わが輩も猫である

「うらはら」は心にあるもの、「まぼろし」はことばがつくるもの。

1人250円=与良正男

2008-03-18 | Weblog

 米大統領選の民主党指名争いで大接戦を続けるオバマ氏が2月中に集めた資金は約56億円、対するクリントン氏は約36億円に上るそうだ。

 日本では「金権候補」と批判もされそうだが、オバマ陣営によると献金者の9割以上は100ドル以下の小口献金だと聞くと、市民が政治に参加しようというムードだけは少し見習いたいと思う。

 随分前から日本でも政治資金は癒着の温床になる企業・団体献金でなく、一人一人が自発的に寄付する個人献金にシフトすべきだと言われてきた。20年近く前には、経済団体が企業の部課長級と政治家との意見交換会をセットするなどして、意識改革を図ろうとしたこともあった。

 しかし、企業社会のおぜん立てには限界がある。その後も個人献金は増えず、今、各党の財政は(受け取っていない共産党を除けば)政党交付金頼みだ。交付金はもちろん税金。国民1人当たり年250円払っていることを忘れている人もいるかもしれない。

 日銀総裁人事で国会は大混乱。予算案審議も空転が続いた。今の与野党は一体何をやっているのか、確かに政治記者も説明に窮する。でもこんな状況が続くと「結局、どの党も同じ」「やはり政治家なんて……」という声が再び広がるのを恐れる。

 無党派は決してカッコイイものではない。選挙前だけでなく、日ごろから政党や政治家を有権者自らが叱咤(しった)し、育てていく政治風土をどう作るか。有権者も変わっていくべきだと私は思っている。

 少なくとも250円分は政治に口を出す権利が私たちにはあるのです。(論説室)




毎日新聞 2008年3月13日 東京朝刊


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