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Pianist 池田みどり

ピアニスト池田みどりの四苦八苦をまるごとお見せします。
http://www.hi-ho.ne.jp/~midopi/

「コミュニティ発電所~原発なくてもいいかもよ?」 古屋将太

2013-10-01 | 

 古屋将太さんはデンマーク・オールボー大学院博士課程で、現在はNPO法人環境エネルギー政策研究所(ISEP)研究員。国内外の自然エネルギー政策や事例を調査・研究し、それと同時に日本各地での自然エネルギー事業開発に直接関わり、支援をしています。2012年AERA「日本を立て直す100人」に選ばれています。

 あるセミナーの講師をされていて、そのクリアな切り口で印象に残り、また時間を惜しまず各地の自然エネルギー事業を支援している姿に、この人なら…という思いになりました。特に事業開発などでは、まず人と人とのつながりを大切に、じっくり時間をかけて、自分の知識・経験を生かしながら、説明し話し合いをとことんすると言います。納得しない限り、自然エネルギー事業に踏み切るには、大きな壁がいくつもあるからです。人間関係・金銭関係・政治との関係・・・でもすでにいくつかの事業が立ち上がって、日の目を見ています。彼は若いながらもそれらの多くと関わり、最初の一歩から支援してきました。

 そんな経験と知識を満を持して本にしたのがこの本・「コミュニティ発電所」です。原発がなければ日本のエネルギーはまかなえないという神話は、ここでは崩れます。実際にほとんどを自然エネルギーでまかなおうとしている地域が存在するからです。しかしそのまでには多くの困難を伴いました。でもその困難を乗り越えたからこそ、地域のつながり、自然エネルギーへの想いは強くなっているようです。

 デンマーク・サムソ島では農業が中心でしたが、島の経済は破綻寸前でした。町民の一人が立ち上がり、自然エネルギー事業を推進しました。コミュニティは機能し、洋上風量発電、太陽光発電の普及、バイオマス発電などで、現在は100パーセント自然エネルギーで賄い、それどころかエネルギーを売ったお金で、島の経済は活性化しました。

 日本では長野・飯田市での「おひさま進歩エネルギー」が成功を収めており、小田原や多摩市、調布、静岡、北海道など、大企業を介さず、地域や中小企業などがまさに「コミュニティ発電」に取り組んでいます。

 まずは人と人とのつながりとお互いの理解によってできたコミュニティの力が必要です。原発から自立するためにも、ぜひこの本を読んでみてください。

 「コミュニティ発電」 ポプラ新書 http://www.poplar.co.jp/shop/shosai.php?shosekicode=82010040

 


「この悲しみの意味を知ることができるなら」

2011-12-02 | 
 世田谷事件は2000年12月31日午前10時50分ころに起きました。11年が経とうとしていますが、未解決のままです。あまりに衝撃的な事件でしたので、多くの人の記憶に残っています。私は現場から数駅離れた下北沢に住んでいましたが、小さなアパートの我が家にさえ、警察の聞きこみが来たほどです。警察の努力も報われず、ご家族の悲しみはいかほどだろうと思っていました。

 数か月ほど前、アートセラピーのイベントがあり、出かけました。事務局を務めるジャムズネット東京(http://jamsnettokyo.web.fc2.com/)のイベント情報に掲載させていただいているため、一度は顔をださなくてはと思っていました。その時講演をされたのが、世田谷事件のご遺族である入江杏さんでした。ワークショップにも参加され、一緒にグループを組むことになりました。明るくて、太陽のような方でした。入江さんも私に興味を持ってくださったようで、それ以降親交を深めることとなりました。彼女の主催する「読み語りの会」、上智大学グリーフケア講座にもお声をかけていただき、朗読の即興伴奏をさせていただきました。この分野の音楽活動は、以前からやりたいと思っていたので、私にとっては願ったり叶ったりの共演となりました。

 入江さんは国際基督教大学を卒業、英国在住中には教鞭もとられていた聡明な方です。帰国直後の予想だにしない事件でした。原因もわからず気持ちのやり場さえなく、メディアでの衝撃の強さのため、しばらくは人に逢うことも家を出ることもできない状態でした。しかし、彼女はカウンセラーにも精神医にもお世話になることなく、自分で立ち直りの道を拓いてきました。家族もそれぞれが心に傷を持ちました。でもきっと彼女の持ち前の明るさに助けられたのでしょう。

 彼女はいつも前向き…どこにも遺族というイメージはありません。どのようにその辛さから立ち直ってきたかを、隠すことなく綴ってくれているのがこの本です。ノンフィクション作家柳田邦男さんは、この本を読んで記事を書いておられるだけでなく、その後も彼女との交友の中で、時に彼女と同じ演壇に立たれています。

