「合従連衡(がっしょうれんこう)」という言葉が今、一番ぴったりあてはまるのは液晶パネル業界だ。
ソニーとシャープは2月末、テレビ用の液晶パネルを大阪府の堺工場で共同生産することで合意した。両社は液晶テレビの販売で競い合うが、その主要部品であるパネル製造では手を結ぶ。シャープは東芝とパイオニアにもパネルを供給する。
松下電器産業も日立製作所やキヤノンと提携して、兵庫県姫路市に液晶パネル工場を建設する計画を発表した。
ライバルがパートナーにもなる液晶メーカーの関係は、国や地域を超えて広がる。ソニーは韓国のサムスン電子と組み、台湾企業と日本企業の連携も目白押しだ。中国に合弁工場を持つ企業も多い。
昨年の世界のテレビ用液晶パネルの出荷台数では、台湾勢と韓国勢がともにほぼ40%を占め、激しいシェア争いを演じている。日韓台中は競争と協力を繰り返しながら、東アジアを液晶パネルの一大生産地帯に変貌(へんぼう)させた。
こうした民間企業の合理性追求の姿勢こそが、東アジアの真骨頂だ。制度化が先行する欧州連合(EU)に対し、東アジアは市場がリードして経済統合が進んできた。
そして今、将来の目標として、東アジア共同体が浮上する。液晶パネル業界の現状を見ていると、東アジアを統括する機構を設立するのも夢ではないように思える。
だが、現実には、東アジアは極めて多様性に富む。共同体を実現するには、各国が政治力と外交力を結集して、民族や文化、宗教などの違いという厚い壁を取り除けるかどうかにかかっている。(論説室)
毎日新聞 2008年3月2日 大阪朝刊
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