古屋将太さんはデンマーク・オールボー大学院博士課程で、現在はNPO法人環境エネルギー政策研究所(ISEP)研究員。国内外の自然エネルギー政策や事例を調査・研究し、それと同時に日本各地での自然エネルギー事業開発に直接関わり、支援をしています。2012年AERA「日本を立て直す100人」に選ばれています。
あるセミナーの講師をされていて、そのクリアな切り口で印象に残り、また時間を惜しまず各地の自然エネルギー事業を支援している姿に、この人なら…という思いになりました。特に事業開発などでは、まず人と人とのつながりを大切に、じっくり時間をかけて、自分の知識・経験を生かしながら、説明し話し合いをとことんすると言います。納得しない限り、自然エネルギー事業に踏み切るには、大きな壁がいくつもあるからです。人間関係・金銭関係・政治との関係・・・でもすでにいくつかの事業が立ち上がって、日の目を見ています。彼は若いながらもそれらの多くと関わり、最初の一歩から支援してきました。
そんな経験と知識を満を持して本にしたのがこの本・「コミュニティ発電所」です。原発がなければ日本のエネルギーはまかなえないという神話は、ここでは崩れます。実際にほとんどを自然エネルギーでまかなおうとしている地域が存在するからです。しかしそのまでには多くの困難を伴いました。でもその困難を乗り越えたからこそ、地域のつながり、自然エネルギーへの想いは強くなっているようです。
デンマーク・サムソ島では農業が中心でしたが、島の経済は破綻寸前でした。町民の一人が立ち上がり、自然エネルギー事業を推進しました。コミュニティは機能し、洋上風量発電、太陽光発電の普及、バイオマス発電などで、現在は100パーセント自然エネルギーで賄い、それどころかエネルギーを売ったお金で、島の経済は活性化しました。
日本では長野・飯田市での「おひさま進歩エネルギー」が成功を収めており、小田原や多摩市、調布、静岡、北海道など、大企業を介さず、地域や中小企業などがまさに「コミュニティ発電」に取り組んでいます。
まずは人と人とのつながりとお互いの理解によってできたコミュニティの力が必要です。原発から自立するためにも、ぜひこの本を読んでみてください。
「コミュニティ発電」 ポプラ新書 http://www.poplar.co.jp/shop/shosai.php?shosekicode=82010040