わが輩も猫である

「うらはら」は心にあるもの、「まぼろし」はことばがつくるもの。

国際緊急援助隊の役割=近藤伸二

2008-06-13 | Weblog

 中国・四川大地震は間もなく発生から1カ月を迎える。隣国で起きた未曽有の大災害に、日本も人的・物的支援を続けてきた。

 その象徴が国際緊急援助隊の派遣だ。だが、中国側の受け入れの遅れが影響し、生存者を救出することはできなかった。入れ替わりに現地入りした医療チームも、活動場所をめぐって中国側と行き違いがあり、思い描いていた医療活動はできなかった。

 両国が情報交換を密にし、援助隊が最大限、能力を発揮できる環境を整えるのは今後の課題だ。ただ、万全でなかった結果だけを取り上げて、日本隊派遣の意味を過小評価する必要はない。

 99年の台湾大地震でも、日本隊は各国の中で被災地に一番乗りした。懸命の救助活動を繰り広げたが、人命を救うことはできなかった。後から来た韓国隊ががれきの中から5歳の子供を助け出し、隊長は一躍ヒーローになった。

 当時、私は現地で取材に当たったが、台湾の人たちは韓国に感謝しながらも、それ以上に日本に感謝してくれた。中国の意向を気にしがちだった日本の援助隊が真っ先に駆け付けたことが、台湾の人々の心を打ったのである。

 今回、中国のネットを見ると、日本隊への感謝や称賛の声が並び、「あなた方に能力がなかったのではなく、我が政府の決定が遅すぎたのだ」という書き込みもあった。困った時こそ他人の親切が身にしみるのは、国の関係も同じだ。

 日本隊は日中関係において大きな役割を果たした。隊員だけでなく、送り出した私たちも胸を張っていい。(論説室)





毎日新聞 2008年6月8日 大阪朝刊

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