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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

リング0 バースデイ(V)

2008-09-09 22:11:06 | 映画(ら)
評価点:57点/2001年/日本

監督:鶴田法男

リングシリーズの「はじまり」を描いた作品。

呪いのビデオが世に出回る30年前、山村貞子(仲間由紀恵)は劇団にいた。
劇団「飛翔」で研究熱心と評価される貞子であったが、
ある日主役に抜擢された女性が謎の死を遂げる。
劇団員は貞子が劇団に変化をもたらしたと疑い始める。
一方、その10年前に実施された実験により謎の死を遂げた記者の妻も、
貞子の消息を追っていた。
やがて同じ劇団の音響係の遠山(田辺誠一)に惹かれていく貞子であったが。。。

一時期一世を風靡した「リング」シリーズの最後の作品。
ちなみに、僕自身は「リング」「螺旋」「ループ」「バース・デイ」と一連の作品群の原作は全て読んだ。
しかし、かなり前なので、正直記憶が薄い。
そして、劇場版「リング」があまりに原作とかけ離れ、怖くないことから、「螺旋」「リング2」ともにまだ見ていない。
原作「リング」に一番忠実なのは、やはりテレビ版の「リング」である。
僕としては、映画の興行成績を気にするあまり、女主人公(松島奈々子)をたてたという時点で「リング」のよさはなくなってしまっていると思う。

▼以下はネタバレあり▼

それはさておき、本作は、その一連の事件の発端にあたる部分を扱っている。
平たく言えば、貞子がいかにして「井戸に落ちたか」である。
つまり、「貞子」って誰?と思ってしまう人には、この映画は全く意味を成さない。
良い意味でも悪い意味でも、
貞子の謎を解くための映画であり、シリーズ未体験者お断り状態である。

僕がこの映画が残念で未完成であると思ってしまう点の一つはそこにある。
つまり、映画として自足性に欠けるのである。
もちろん、全ての映画が一本、単体で勝負しなければいけない道理はない。
「スター・ウォーズ」などは、三部作でなければ意味がない作品である。
逆に三部作であるからこそ、評価される作品である。
しかし、これだけ良いモティーフを内包しているにもかかわらず、それでも「シリーズ未体験者お断り」にしてしまったのは、残念というほかない。

充分に一本の映画として成立しうるだけの「ドラマ」がそこにはある。
むしろ、シリーズ未体験者が、これから「リング」シリーズを楽しむための、入口に位置づけてもいいほどのドラマがそこにはある。
であるのにもかかわらず、安易に「リング(劇場版)」のファンに迎合してしまったのは、残念でならない。

例えば、映画として説明が足りなさ過ぎるという点だ。
「10年前の実験」をキー・ポイントにおいて話を進めるのはいいとしても、今から30年前の記者が銃を持っているというのは違和感のかたまりである。
また、その女記者(名前忘れました、すみません。)が、なぜ「貞子を殺さなければならない」と決心しているのかも不透明である。
夫の記者が貞子に殺されたという可能性がある、としても、銃を持ち、物々しく復讐を心に決めている表情は、どうしても感情移入できない。

また、父親という重森博士が、「貞子は二人になったのだ」と平気で言うのも、唐突過ぎる。
ドッペルゲンガーとして理解すべきなのか、悪い霊(のようなもの)が分離したと考えるべきなのか、全く説明不足である。
いたるところに姿を現すことから、霊(のようなもの)と理解することになるが、それなのに、記者は「あいつを殺さないと本当に殺したことにはならない」と躍起になる姿を見ると、「いやいや、どうやって殺すねん」とツッコミたくなる。

さらに、劇団員の変貌振りにも違和感を覚えてしまう。
貞子を疑うだけの理由がよくわからない。
もちろん、貞子が来てから劇団がおかしくなったのは理解できるが、だからといって「殺してしまえ」となるのはかなり無理がある。
また、劇中に人が死んでいるにもかかわらず(多くの目撃者がいる)、警察がそこに介入せずに、劇団員が貞子を殺し、そしてどこにあるかわからない重森博士の隠れ家まで運んでしまったという飛躍は、僕の理解を軽く超えてしまっている。

これらの違和感を解消するための方法は一つ。
シリーズのファンになれ、ということですか。

そのあたりを解消してくれれば、「リング」ファンでなくとも、充分に楽しめる映画となっただろう。
特に映像による雰囲気づくりはうまいと思う。
画面のどこかにすべて「壁」があるのだ。
野外に行っても地面や木で閉鎖感を出す。
これによって狭い世界という圧迫感や不安感をもたらし、観客をその世界に引き込む。
舞台が劇場という広い場所であるのに、開放感が全くないのはそのためだ。

映画の全体の雰囲気に、どうしても、「ほれほれ、お前たちの求めていた謎への答えはここにあるんだよ」という、製作者の意図が見え隠れしてしまい、しっくりこなかった。

原作の「バース・デイ」を読んだときにも思ったこと。
「これでこの値段? せこっ」

(2004/1/4執筆)

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2 コメント

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Unknown (おもしろ!)
2011-07-10 07:49:42
感想が面白かったです
返信する
今読み返すと……。 (menfith)
2011-07-12 22:07:15
管理人のmenfithです。
相変わらず会議続きで全く身動きが取れない状態のmenfithです。
映画を一本観てきましたが、それをアップする余裕もなく……。明後日くらいには書きたいと思います。

>おもしろ! さん
コメントありがとうございます。

今読み返すと、ちょっと恥ずかしい気もしますが、お役に立てたのなら光栄です。
今後もよろしくお願いします。
返信する

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