わが輩も猫である

「うらはら」は心にあるもの、「まぼろし」はことばがつくるもの。

福田スタイル=与良正男

2008-06-13 | Weblog

 ご本人は意地でも否定するだろうが、このところ福田康夫首相の変身ぶりが目立つ。

 例えば近く成立の運びとなった国家公務員制度改革基本法案。決め手は衆院審議の最終局面で、首相が民主党に大幅譲歩してでも成立を目指すよう自民党側に指示したことだった。「まず政府自らが身を削る努力を」としつこいほど本欄でも書いてきた。内閣支持率が下がる一方で、首相にも危機感があったはずだ。支持率18%のプラス効果でもあろう。

 クラスター爆弾の禁止条約案も政府内の反対論を抑え、賛成に踏み切った。「首相は当初、関心がなかった」との説もあるが、トップの政治決断がいかに重いか、久しぶりに知らしめたのは確かだ。

 「静かなる革命だ」。力を入れている消費者庁構想について、首相はそう語ったそうだ。おそらく「静かな」がミソ。そこに「小泉純一郎元首相のような派手なパフォーマンスは絶対にしない」という頑固さを感じるからだ。

 そんな福田スタイルが世間に浸透するかどうかは、同じように中央官僚らの抵抗を封じる決断が必要となる消費者庁構想や地方分権改革の進展次第だ。いや、ここまで来たら、後期高齢者医療制度も静かに、そして大胆に75歳の線引きをやめたらと思うがどうだろうか。

 そうそう。公務員制度改革では民主党が修正協議をリードした点を忘れてはいけない。基本的に同じ方向を向いているのなら与野党審議を通じて、よりましな法案にしていくのがねじれ国会の役割の一つだ。この国会の変身ぶりも素直に歓迎したい。(論説室)




毎日新聞 2008年6月5日 東京朝刊

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