりいてわがまま放題に育てることこそ、子どもの意向を無視した育て方だ、と私は考えている。
うまく伝わっただろうか?
こんな話に興味を持たれた方は、ぜひとも河合隼雄先生の著書を読んでほしい。
私の説明より、はるかによくわかるはずである。

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2 コメント

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Unknown (ゆうこ)
2009-05-02 00:07:26
緑虫さん、こんばんは。
学校の先生ならまだしも、進学塾でそういうことがあったとしても、勉強以外は関係ない・・という感じなんだろうかなぁ、と想像していたので、私が生徒だったら、そういう先生がいたら嬉しいなぁ、と思います。
S君は、「かまって欲しい」というのもあったのかなぁ・・。
「無視して、単に算数の授業を強行することでS君を捩じ伏せる」よりかは、緑虫さんみたいにガーン!と叱ってくれる先生がいいな。そんな気がします。
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ゆうこさん、コメントありがとうございます。 (緑虫)
2009-05-02 23:07:36
テレビの影響で、中学受験のための進学塾って言うと、生徒は鉢巻き、先生は絶叫調の講義ってイメージがありますが、ほとんどの塾の先生は、何が子どものためになるか、を真剣に考えているものです。鉢巻きに用はないし、志望校に合格することがすべてだとも思っていません。
『勉強以外関係ない』っていうひどい塾があるのも事実ですが。
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