Pianist 池田みどり

ピアニスト池田みどりの四苦八苦をまるごとお見せします。
http://www.hi-ho.ne.jp/~midopi/

「リスクを乗り越える決断力」 仕事学のすすめ

2010-04-13 | ドキュメンタリー/映画
 伊藤忠商事は1999年10月13日に、不良資産の一括処理を決断したと発表した。その額、4000億円。当時代表取締役社長だった丹羽宇一郎氏のこの決断は、世間を驚かせた。バブル崩壊後不動産価値が急落し、「含み損」の問題を多くの企業が抱えていた時期であった。その中でもグループ企業1092社を擁する伊藤忠のこの英断は、のちの企業姿勢概念に影響を与えていく。

 丹羽氏は30代、米国での大豆先物取引を一手に引き受けることになる。日本国内供給の80%にあたる量である。不作になるという予想で買占めにあたるが、その後豊作という予想に急転する。会社の命運を賭けた取引で、彼は自分の足で農家を回り、天候予想調査をする。彼の読みはあたった。そのことから、徹底した調査と惑わされない決断力を身につけることになる。

 59歳で代表取締役となるが、就任以前から不良資産の問題を抱えていることを承知していた。しかし、彼はこのことについて一切相談はしなかった。相談したところで、不良資産が解決するわけではない。徹底的な調査をするため、極秘調査チームを作り、これまで決算されてこなかった不良資産の洗い出しをした。グループ会社に出向き覆面調査もした。これらのマイナス情報を操作することなく事実として捉えた上で、決断をすることになった。

 不良資産は当初予想されていた3倍以上だった。資産を手放すことで会社の力を失い、また社会の信頼を失い、株が暴落するという、負のスパイラルに陥ることかどうかが、彼の決断にかかっていた。丹羽氏は、市場に真実を語り、社員と透明な情報を共有することを決断した。

 「世間のスピードは自動車業界、エネルギー業界、あるいは金融業会・・・たいへんなスピードで合従連衡(がっしょうれんこう)が行われております。・・・何年にもわたって長期保有をしながら、ソフトランディングをして、重い荷物をひきずっていくというわけには参りません。一刻も早く処理をして、一刻も早く立ち直るべきだと・・・問題を先送りしないで、受身にならないで、主体的に前に出る、これが経営の方針であります」

 一括処理を行う前に、経営立て直し案を練り、成功が見込める事業に絞り、重点配分をするなどの計画を立てていった。大胆な人員カットも行われた。そして会長、社長のふたりは、給与をすべて返上すると宣言した。
 翌年、伊藤忠商事創業以来、最高益である700億円を計上。株価はどんどんあがった。

 決断までには自殺も考えたという丹羽氏。「不良資産処理で変わったのは社員の心でしょう。明るい会社で、社員が喜ぶ顔を見たい・・・これが経営者にとって感激だし、感動なんですよ」

※「仕事学のすすめ」 (教育テレビ)毎週木曜 午後10:25~10:45 再放送 午前5:35~6:00
http://www.nhk.or.jp/etv22/thu/


最新の画像もっと見る

コメントを投稿