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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

ドリーム・キャッチャー(V)

2008-11-23 20:10:38 | 映画(た)
評価点:19点/2003年/アメリカ

原作:スティーブン・キング
監督:ローレンス・カスダン

この映画自体が「悪夢」である。

四人の幼なじみは、ある特殊な能力を持っていた。
彼らは久しぶりに共通の友人ダディッツに会いに行こうと約束する。
しかし、その直後、ジョーンズが交通事故に遭ってしまう。
それから半年後、四人で山荘に集まった彼らの元に、リックという遭難者が現れる。
彼は一日森をさまよっていたと話し、気分が悪いといって横になる。
介抱するジョーンズとビーヴァーは、彼の様子の異変に気づき、彼のいるトイレを蹴破る。
リックは、血まみれで、便器の中に動く物がいることに気づく。。。

この映画に限らず、スティーブン・キングの原作は読んだ事がない。
よって、この映画も全く内容を知らないで観た。
そもそも、キングのストーリーは嫌いではない。
おもしろくないという前評判を裏切ってくれる事を期待して観たのだが。。。

もし見るのなら、止めはしないが、かなりの覚悟が必要になるだろう。

▼以下はネタバレあり▼

久々に観た「わけのわからない映画」だった。
「中途半端」などという形容は役に立たない。
「意味不明」といったほうが良い。
誰か脚本の段階で、「これはおかしい」と気づかなかったのだろうか。
酷いという言葉以外に値する評価はないように思う。

冒頭の雰囲気は、非常に面白い。
千里眼ともいうべき四人の能力は、非現実的でありながら、どこかリアルである。
また、閉鎖的な雪山という空間設定も良かった。
この設定でなら、何でも起こりそうな舞台である。
リックの登場も許せる。彼の見るからにやばそうな雰囲気も、スリル満点である。
良かったのは、動物がいっせいに逃げていくというシーンまでである。
それ以降は、話が混沌、混乱、あらゆる要素が登場して、収拾がつかなくなっている。

「記憶倉庫」、エイリアン「リプリー」、謎の能力を持ったダディッツ、20年前の出来事、軍のクーデター、テレパシー、六ヶ月前の交通事故、「世界を救う」…。
数多くの説明不足な設定が一気に噴出するため、感情移入するどころか、状況を把握する事もできない。

千里眼の能力でさえ、かなり超現実的な話であるのに、「私は25年前からリプリーを追い続けているんだ」などとモーガン・フリーマンに言われても、意味が解らない。
エイリアンというもっと超現実的な要素をいきなり、唐突に出されて、物語はどんどん観客から離れていく。
さらに、そのリプリーを追っている部隊では、内紛が起こり、指揮官と副指揮官とのだましあいが始まる。

それだけではない。
千里眼の能力と、エイリアンの寄生能力との争いが、記憶倉庫という耳慣れない舞台で攻防する。
現実世界の状況さえ掴めないのに、さらに精神世界という新たな世界を重層させて、映画はいよいよ混乱を極める。

物語終盤、千里眼とエイリアン、ほとんど必然性がなかった二つの要素が、いきなり「そうだったのか、ダディッツはこのことを言っていたんだ」と登場人物たちの中で疑問が氷解する。
しかし、とってつけたようなこの二つをいきなり関係付けられても、カタルシスなど得ようもない。

前半、閉鎖的な環境で展開しながら、軍隊が登場した段階から急に全世界を救うという大それた目標を掲げ、問題にする世界が広がってしまう。

エイリアンを持ち出す事が悪いのではない。
持ち出すなら持ち出すで、冒頭でその資料を意味ありげに映しておくなり、墜落するエイリアンの船を、音だけでも入れておくなりしておけば、その唐突さは軽減されたのだろう。
しかし、それもなく、いきなりエイリアンだの、記憶倉庫だの、20年前だのと言われても、それを処理する事ができない。
状況を十分に理解できないから、感情移入もできない。

サイン」との決定的な違いは、説明不足なエイリアンを「テーマ」にしてしまったと言う点だ。
「サイン」でのエイリアンは、あくまで「モティーフ」としてのエイリアンであり、描くものは他にあった。
しかし、この「ドリームキャッチャー」では、エイリアンについて説明不足でありながら、「テーマ」にしてしまった。エイリアンとの戦いを描きたいのに、肝心のエイリアンについての説明が一切ない。
これで観客が「ともに戦う」ことなどできるはずがない。

これが「Xファイル」ならば許せたかもしれない。
モルダーを主人公にすれば、そこそこ面白かっただろう。
これほど意味のない映画に、巨額の金を投資できるアメリカという経済大国は、やはり恐ろしい。

(2004/7/5執筆)

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