民主党は鳩山由紀夫代表になっても、小沢一郎代表代行が裏で実権を握るから何も変わらない--。こんな論評が一部にある。
党内議論を封じるかのように急いで進めた今度の代表選のやり方には私もテレビで不満を口にした。小沢氏の政治資金問題が決着していないのも事実だ。だが、まだ新体制が動き出す前から「二重権力」とことさら言い立てるのはフェアではない。先週書いたように「小沢剛腕神話」を、民主批判のために都合よく利用している気がする。
何より民主党は「首相候補」が代わったのだ。これは大きな変化である。
西松建設事件前から私は本欄で「小沢氏は本当に首相になる気があるのか」と再三、疑問を呈してきた。小沢氏がとかく政策は二の次だった点も批判してきた。
各党の首相候補と政策を有権者が比較して政権を選択するのが今の衆院選だ。実は民主党内には「選挙で勝って小沢氏が首相になっても短期間だ」と語る議員が多かった。「いずれ短期だから」という奇妙な見立てが小沢氏への不満を抑えてきた節さえある。これではコロコロと首相が代わる自民党と変わらない。
少なくとも鳩山氏は明確に首相を目指し、マニフェストの重要性も認識している。その点で小沢氏とは違う。
民主党の支持率が再び上昇に転じたように、有権者はメディアの小沢批判とは裏腹に冷静に政治を見つめていると思う。自公政権とはどう違い、どう具体的に日本を変えていくのか。党内でもっとオープンに、激しく議論してほしい。そして説得力のあるマニフェストを作り、それを鳩山氏が国民に発信できるのか。重要なのはそこなのだ。(論説室)
毎日新聞 2009年5月21日 東京朝刊
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