 現在、グリーフケアというジャンルで、多くの講演や活動で「悲嘆」と向き合う方々のために、絵本などの読み語りを通して、子供たちや大人たちに生きることの美しさを伝えています。自分の悲嘆だけではなく、多くの悲嘆を抱える人までを引き受ける彼女の大きさに、おどろくばかりです。

 ※入江杏著「この悲しみの意味を知ることができるなら」(春秋社) http://www.shunjusha.co.jp/detail/isbn/978-4-393-36494-9/

 12月10日は彼女の身近な友人たちが集まって、彼女主催の年に1回のイベントが行われます。私も演奏と舞台監督らしきものをお手伝いさせていただくことになりました。

 日時:2011年12月10日(土) 午後2時~午後5時
 場所:女性就業支援センターホール(港区芝5-35-3)
   JR田町駅 三田口(西口)から徒歩3分
   地下鉄(都営浅草線、都営三田線)三田駅A1出口から徒歩1分
   http://www.joseishugyo.go.jp/shisetu/access.html 参加費:1000円(どなたでも参加できます)
 主催:入江杏とミシュカの森実行委員会
 共済:上智大学グリーフケア研究所
    上智大学文学部哲学科
    ベグライテン


「なぜ、これは健康にいいのか?」

2011-11-08 | 
 自律神経研究の第一人者、順天堂大学医学部教授であり、日本体育協会公認スポーツドクターでもある小林弘幸氏の著書(サンマーク出版)。今回初めてiPhoneで電子ブックを購入しました。これ、便利ですね!本を持ってあるくと結構重いんですが、これなら何十冊も持って歩ける。読書から遠ざかっていたんですが、これなら読めるぞ。サンマーク出版の場合、独特のアプリがあり、マーカーもつけられるし、なかなか便利。

 さて、自律神経ってよく聞くんですが、案外その実態はあまりよくわからないままでした。神経には大きく「中枢神経」と「末梢神経」の二つに分かれます。中枢神経は脳そのものと脊髄の総称だそうです。末梢神経はさらに「体性神経」と「自律神経」に分かれます。体性神経は「知覚神経」と「運動神経」に分かれます。自律神経は「交感神経」と「副交感神経」に分かれます。この自律神経は生命維持のためにオートマチックに働くもので、内臓など機能をつかさどるものですが、特に重要な働きは「恒常性」です。生体の内部環境を一定に保とうとすることで、治癒するための機能が働き、発熱が起きたりするわけですね。

 交感神経が優位に立ち過ぎると体の不調が現れます。逆に副交感神経が高くて、交感神経レベルが低い場合は、うつ病になりやすくなります。免疫もこの交感神経・副交感神経のバランスがひじょうに重要だということがわかってきているようです。

 ではどのようにすればこのバランスが保てるかということですが、著者は「ゆっくり・早く」というキーワードを使っています。「副交感神経が人生の質を決める~ゆっくり生きると、病気は逃げる」というのがこの本のサブタイトルです。

 特にゆっくり呼吸することはこのバランスを保つうえで、ひじょうに有効だということです。新しい機器で末梢神経の血流量を測ることできるようになったそうですが、息を止めると一瞬にして、血液が流れにくくなることが一目瞭然でわかるそうです。

 精神的にもゆったり常に余裕を持つために、どのようにしたらよいかを提案しています。

 今まで大事だとは思っていた自律神経。なんだかもやっとしていた自律神経という言葉が、もっとはっきりと、そして大切なものとして見えてきました。

 ※なぜ「これは」健康にいいのか?(小林弘幸著・サンマーク出版) http://www.sunmark.co.jp/digital_c/appstore/book/index.html

「がん専任栄養士が患者さんの声を聞いてつくった73の食事レシピ」

2011-10-27 | 
 《看護ワンテーマBOOK》というシリーズで、看護側の立場からの本を出版している医学書院の新刊をご紹介します。「看護師のためのwebマガジン かんかん!」で掲載してきた、がん患者さんのための食事レシピを一冊にまとめたのが、この本。島根大学医学部附属病院の管理栄養士・川口美喜子さんと、がん専任栄養士・青山広美さんのふたりが、実際のがん患者さんの声をもとに、まとめられました。『「患者さんの思いに寄り添って食事を考える」専門家の必要性を感じた』と、まえがきが述べられています。

