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secret boots

ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

ブレードランナー(V)

2011-05-08 20:50:51 | 映画(は)
評価点:76点/1982年/アメリカ

※US公開版

監督:リドリー・スコット

レプリカントは人間か。

2019年。
人間は人間に似せたレプリカントと呼ばれるロボットを開発した。
しかし、レプリは人工知能も、肉体も人間よりも優れていたため、反乱を起こし始めた。
その反乱を怖れた人間はレプリを抹殺するブレードランナーと呼ばれる殺し屋を組織した。
ある日、4体のレプリが密航したことを知った警察は、元ブレードランナーのリック・デッカード(ハリソン・フォード)に抹殺を依頼する。
一度は「もう辞めた」と拒否したが、権力に殺されまいと引き受けることにする。
開発したという博士から事情を聴いたが、そこにいたのは自分がレプリかどうかで悩む女性型のレプリだった。

リドリー・スコットのSFアクション映画。
ひどく有名なので、今さら、というところだけれど、ブルーレイで綺麗になっていたので借りた。
随分前に見たはずだが、全く覚えていなかった。
SFというジャンルじたいをあまり見ないので、仕方がないか。

近未来ということで様々な設定が登場するが、やはり見所はレプリカントと呼ばれる殆ど人間のロボット。
この時代としては非常に前衛的だし、物語の展開も緻密だ。
「ロビンフッド」なんて見ているよりも、はるかに面白い。

▼以下はネタバレあり▼

4体のレプリカントを元殺し屋(ブレードランナー)が殺していくという展開になっている。
そこに自分がレプリカントかどうかもわかっていないというレプリカントのレーチェルが現われ、元ブレードランナーに動揺を与える。
話の筋は非常に分かりやすい。
追うものと追われるものとの対比で描きながら、それぞれの内面を暗示していく。

元殺し屋のデッカードはレプリカントを殺すことに漠然とした嫌悪を感じていた。
だからこそ辞めたわけだ。
本人はその違和感を掴みきれずにいた。
彼はレプリカントを殺すことを職業としていたが、人間そのものを殺したことはなかった。
彼の違和感は明確だ。
レプリカントを殺すことが、人間を殺すことと同義であることを彼自身が認めていたからだ。
レプリカントと人間が大差ないことを彼は何体ものレプリカントを殺すことで気付き始めていたのだ。
あるいは別の言い方もできるかもしれない。
レプリカントが殺されるようになり、レプリカントは人間に近付いていったことに、彼が最前線で気付いたのだ。

この物語は〈殺し屋が足を洗う物語〉である。
だが、同時に〈レプリカントが人間になる物語〉でもある。
そして、〈人間が人間性を取り戻す物語〉という言い方もできるだろう。

殺し屋は殺し屋を辞めて、レプリカントと逃げ都市から姿を消すという選択をとる。
彼はレプリカントが人間であることをに気付いたのだ。
それはレーチェルだけがそうだったわけではない。
4体のレプリカントを殺しながら、あるいは出会いながら、レプリカントの特性を知っていくのだ。

レプリカントは映画の中でどんどん人間となっていく。
人間に似せた間であるはずなのに、彼らは人間性をデッカードにみせる。
殺される寸前に相手を騙して逃れようとする執着心。
女性型レプリカントを最期まで愛するという恋愛感情。
相手を弄び、殺すという暴力性。
4年という短い寿命に対する恐怖と不安。
そして、相手を助けるという自己犠牲。

全てに対して説明することをしないが、バッティがラストで見せた自己犠牲は、キリスト教の中でも最も尊い人間性である。
他者への愛、つまりアガペーだ。
彼はアガペーを示すことで、完全に人間となる。
それはまさに一瞬であったかもしれないが、人間となったのだ。

レーチェルを連れて逃げるという決断は、人間性が何であるかをデッカード自身が悟ったということに他ならない。
デッカードはブレードランナーでなくした自身の人間性を再び見出す。
ラストは意味深なほどの自然の描写で幕を閉じる。
それまで人工的に作られたものばかりの都市が舞台だっただけに、逃げ出した先にある自然に対して監督がどのように考えているか、浮き彫りになる。

今見ても、おもしろいSFである。

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2 コメント

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Unknown (???)
2011-05-09 01:40:08
ビンラディン殺害の記事は書かないの?
返信する
映画批評を軸とするブログです。 (menfith)
2011-05-10 22:26:17
管理人のmenfithです。
異常な肩こりに悩まされています。
今日も仕事を忘れて早めに寝よう……。

>ななしさん(仮)
書き込みありがとうございます。
返事が遅くなりました。

このブログは映画批評を軸とするブログです。
ですので、基本的に映画以外のネタは書きません。
ビンラディンについて特に詳しくない僕が意見するためにはもう少し勉強が必要です。
映画を鑑賞する際に観点として必要になれば少しは触れるかも知れません。

ということで、ノーコメントでお願いします。
今後ともよろしくお願いします。
返信する

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