 病院の栄養士さんたちは、ただ食事を作るだけでなく、患者さんの様子を観察したり、会話を交わしながら、どうやったら「食べることの喜び」を取り戻してもらうかを考えます。毎日、病室に顔を出し、まずは顔を覚えてもらって、食事に関しての会話ができるようになることから始まります。食器の蓋を取る気にもならない患者さんたちに、食欲を感じてもらえるように、サランラップにして中身が見えるようにするよう改善したり、看護師からのメッセージを添えたりと、食事のレシピだけの配慮にとどまりません。たしかにこのような配慮が全身状態の改善につながることがあります。

 レシピは患者さん向きですが、一般の人でもおいしくいただけそうなものばかり。自宅療養中の方でも、ひとりだけ別のメニューの寂しさを感じずに、家族で一緒に食事ができそうですね。

 「食」は食べることのみにあらず。いのちにも楽しみにも芸術にも直結する「食」。食べる楽しみがあるうちは、生きる楽しみがあるように思います。その楽しみを持ち続けたいものです。健康に食べる…あたり前のようで、とても貴重なことのようですね。

 ※がん専任栄養士が患者さんの声を聞いてつくった73の食事レシピ http://www.igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?book=82045#top
 ※看護士のためのwebマガジン かんかん! http://igs-kankan.com/article/2010/10/000038/

『地球が教える奇跡の技術』

2011-07-03 | 
 これも知人からのオススメ本。環境問題は、節電の問題や代替エネルギーの必要性など、ますます重要視されていますが、なかなか進まないのが現実です。否定的なことばかりより、もっと前向きに考えましょうということで、この本ではネイチャー・テクノロジーを取り上げながら、Q&Aの対話形式で新しい暮らし方を提案しています。

 人間以外の生物は自然の循環の中で生き、自然を傷つけることはしません。そして驚きのテクノロジーを持っています。

・カタツムリの殻はどんな泥の中でも汚れません。そのナノテクから汚れが落ちるキッチンシンクを開発。
・シロアリの巣は砂漠の中でもいつも一定の温度を保ちます。その土からヒントを得てタイルを開発。家の中はエアコンがなくてもいつも快適です。
・アワビの殻は1mmに1000層以上の炭酸カルシウムが重なっているため、ほとんど壊れません。ここから割れないセラミックスを開発。
・トンボの羽根はゆっくり飛ぶことができ、安定しています。これはトンボの羽根の溝で空気の渦を作っているからです。風力発電に使えばそよ風を効率よく電力に変えることができます。
・泡風呂は水がほとんど要りません。泡がはじけるときに出す超音波が洗浄機能を持つので、石鹸なども要りません。車いすのまま入れます。

 著者・石田秀輝氏は、東北大学大学院環境科学研究科教授。専門は地質・鉱物学をベースとした材料科学。INAX技術統括部空間デザイン研究所所長などを経て現在は、ネイチャーテック研究会を発足し、あたらしいものつくりの研究・啓発活動を行っています。

 環境問題には今までとは違う視点が必要なのかもしれません。こんなアイディアが実現化して、お金のためではない豊かな生活にシフトできるといいですね。

 ※『地球が教える奇跡の技術』石田 秀輝著 祥伝社 
 ※石田 秀輝教授のコラム 東北大学大学院環境科学研究科 環境政策技術マネジメントコース  http://www.semsat.jp/

『タンパク質の音楽』

2011-06-30 | 
 友人から勧められたこの本。読み始めたら面白くて一晩で読んじゃいました。中身は素粒子論やら周波数やらで難しいんですが、苦手な数字はざざっと斜め読み。それよりこの発想が面白い。

 タンパク質は20種類のアミノ酸から合成されますが、合成時に起きる波動の振動数を平均律に置き換えることにより、音楽が作られるというもの。この音楽を聞かせることで、病気が改善したり、植物がよりたわわに実ったりと、いくつもの実験報告がされています。

 この方法は物理学者のジョエル・ステルンナイメール博士が提案しています。実はこの博士、シンガーソングライターとしてエヴァリストという名前でレコードを出したら爆発的なヒット。その資金で研究を続けたと云う変わり種です。当初素粒子の質量についての研究をしていたステルンネイメールですが、ノーベル物理学賞を受賞したアンリ・ポワンカレ研究所のド・ブロイ博士の推薦を得て、アメリカ・プリンストン大学に助手のポストを約束されました。ベトナム戦争で資金不足となった当時の研究所がそのあおりをくらって、到着してみたら席がなかったということに。パリにもどり、知り合いのレコード会社から自分で作った曲を出したところベスト・セラーになり、テレビ・映画にも出演し一役スターに。その間も素粒子の質量研究をしている折、分布図が音楽の周波数に当てはまることを発見。1983年に「素粒子の音楽」という論文をまとめました。日本では大野乾(すすむ)博士がDNAの音楽を発表しており、そのほかいくつか遺伝子の音楽など、音楽に変換する試みはされています。

 ステルンナイメール博士は彼らとはまた別の方法で、DNAの音楽から発展させ、タンパク質を音楽に置き換える方法を編み出します。できあがったメロディが音楽としてとてもよくできていることに博士自身がびっくりします。モーツァルトやベートヴェンのメロディと同じフレーズさえ出てきます。

 毎年トマトで実験をおこなってみていますが、目覚ましい成果が上がっています。パン酵母にも試みたところ味が格段によくなったということです。1993年7月23日の朝日新聞には「うどんには四季、田園は食パンに」という記事が載っています。これもステルンナイメール博士が分析したところ、田園についてはADHの合成を活発にするメロディの一部が田園にあることがわかりました。ヴィヴァルディの四季では、味噌の酵母の出芽に関係するアクチンの音楽に似ていることがわかりました。

 人間のタンパク質にも影響を与えるため、病気が改善することもいろいろとわかっています。ただし、その音楽の量など知識がないと副作用を与えることもあるということで、細かい作り方などは公開されていません。

 自然を細かい部分に分解して研究をする現代科学では、そのつながりから生まれる機能などが判りにくくなっているようです。さらに総合的なアプローチとして、このような方法がさらに研究されていくとよいですね。

 ※タンパク質の音楽へようこそ(著者:深川洋一) http://www.bekkoame.ne.jp/~dr.fuk/index.html

最新号「ゆほびか」に掲載

2010-11-19 | 
 レッスンを受けている鍋島久美子先生が「ゆほびか」2011年1月号で特集されました。現在発売中です。

 「ゆほびか」は「ゆったり豊かなヘルシーライフを提案する健康医学誌」となっていますが、医学誌というよりは、マガジンです。いかにも売れそうなタイトルで読みやすい内容になっているので、ちょっと「あれ?」という感覚を持たれる方も多いかもしれません。しかし、このマガジン、かなり影響力があり、友人の画家もこの特集で取り上げられてからは、個展を開いてもすぐに絵が売り切れてしまうほどです。

 鍋島先生との出会いは15年ほど前になりますが、「耳を開く」ということで、当時ピアノと歌に行き詰っていた私は、多くのアドバイスを受けました。最近になってレッスンを再開しましたが、先生はパワーアップされていて、毎回のレッスンも音楽と言うよりはお話が主になっています。今までブログでも何度か取り上げた「ハルモニアン・ヴォイス」(アカペラコーラス・鍋島久美子主宰)が、この「ゆほびか」の編集部の耳に止まり、取材を受け、これは特集しようということになったようです。

 雑誌では、このアカペラについてのいろいろな効能が証言されていますが、音の世界については、かなり深いものがあり、私もまだまだ勉強中です。これは理屈ではありませんし、トレーニングをするものでもなく、考え方や感じ方という、つかみにくい世界かもしれません。でもそれをつかんだ時に、ものの見方や感じ方に、大きな影響を与えるものだろうと思います。

 ※マキノ出版「ゆほびか」 http://www.makino-g.jp/yuhobika/
 ※鍋島久美子先生HP「響奏の吟遊詩人」 http://wing-of-wind.com/

「横浜ジャズ物語」との接点を想う

2010-11-02 | 
 今や廃刊になり、3万円というプレミア価格さえついている「横浜ジャズ物語 ちぐさの50年」ですが、図書館で借りて、ゆっくり読み進めました。戦前戦後の日本のジャズの様子がよくわかる本です。写真も豊富なので、リアル感があります。戦前そして戦争直後のモカンボ・セッションまではこのブログで書いてきました。今日は私自身とこの本に登場する人との思い出について…

 この本の中で特別な存在として登場するのが、高柳昌行氏(ギター)です。銀巴里セッションで頭角を現し、さらに新しい音楽の方向をさぐるために、新世紀音楽研究所を組織します。前衛ジャズとしては、日本ではあまり受け入れられませんでしたが、ドイツ政府から招聘されるなど、その貢献度は世界も認めるところです。
 別れた連れ合いは、高柳さんの弟子でした。ギターはうまくはなかったけど、人をまとめるのが上手だったので、高柳さんには頼りにされていました。そんなわけで我が家にはいつも高柳門下生が出入りしていました。私も一緒に旅行に連れて行っていただいたことがあります。奥さんといつも仲睦まじかったのが印象的です。私の中でも、何か特別な存在で、とにかく生き方がかっこいい人でした。

 対談にも登場しているのが、清水閨氏(ドラム)。キンさんの愛称で知られています。赤坂にあったレオナルド・ダ・ビンチというライブハウスは、すばらしいミュージシャンが出演していました。私はチェンジで弾き語りとして出演していましたが、バンドではキンさんが毎日のようにドラムを叩いていました。ある誕生日、キンさんがアライグマのぬいぐるみをプレゼントしてくれたことがありました。そのアライグマはなんと香水アラミスの香りがいつまでもしました。キンさんはいつもアラミスをつけていて、靴はピカピカでした。セクシーでかっこいい人でした。
 
 ちぐさとつながってる思い出が私にもあったんだなぁって、感慨深いですね。

「超訳 ニーチェの言葉」

2010-09-16 | 
 ニーチェと聞くと、難しそうというイメージが先行しますが、これは誰にでも読める簡単な訳になっていて、一見、エッセイ集のようです。

たとえば・・・
 「自分を常に切り開いていく姿勢を持つことが、この人生を最高に旅することになるのだ」
 「今のこの人生を、もう一度そっくりそのまま繰り返してもかまわないという生き方をしてみよ」
 「喜ぼう。この人生を、もっと喜ぼう。喜び、嬉しがって生きよう」

 本の構成はニーチェの著書を各部分をテーマ別に分け、1ページで読めるほどの文章をばらばらに再構成したもの。ニーチェの本来の意図はつたわりにくくなっているでしょう。レビューを見ても、賛否両論です。しかし、ニーチェを敬遠している人たちに、身近に感じてもらうにはいい方法かもしれません。これがきっかけで、原書を読もうという気になる人もいるでしょう。

 この本は、発売4ヶ月で45万部という信じられないような売れ行きです。ディスカバー・トゥエンティワンという会社が出版しています。取締役社長は干場弓子さん。回りも女性陣で固めた会社のようです。女性のしなやかさが表に出た成功例かもしれませんね。

 このクラシック名言シリーズは、バルタザール・グラシアンの賢人の知恵、アランの幸福論、中国古典の知恵に学ぶ菜根譚があります。

 ※ディスカヴァー  http://www.d21.co.jp/

「単純な脳、複雑な「私」」 池谷裕二著

2010-09-04 | 
 私がもっとも注目する脳科学者が池谷裕二氏です。「海馬」「進化しすぎた脳」「脳はなにかと言い訳する」「ゆらぐ脳」など私たちの脳を直接刺激する本を次々と出版し、ベストセラーになっています。この本も、書評空間キノベス!2009で9位に選ばれています。

 茂木健一郎さんや養老猛さんの本とは、一線を画して、池谷さんの本は、まさにずばり脳科学の最新情報満載です。哲学じゃない。科学です。
彼は東大医学部薬理学ですが、その研究が世界から注目されているまさにバリバリの現役。まだ40歳…(おお、もう40歳になったんだ。)
 すごいなと思ったのは「私は研究を進めていく上で、仮定をしません。研究の事実をゆがんでみてしまう可能性があるからです」といったような内容の言葉。それで作った実験器具は、世界規格の精度を1000倍ほどあげちゃったっていうから、半端じゃない。

 「進化しすぎた脳」でも高校生達に授業をしたのですが、この「単純な脳、複雑な「私」」も母校の高校生達への授業です。高校生向けの授業だから、難しい言葉は一切ない。でも内容は血の吹き出るような最新情報。今週発表された論文なども惜しげなく教えてくれます。

 彼が研究しているのが、海馬であり、脳の可塑性の探求であり、自発創生・自己書き換えです。人間の脳はシンプルな機能でありながら、ゆらぎがあることでまるでそれ自体が生きもののように「複雑系」の働きをする。

 池谷さんのホームページでは、ニューロンの分布を音楽に置き換えたものを聞くことができます。これは、現代音楽に聞こえます。無秩序な音じゃない。彼のクラシック音楽の造詣の深さはよく知られるところで、作曲もするんです。楽譜見るのは大好きという彼。もうひとつの趣味はワインかな。ツイッターではクラシックかワインの話が主です。

 ニューロン・ミュージックだけでなく、自分試しにリンクからページ下の実験やってみてください。あれ????って、思うかも。

 ※朝日出版社/単純な脳、複雑な「私」
http://www.asahipress.com/brain/
 ※池谷裕二ホームページ
http://www.gaya.jp/ikegaya.htm